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最新の「言いたい放題」講演会を全文公開します「脱原発せよ」小泉純一郎弟子の安倍晋三を叱る
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37241
2013年10月15日(火)週刊現代 :現代ビジネス
「もう黙っていられない!」そんな心境なのだろうか。小泉純一郎元首相が、かつての愛弟子・安倍首相の「原発再稼働」路線に真っ向から異を唱えている。最新講演会での「小泉節」をお届けしよう。
■やればできるはず!
原発汚染水の問題で、安倍総理が先月、(福島第一原発に)視察に行ってます。ヘルメットかぶって、防護マスクして、全身防護服、重装備で視察した。
あの防護服を着て作業している人たちが、一日約3000人いるんです。しかも一日原発に入るだけで、あの防護服は全部捨てなきゃいけない。使い回しできない。さらに、焼いてしまうと放射能が出るから焼けない。処分場に置いとくだけ。大変なことです。
原子力業界はこれまで、原発は安くてクリーンだと言ってきた。しかし様々なリスクを考えたら、あんなに高いものはない。事故を起こしたら人体への影響、農作物への影響、水産物への影響、地域に対する影響は計り知れない。
一民間企業では負担しきれないんです。この原子炉はもう使えない、廃炉するとなっても、廃炉に40年か50年かかるんですよ。
こういうことをほんとにすべて計算に入れて、安全でコストが安いと言えるかどうか。3・11より前に出した、電気事業連合会の(原発がクリーンで低コストだという)資料、信じる人はいまほとんどいませんよ。
原発を造る前に、原子力の専門家はこう言っていました。
「文明生活を送るためには原発は欠かせない。原発をいらないと言う人は、経済成長しなくていい、日本は貧乏でいいと言っているようなもんだ」
そうじゃないことは、もうわかってますね。原子力発電ほどコストがかかるものはない、というのは多くの国民が理解したんじゃないですか。原発建設をOKしてくれる地域にどれだけ税金を落としたか。廃炉、東電でできるんですか。国民の税金使わなきゃ廃炉事業できませんよ。汚染水の処理もそうです。一民間企業にはできない。
こういうことを思うと―(思わせぶりに沈黙)、この際、政治が、
「原発を将来ゼロにする」
そういう方針を決めるだけで、日本の企業も日本の国民も、その方向に協力すると私は思います。
短く歯切れの良い言葉をたたみかけ、小泉氏は人々に「脱原発」を訴える。10月1日、大垣共立銀行と共立総合研究所が主催する「特別講演会」に講師として招かれた小泉氏は、約60分間、喋りっぱなしの言いたい放題だった。会場となった名古屋国際会議場には2500名の聴衆が詰めかけ、その存在感がいまだ大きいことを証明した。
講演の中身は、原発再稼働へと突き進むかつての愛弟子・安倍晋三首相への「叱責」とも受け取れるものだった。
私は政界を引退して、経団連の方々が立ち上げたシンクタンク(国際公共政策研究センター)の顧問をしています。必然的に最近、政治家よりも経済界の方々、大手企業の社長、会長を経験したような方と話すことが多い。実体経済のことがわかっている方ばっかりですから、自然と原発の問題が話題に上がります。
大方の皆さんは、「原発ゼロなんて言ってる人がいるけども、あれは無責任だな。代案も出さないで原発だけゼロにすればいいなんて、実に無責任な言い方だ」と言って、憤っている方がかなり多いんですね。
そんな原発必要論に囲まれる中で私は、原発ゼロを主張している。原子力発電によって電気が供給される過程で出てくる放射能の廃棄物―私は「核のゴミ」という言葉を使っていますが、この核のゴミの捨て場所がない。処分場がない。
今まで出た核のゴミがそろそろ(各原発内で)満杯になって、これをどう処理するか、そのための場所は日本国内に一つもない。
核のゴミを処分する場所のあてもないのに原発を進めていくほうが、よほど無責任じゃないか、というのが私の主張なんです。
■コントロールなどできない
原子力の専門家の皆さんは言っていました。原子力はCOを出さない。クリーンで安全だと。火力、水力、風力、太陽光、バイオ、様々なエネルギーがある中で、原子力が一番安いという資料を出して電気事業連合会は進めてきました。経産省も資源エネルギー庁も一緒になって。
3・11事故後、NHKで『10万年後の安全』というドキュメンタリーフィルムが放映されました。観た瞬間から、最後まで引き込まれましたね、このフィルムに。ああー、原子力とはこういうものか、と。放射能の危険は、消えるまで10万年単位の時間がかかる。私たちは原子力の便利さというものをよく説明されたけれども、この原子力発電、原子力エネルギーというものを、これからも人類は制御できるんだろうかと、大きな疑問を感じました。
今年8月、フィルムに出てきたフィンランドのオンカロを視察に行きました。オンカロはフィンランド語で「洞窟」という意味があるのですが、ここは世界で唯一の、核のゴミの最終処分場として知られている。そこで三菱重工、東芝、日立、清水建設といった原発に関わる企業の幹部と一緒に訪問して参りました。
日本の土と違い、フィンランドの地盤は堅い岩盤。それを400m掘って、そこに2km四方の広場を造ってるんです。その平地をさらに掘り、(深さ)20~30mの円筒形の筒を造って、その筒の中に核のゴミを埋め込むという計画です。
しかしこれ、最終処分場を造っていいという正式な許可は(フィンランド政府から)まだ出ていない。なんで出ないか。水が漏れてるかどうか、今調べている。若干水漏れしているところがあるんです。最終処分場が本当に10万年持つかどうか、これから厳しい審査をしなきゃいけない。
しかも、造ったとしてもフィンランドにいま4基ある原発の、2基分の核のゴミしか処理できない。だから造る許可を出す前提として、フィンランドの国会は「いかなる国の核のゴミも受け付けない、受け入れない」と宣言している。
さらに驚いたのは、フィンランドには核シェルターがある。人口は550万人ですが、全国に4万ヵ所もあるんです。これは岩盤だからできる。20mほど掘ると核シェルターができますから。最大で1万人収容できる公用の核シェルターもあります。フィンランドという国は、非常時に備えて何が必要かということを、いちばん準備している国でしょうね。
翻って、日本を考えてください。一昨年の暮れですか、とうとう野田首相(当時)が原発事故の収束宣言を出しました。しかしその収束宣言を出した時ですら、事故を起こした原子炉内部の状況はわかっていなかったんです。どこが事故を起こしたのか、どう(放射能が)漏れているのか。人間も入れない、ロボットも入れない。そういう状況がわかっていながら、なぜ事故収束宣言したのか。まったくわからない!
ここで小泉氏は野田前首相を槍玉に挙げているが、その本心は別のところにある。自民党ベテラン議員が言う。
「小泉さんは、安倍さんが『汚染水の影響はコントロールできている』と世界に発信したことに対し、強烈な不信と不安を抱いている。高支持率を背景に原発再稼働を強行する元愛弟子を見て、これでは足元をすくわれるんじゃないか、と心配する親心でもあります。
この講演での発言は、『汚染水がどう漏れているのかもわからないのに、どこがコントロールできているんだ!』という安倍さんへのメッセージでしょう」
■決めるのはお前だ!
日本はこれまで、ピンチをチャンスに変えてきた歴史があります。90年前の関東大震災で10万5000人の命を失った。第二次世界大戦、あれはなんと300万人規模の国民が命を落としたんですね。
しかし日本国民は不屈の精神をもって立ち上がった。満州を失い、朝鮮を失い、台湾を失った。でも戦前より発展したじゃないですか。最大の敵アメリカを最高の味方にしちゃった。
もう一つ、戦後いちばんの経済的な危機は石油ショックですね。昭和48年、中東戦争の頃でした。私は昭和47年に衆院初当選だからよく覚えています。
あの時、不思議な現象が起きた。当時、いちばん買い占められた品物はトイレットペーパーと洗剤だったんです。これは理論的な理由はわからない。なぜトイレットペーパーと洗剤だったのか。
これ、私の個人的な感想を言えば、日本人はキレイ好きなんです。(場内笑い)私はそう思う。キレイ好きはいいことです。キレイ好きの感性が、あらゆる日本の生産物に生きている。
そう考えると、日本人はまさに放射能汚染についても敏感ですから、政府が「原発ゼロ」と表明していないいまでも、企業は安全な省エネ技術を開発しようと努力しています。
石油危機を体験して、日本は学びました。当時、全エネルギーの中で石油に依存する割合は70%を超えていました。それがいま40%まで落ちている。それは原発のおかげですが、3・11の事故によって、原発がクリーンでも低コストでもないことがわかった。
じゃあ、石油危機の時のように、もう一度考えればいい。ゴミの捨て場所もないような原発を動かすよりも、同じカネをかけるなら、原発を失っても、代替エネルギー、再生可能エネルギーを資源とした循環型社会を創るほうが建設的じゃないか。そのほうが夢があると思うんです。
日本国民は、一つの大きな目標、これがいいなというモデルがあれば、実に積極的に官民一体となって協力する特質を持っていると思います。敗戦後も、日本人が掲げた大きな目標―二度と戦争をしないこと、長生きの国にすること、その二つをともに達成した。
「原発をゼロにする」という方針を政府・自民党が打ち出せば、循環型社会を創る夢に向かって国民は結束できるんです。そうすれば世界が日本を手本にする。ピンチをチャンスに変える方針を決めるのが、政治の仕事なんです!
*
かつての師匠からの熱いメッセージを、安倍首相はいまのところ正面から受けとめず、聞き流している。だが、元首相の「世論誘導力」を知るだけに、そのうち聞こえないフリができなくなるかもしれない。
「週刊現代」2013年10月19日号より
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