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2013/10/11 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
日本のマスメディアは連日、TPPでコメなど重要5項目の「聖域」が守られるかどうかで騒いでいる。そこが最大の焦点のように報じているが、バカげた話だ。TPPは条件闘争なのか。それで優位に立てばいいのか? まったく違う。
月刊誌「世界」11月号で、アジア太平洋資料センター事務局長の内田聖子氏は「TPPは単なる貿易の話ではなく、『利潤か、人間か』という問いなのだ」と書いていた。ひたすらに利潤を追い求める米国経済が行き詰まりを見せ、資本主義も末期かと思われた時に、突如として出現したグロテスクで、不平等で、いびつなルール。それがTPPなのである。
TPP推進派は、関税を撤廃して自由貿易を活発にすれば、競争力のある企業が儲かり、その富は下々にも流れるから、国民にも利益になるという。いわゆる「トリクルダウン理論」だが、まず、この発想が間違っている。
経済アナリストの菊池英博氏が言う。
「企業が儲かれば給料が上がるなんて、真っ赤なウソだということがすでに証明されています。小泉政権時代だって、企業は空前の利益を出したのに、サラリーマンの給料は減り続けた。その一方で、経営者は何億円というベラボーな報酬を手にするようになりました。別名『おこぼれ経済論』とも呼ばれるトリクルダウン理論は、新自由主義者が好んで使ってきたが、インチキそのもの。国民をだまして、富を金持ちに集中させるための方便なのです」
消費税増税を決めた安倍首相も、異次元緩和に踏み出した日銀の黒田総裁も、トリクルダウン理論を振りかざす。アベノミクスが賃金アップにつながるという理屈だが、これはウソだ。
◆グローバル化は世界の99%を貧困にする
米国の経済学者、ジョセフ・スティグリッツも「GDPさえ伸びていけば最終的には皆がおこぼれにあずかれるというトリクルダウン理論を信じる人もいたが、それは誤りだった」「アメリカは経済が良くなったのに貧しい人が増加するという現実に直面することになった。そして、こうした不平等が広がり、格差が大きくなると社会や政治の不安定につながり、それが経済成長の障害にもなった」と、トリクルダウンを完全否定している。彼はノーベル賞学者である。
だとすると、TPP参加のメリットは何なのか。日本の農業は壊滅し、スーパーには安価な遺伝子組み換え食品が並ぶ。国民皆保険は崩壊し、健康も命もカネ次第の世の中になる。何もいいことがないではないか。
TPPで唯一、トクをするとすればグローバル企業だ。その経営者と株主たちだ。庶民にはまったく関係ないし、恩恵もない。それどころか、資本のグローバル化によって、労働者は常に途上国との競争にさらされ、どんどん貧困化していくことになる。スティグリッツも「グローバル化は世界の99%を貧困にする」と言っているが、日本も1%の金持ちが富を独占する米国型の超格差社会になる。TPPは国の形をまるっきり変えてしまうのだ。
米通商代表部(USTR)のカトラー代表補は、「日本の関税はすでに低いから、非関税障壁が焦点になる」と明言した。USTRが公表している「非関税障壁を巡る日本との協議内容」によると、日米で協議しているのは「保険」「知的財産権」「投資」「競争政策」「規制の基準」などの分野だ。甘利TPP担当相は、「(非関税障壁の認識では)日米は一致」と言っていたから、米国の要求を丸のみするということだろう。
これらの分野が、自由化の名の下に完全開放されれば、米国企業が儲けるのにジャマな規制はすべて撤廃され、米国企業がボロ儲けすることになる。労働者を守る規制は撤廃され、「クビ切り自由」がグローバルスタンダードになり、日本もそれを受け入れざるを得なくなる。従業員を大事にしている会社は生き残れない。資本力、競争力が劣る企業は壊滅する。地方経済は疲弊し、支え合う家族主義的な日本の社会は崩壊してしまう。
TPP交渉の核心は、重要5項目の586品目のうち、いくつ取れれば成功なんて次元の話じゃないのである。
◆大国のご都合主義で進められる自由貿易
自由貿易の歴史は、一言でいうと米国の大企業を儲けさせるためのルール作りであった。反グローバル主義のデモが言うように、常に大国のご都合主義で進められてきたのである。
それが特に際立ってきたのが、ウルグアイ・ラウンドで、その交渉の結果、WTO(世界貿易機関)が設立され、その頃から、農業やサービス業など、それまで基本的に自由化の対象外だったものまでが貿易自由化の対象になった。すべてが自由貿易優先で、そのために国内制度も変えさせられる。そういう流れになったのだ。
ハーバード大のダニ・ロドリック教授は、これを「ハイパー・グローバリゼーションの誕生」と呼んだ。TPPはというと、ハイパー・ハイパーグローバリゼーションなのである。
「WTOには150カ国以上が参加しているため、調整が難航して、各国一律に当てはめる貿易ルールの交渉はことごとく頓挫しました。それで、代わって盛んになったのが、2国間や数カ国間のFTA(自由貿易協定)です。相手国との間だけで通用するルールを作るので、WTOを通すより話が早い。力関係が反映されやすいので、大国の主張が通りやすいのです。その発展形がTPPで、米国が相手に不平等なルールを押し付ける枠組み作りということです」(立教大教授・郭洋春氏=経済学)
その背景には米国の経済力の低下がある。ドルをかさにきて、優位を保てなくなった米国は、市場のルール自体を自国企業に都合よく変えることを考え始めたわけだ。
ギャンブルも胴元が勝つようにできている。ルールを決めたヤツが強いのだ。そのためにFTAを結び、TPPを強いるのである。すべては米国の利益のため。それをグローバリゼーションなどという言葉で呼ぶのは、とんでもないマヤカシだ。日本人はまんまとだまされているのである。
◆なぜ米企業を儲けさせるだけのTPPを急ぐのか
「米国がシャカリキになっているTPPの標的は日本で、その目的は国民の富を収奪することです。交渉参加の前提条件だった重要5項目の関税もなし崩しになっていますが、米国にとっては関税なんて瑣末なこと。本当に狙っているのは医療や保険分野の規制撤廃です。しかし、こうした内実は『TPPは秘密交渉』という米国が決めた原則論を妄信する政府関係者が黙っているために、ほとんど報道されず、したがって、国民は何も知らされないまま、安倍首相は年内妥結に向かって走っている。妥結を急ぐ米国の意を酌んでいるのでしょうが、そうやって米国に媚を売って、結局は国の富を吸い上げられることになる。こんなバカな話はありません」(菊池英博氏=前出)
オバマ欠席のTPP首脳会合で、安倍は「(TPP交渉は)日米でリードしていかなければ」なんて言い、喜々として、参加国に「年内妥結」を促す役を買って出ていた。これじゃオバマのお使い、走狗の類いだ。とんでもない売国政府という他ないが、前出の郭洋春氏はこう言った。
「おそらく、安倍首相がよく使う『国益』とは、国民ではなく国家の利益のことを言っているのでしょう。国家とは権力です。国民のことを考えていれば、国民生活を破壊するようなTPPに前のめりになるはずがありません。自民党にとって、国益とは自分たちにとって都合がいい日米関係であり、死守すべきは自分たちに居心地のいい日米同盟になる。米国に追従することが国益だと信じ切っているのですからどうしようもありません」
米国のために、国民に大ウソをついて、国を売る安倍。一体どこの国のトップなのかと言いたくなる。こんなデタラメ男を首相にしていて、本当にいいのか。農業関係者だけでなく、国民全体が考えるべきだ。
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