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2013年10月09日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆現在、読売新聞朝刊「11面」(投書面)の「時代の証言者」(特別編)で連載中の野田佳彦前首相が「ウソつき首相」という汚名とレッテルを貼られて、衆院解散・総選挙・民主党大敗に追い込まれたように、今度は安倍晋三首相が、「ウソつき首相」のレッテルを貼られることになりそうだ。インドネシアのバリ島で10月8日開催のTPP交渉首脳会合の直前になって、自民党の西川公也TPP対策委員長が7日、「政府・与党が関税保護の対象としてきた農業の重要5項目(聖域)への保護が必要かどうか検討を始める」と発言し、これまでの方針を大転換する意向を示したからである。
このため、自民党内はもとより、全国の農家や農協など農業団体は、ビックリ仰天、てんやわんやの大騒ぎとなっている。政府・自民党は「聖域は死守する。できなければ、交渉の席を蹴ってくる」と勇ましいことを喧伝していたにもかかわらず、「大筋合意」を目の前にして、腰砕けしてきたのである。7月21日の参院議員選挙で「聖域死守」を公約し、農協など農業団体の支持を得て、大勝してきたので、本当に聖域を守れなかったら、安倍晋三首相が、野田佳彦前首相に続いて「ウソつき首相」の汚名とレッテルを貼られることになる。
野田佳彦前首相は、民主党衆院議員の大半を落選という地獄に陥れ、路頭に迷わせていながら、何ら悔いることもなく、消費税増税法案を成立させた自分の「決断」を「大英断」だったと悦に入っている。
しかし、信念に従い消費税増税法案を成立させたとしても、民主党政権樹立のために国民有権者に提示したマニフェスト(政権公約)に反した決断をし、行動に出て、「国民有権者を裏切り、ウソをついた」以上、その責めは負わなくてはならない。孔子が「民信なくば、立たず」(世の中というものは、国民どうしの信頼、信用を失っては成り立たない)と教えているように、たとえ軍備、食糧を捨てても、「国民どうしの信頼、信用」を捨ててはならないのである。野田佳彦前首相は、この根本のところを捨ててしまったのでは、「政治家=為政者」としては、失格である。安倍晋三首相が、いままた「前車の轍」を踏もうとしているということだ。
◆とにかく、農家や農協など農業団体に対して、いかにも「聖域を守る」かのような幻想を与えて、自民党候補者に投票させたのは、はっきり言えば「詐欺行為」になる。善良なる国民有権者を騙してはいけない。聖域を守れなかったときは、「補助金」を与えれば、みな黙るであろうと、見くびっているのが、そもそもの騙しである。
TPPが求めているのは、「関税なき自由貿易」であり、補助金を与えて支援することではない。このことは、政府・自民党は、百も承知していて、2013年度政府予算のなかに、「農産物などの輸出振興システム構築」ための「支援予算500億円」を盛り込んでいることが、何よりの証明である。
この予算を念頭においてか、安倍晋三首相は、参院議員選挙を目前にして、「農林水産物の輸出を2020年までに倍増、農業・農村の所得も今後10年間で3兆円から6兆円に倍増させる」と大風呂敷を広げていた。池田勇人元首相の所得倍増計画にあやかったのではないかと思われた。安倍晋三首相は5月17日、東京都内のホテルで講演し、成長戦略第2弾を発表したなかで、農林水産業の活性化を力説、21日には「農林水産業・地域の活力創造本部」(本部長・安倍晋三首相)を立ち上げ、2013年末を目指して、戦略の具体的な肉付けを行っていく考えを示している。
政府が、「支援予算500億円」を計上して「農産物などの輸出振興システム構築」を推進しているのは、農林水産業が補助金なしで、自力により製品を輸出して所得を倍増できるようにするのが目的である。安倍晋三首相は、このことを農家や農協などの団体に、早めによく説明しておく必要がある。補助金をもらえなくなるとわかれば、「また騙された」と落胆するに決まっているからである。そうでなければ、「ウソつき首相」のレッテルが2枚貼られることになる。
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