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財務省、日銀人事に次いで安倍官邸に2度目の"敗戦"
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37172
2013年10月07日(月)田崎 史郎 :現代ビジネス
「参りました。お説の通りです」---。
財務省はかつて予算編成、景気対策、税制改正をめぐる首相官邸や与党との折衝でこう言って、負けたふりをしながら、その実、己の考え方を7割方通してきた。政治家の自尊心をくすぐり、おだて上げて、財務省の主張の根幹を譲ることはあまりなかった。
だが今回、復興特別法人税を1年前倒しで廃止しようとする首相・安倍晋三や官房長官・菅義偉の強硬姿勢の前に、財務省は膝を屈しざるを得なかった。
安倍政権下で、財務省は今春の日銀総裁人事に次ぐ2度目の「敗戦」。民主党政権下に比べ、財務省の政権内のおけるパワーは弱まったのではないか。
■消費増税、財務省は高をくくっていた!?
消費税を来年4月から5%から8%に引き上げることについて、財務省は安倍がどっち道、予定通り引き上げざるを得なくなるを高をくくっていたフシがある。
菅と密接に連絡を取り合う自民党幹事長・石破茂はこう言って、いらだっていた。
「財務省は消費増税を野田さん(佳彦前首相)に決めさせ、安倍さんに上げさせ、それでダメだったら次は石破で、と考えているんじゃないか。政治家を使い捨てにするのは許さない。財務省は消費税を上げざるを得ないと高をくくっている」
石破が不快感を示すほどに、財務省が消費増税実施に自信を持つのも無理はなかった。
景気指標はかなり良くなっているのに加え、8月下旬、消費増税について有識者60人から意見を聴いた「集中点検会合」では約7割の人たちが予定通りの引き上げに賛成した。
消費増税を実施しないなら、見直し法案を秋の臨時国会に提出しなければならないのに、官邸から指示はなく、臨時国会の早期召集を目指す動きもない。
安倍の信任が厚い内閣参与の浜田宏一、本田悦朗が14年から1%ずつ5年間上げていく方法などを唱えた。
それでも、2016年に衆院選、参院選が行われる見通しという政治日程を考えれば、国政選挙が行われる年にも消費税を上げ続けなければならず、政治的にはあり得ない。
■財務省の読みは正しかった。しかし---。
その読みは正しかった。
しかし、5兆円規模の景気対策の内容を詰める作業を始めると、状況は暗転した。
公共事業でお茶を濁そうとする財務省案に対し、安倍や菅は経産省が提示した復興特別法人税の1年前倒し廃止案やその後の法人減税に乗ってしまった。
公共事業なら1年限りで終わるが、法人減税に手をつけると先々まで税収減を招くことになる。
それを案じた財務省は自民党税制調査会や公明党税制調査会の幹部に
(1)復興法人税を前倒し廃止しても、給与アップにつながる保証はない
(2)復興所得税がそのままでは不公平感を生み、企業優遇という批判を受ける
などと説明した。
しかし、自民党税調会長の野田毅は早々に降り、表向き反対を唱えていた税調インナーのひとりは菅に電話し、「景気のことを考えるなら、前倒し廃止しかありませんね」と伝え、"抜け駆け"した。
公明党は与党税調でぎりぎりまで財務省の主張に沿った反対論を展開した。
だが、自民党の大勢が官邸になびくのを目の当たりにして矛を収めた。今、公明党内ではこんな反省の声が上がる。
「公明党が官邸のブレーキ役なんて言われるもんだから、財務省をはじめ官僚が次々と説明に来る。ついついそれに乗せられる幹部もいるが、役人に喜ばれても公明党にとっては一文の得にもならない」
■財務省お得意の根回しも今回は奏功せず
「お前は主税局長か、総理秘書官か!」
政府与党内の調整の終盤、第1次安倍内閣で総理秘書官だった主税局長・田中一穂は、税調インナーの元官房長官・町村信彦から怒鳴られた。
町村は町村派会長として威厳を示そうとしているのに、官邸になびいてしまった財務省にいらだった。これを聞きつけた菅は田中に電話し、「怒られたんだって?国のためにやっているんだよな」とからかった。
安倍が今月1日に、予定通りの消費増税と景気対策を発表した後、毎日新聞と共同通信がそれぞれ実施した世論調査では消費増税賛成が反対を上回った。
共同調査では賛成53.3%、反対42.9%。内閣支持率は毎日新聞調査で9月比3ポイント減の57%となったが、共同調査では1.5ポイント増の61.8%となった。
消費増税を決定しても、ほとんど影響がなく、「復興特別法人税前倒し廃止で、支持率が5ポイント落ちる」という財務省幹部の「期待」は外れた。
これほど支持率が高い内閣だと、財務省が得意とする根回しは通じない。これに対し、安倍や菅は「財務省は失敗ばかり。財務省の主張と逆のことをやった方が上手くいく」として、勢いの乗る。財務省が次の戦いで勝利するためには発想の転換が必要だろう。(敬称略)
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