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第185臨時国会は安倍内閣の下で10月15日にも開会されようとしている。
政府与党はこの臨時国会を 「成長戦略実行国会」 と位置づけ、TPPや消費税増税、原発収束など、 生活危機への不満からくる人びとの政府批判をそらそうと、日本資本主義 「経済再生」 に向けた産業競争力強化法案など関連法案を重要法案にあげている。 2020年開催に決まった東京オリンピックもこのための重要な手段となった。
一方で、この国の前途を大きく左右する憲法・安保・防衛関連の重要法案を準備し、この臨時国会で成立を謀っている。 日米軍事同盟の飛躍的強化をねらう特定秘密保護法案や、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案、 明文改憲準備のための 「改憲手続き法修正案」 など、 安倍内閣がねらう米国と共に戦争をする国への飛躍のための集団的自衛権行使の合憲化の準備と合わせた重要法案の成立が企てられている。
参院選で安倍首相が期待した96条先行改憲論の立場をとる3党で、改憲発議に必要な3分の2の議席は得られなかった。 96条先行改憲論はもともと、第一次安倍内閣の9条改憲論の失敗から出てきた、迂回作戦ともいうべきものだったが、 立憲主義の破壊に反対する各界の運動の高揚のなかで、保守改憲派からもこれへの反対論が続出した。 ほとんどのメディアの世論調査は反対多数となり、安倍首相はこのままで 「国民投票をやっても負ける」 とぼやき、事実上の撤退を始めた。 これは世論が安倍政権の改憲の企てを封じ込めた重要な勝利であり、 2007年に9条改憲論の安倍内閣を退陣に追い込んで以来の画期的な経験と考えられよう。
もともと冷戦後の9条改憲論のねらいは 「集団的自衛権が行使できる国づくり」 をめざすもので、米国と共に海外で戦える日本の実現にあった。 今日では安倍首相らの9条改憲の目標は、自民党改憲草案がめざす 「天皇を元首に戴き、国防軍で米国と共に戦争をする国づくり」 にある。
安倍首相ら改憲派は 「中国脅威・敵視」 論や、北朝鮮脅威論を喧伝して、安保防衛体制の強化を訴え、改憲の条件を作ろうとしてきたが、 9条明文改憲は今日の世論の前で容易ではない。改憲派も明文改憲の実現には時間がかかると考えている。 96条先行改憲という迂回作戦にも失敗した現在、安倍首相らは集団的自衛権の行使に向けて、9条解釈の変更と、 さまざまな立法による 「実質的な改憲状態づくり」 推進の道に大きく舵をきらざるを得なかった。
秋の臨時国会では憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使によって事実上の改憲をめざして、 具体的には日米軍事同盟強化のための 「特定秘密保護法」 と 「国家安全保障会議(日本版NSC)設置関連法」 という重要法案が、 2ヶ月弱のわずかな会期の中で強行されようとしている。まさに暴走そのものだ。
すでにこうした憲法解釈の変更の障害になるとして内閣法制局長官の事実上の更迭を強行し、さらに9月17日、 再開した首相の私的諮問機関 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、 11月下旬か12月初めに集団的自衛権の全面的行使を容認する報告書をまとめる。 政府はこの私的諮問機関の答申で 「権威」 づけながら、それを年末に発表する 「新防衛大綱」 に反映させる。 これは戦後の安保・防衛政策の歴史的な変質を企てるものだ。
すでに防衛省は 「防衛計画の大綱」 見直しに向け7月26日に 「中間報告」 を公表した。 それによると、新防衛大綱では戦後の安保・防衛政策の基本であった 「専守防衛」 の突破が企てられており、 自衛隊の歴史的転換がすすめられようとしている。その際だった特徴は @ 自衛隊への 「海兵隊的機能」 の付与と、 A 策源地(敵基地)攻撃能力の保有であり、海外で戦争ができる自衛隊への転換だ。 敵基地攻撃能力については、1956年の政府見解に 「他に手段がないと認められる限り、基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれる」 との解釈があるが、従来、政府は専守防衛の立場から攻撃的兵器の保有はしない方針を維持してきた。 殴り込み部隊を意味する 「海兵隊的機能」 保持に至ってはなおさらだ。 政府はこれらを 「尖閣諸島防衛」 「北朝鮮のミサイル攻撃からの防衛」 の必要性の強調で正当化しようとしている。 中国脅威論で整備した 「防衛力」 であっても、米国の世界戦略に呼応した海外派兵全般に使用されるのはいうまでもない。
さらにこの問題では腰の重い連立与党・公明党との調整をはかりながら、 集団的自衛権行使の法的裏付けとなる 「国家安全保障基本法案」(概要2012年7月6日、 自民党総務会で決定)の来年の通常国会への提出が目指されていることは重大だ。
自民党による 「国家安全保障基本法案概要」 では 「国連憲章に定められた自衛権の行使は 『必要最小限度とすること』(第10条)」 と自衛権一般の行使がさらりと書かれている。この基本法によって従来から議論されてきた個別的自衛権、集団的自衛権の区別をとりはらい、 集団的自衛権の行使を正当化する。この場合、書かれている 「必要最小限度」 などという文言は何の歯止めにもなり得ないことは明らかだ。
安倍内閣は、あらたに私的懇談会 「安全保障と防衛力に関する懇談会」(北岡伸一座長)を発足させ、 国家安全保障戦略(日本版NSC)の策定(防衛・外交・経済政策などの一体化)をめざしている。 国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案(首相、官房長官、外相、防衛相による会合の常設)と内閣法改正案など関連法が議論される前に、 すでに内閣官房に100人規模の国家安全保障局を新設する、発足時は4〜50人の事務局、うち半数を自衛官にするなど、 具体的な体制作りが先取りして進められている。
こうした具体的な動きを背景にしながら、 自衛隊と米軍の協力の在り方を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)再改定と日米同盟の再編強化がすすめられている。 10月中旬に関係閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、事務レベルの検討を本格化させる方針を確認し、2015年の再改定がめざされている。
こうした解釈改憲の作業と合わせて、改憲手続き法の修正など、明文改憲の準備が進められている。 民主党政権時代に起動した憲法審査会は第2次安倍政権の下で本格的に再稼働した。 すでに衆院審査会では一通り憲法のレビューを終えたことにされている。与党はいよいよ改憲原案の審議に入る構えだ。
衆議院憲法審査会では改憲手続き法の 「3つの宿題」 の解決をめざして、事実上の違法・破綻状態にある 「憲法改正手続き法」 附則部分の改定、 が課題になっている。自公両党は臨時国会で民法や公選法と、国民投票、18歳投票権の切り離しによる改憲手続き法の修正を企てているが、 破綻した改憲手続き法の姑息な弥縫策にすぎない。改憲手続き法は、「修正」 ではなく、廃法と出直しをする以外にない。
憲法の改悪に反対する広範な諸団体で作る 「5・3憲法集会実行委員会」 は 「集団的自衛権の行使は平和憲法の破壊です。 憲法を守り、生かして下さい」 の請願署名運動を呼びかけている。 また、臨時国会開会日には15時から、同実行委員会の主催による恒例の 「集団的自衛権は平和憲法の破壊だ! 10.15院内集会」が衆院第2議員会館第1会議室で予定されている。 私たちも様々な団体や個人が、この秋、可能な限りの形態を駆使して、安倍内閣の憲法破壊の企てに反対してともに立ち上がるよう、呼びかけたい。
(「私と憲法」 149号所収 高田健)
http://www.news-pj.net/npj/takada-ken/041.html
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