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二兎を追うギャンブラー
http://blogs.yahoo.co.jp/hellotomhanks/64198472.html
★「田中良紹氏の視点ー(2013/10/02)」★ :本音言いまっせー!
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と諺は言う。
安倍総理は「財政再建」と「デフレ脱却」を両立させると称して、
来年4月からの消費増税8%を決断した。それは二兎を追うに等しい
賭けである。世界は冷ややかな目でそれを見ている。
一か八かの勝負に出るギャンブラーは迷いなど見せない。自らの運命を
すっきりと賽の目に賭ける。ところが増税を発表した時の安倍総理の表情
にはそれがなかった。迷った挙句の発表であることをうかがわせる
重苦しさがあった。その夜の安倍総理はテレビ局を掛け持ちして
増税の説明に努めたが、歴史的決断をした総理とは思えないほど生彩を
欠いた。
本当は増税はやりたくなかったのだろう。顔つきからそれが読み取れる。
もしかすると発表した後も迷いがあるかもしれない。
だから何度も「これ以外に道はない」と自らに言い聞かせるように
繰り返す。そして「財政再建」と「デフレ脱却」を両立させる説明は
矛盾だらけで説得力がなかった。
そもそもこの時期の消費増税にフーテンは反対してきた。
GDPの2倍に達する財政赤字を世界最悪の状況だと言うが、
誰から借金しているかといえば日本国民からである。
1500兆円と言われる国民の貯蓄が金融機関を通して国債を
買い入れている。アメリカもギリシアも外国から借金しているので
返せなくなれば国家は破たんするが、日本はそれとは事情が異なる。
ただし政府は国債の金利を支払わなければならない。
税収からまず金利分を国民に返還している。その比重が年々大きくなり、
今では予算支出の最大費目となった。つまり社会福祉や教育や防衛など
本来の国の仕事に回せる予算が年々削られていく。
少子高齢化で社会保障費が増えていく事も避けられない。
だから財政再建が必要だと言うのはその通りである。
しかし景気が悪い時にさらに悪くしてまでやるべき課題ではない。
むしろ景気を良くする事を先にやるべきだとフーテンは考えてきた。
そこは安倍総理と同じである。それではどうやって景気を良くするか。
安倍総理は企業を優遇する事だと言うが、フーテンは消費を押し上げる
事だと考える。そのためには消費者の懐を温めなければならない。
アメリカでは減税が消費拡大の切り札とされてきた。
しかし日本では減税だけでは不十分である。底辺生活者や農家など
そもそも税金を払わない層が多いので、減税だけでなく手当を支給する
必要がある。それが需要を作り消費を押し上げ企業の収入を増やして
景気の好循環を作り出す。
政権を取った民主党がやろうとしたのはそういう事だった。
しかし自民党はそれを「バラマキ」と呼び、批判の大合唱で潰して
しまった。そして自公民の三党は景気対策もないまま消費増税を
先行させる法案を押し切った。これで日本経済の先行きは暗澹たるものに
なるとフーテンは思ったが、スティグリッツなどアメリカの経済学者も
同じことを言った。
そこに登場したのがアベノミクスである。
アベノミクスはアメリカを真似た大胆な金融緩和で株価を押し上げ
景気を良くしようとする。日本の消費増税に呆れていたアメリカの
経済学者やエコノミストは当然ながらこれを歓迎した。市場も好感し
円安、株高が起きてアベノミクスは世界から評価された。
しかしその評価はアベノミクスの成功を保証するものではない。
「デフレからの脱却」というのは誰もやったことがない。
それを安倍総理がやると言ったからお手並みを拝見しようと言うだけ
の話だ。サマーズ元財務長官などは「3年経てば結果は出る。
それまではどうなるか全く分からない」と言っている。
つまりアベノミクスも先行きの分からない一種のギャンブルなのである。
しかしフーテンは日本がアメリカの真似をする事に反対である。
国家の基本構造が日米はあまりにも違いすぎる。常に低賃金の
移民労働者が流入してくるアメリカは世界に冠たる格差大国である。
その格差の上に繁栄が成り立つ。しかもアメリカは出生率が下がらない。
そこには若くチャレンジングな社会がある。少子高齢化の日本とは
対極と言って良い。その視点からフーテンはアベノミクスを批判してきた。
三党合意を変更するほどの政治力を安倍総理は持っていない。
消費増税は避けられないが、景気の腰を折る事だけはしたくない。
そのためにこれでもかと言うばかりに経済対策が並べられた。
基本は企業優遇と低所得層への1万円程度の「バラマキ」である。
そのため「税と社会保障の一体改革」という中長期的に日本の在り方を
考える路線と、足元の景気を上向かせる短期的路線とが混在する事に
なった。
短期の課題をクリアしてから中長期の課題に取り組むと言うのなら
それは物事の順序だが、短期と中長期が絡み合うと何が何だか分かぬ
うちに時間が推移していく可能性がある。本来は景気浮揚だけ考えれば
よかったのに、増税のマイナス効果を抑える事に力を取られ、
中長期の課題である福祉を考える力が足元の意識に奪われて散漫になる。
二兎を追うためどちらにも力が入らなくなる状況が確実にやってくると
フーテンは断言する。
かつてフーテンは「アベノミクスの支離滅裂」と言うコラムを書いたが、
その上に「消費増税も支離滅裂」になりそうである。
安倍政権が成長戦略として出そうとしている政策にはアメリカ型の政策が
多い。しかし消費税で福祉を支えるという考えはアメリカにない。
アメリカは直接税が中心の「小さな政府」で、消費税は福祉を重視する
ヨーロッパ型の「大きな政府」の政策である。
安倍政権ではそれらが混在する事になるが、絡まり合ってほどけなくなる
ことをフーテンは懸念する。
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