03. 2013年10月02日 20:52:53
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特集ワイド:消費増税と民主党 「果実」さらわれ歯ぎしり 毎日新聞 2013年10月01日 東京夕刊3党合意の文書にサインし、とり交わす民主、自民、公明の担当者。この時の約束はどこへ?=東京都港区で2012年6月15日、木葉健二撮影 3党合意の文書にサインし、とり交わす民主、自民、公明の担当者。この時の約束はどこへ?=東京都港区で2012年6月15日、木葉健二撮影 拡大写真 ◇3党合意どうなった 自民のような老獪さ欠いた 党を分裂させ、政権を失ってまで、消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革にこだわった民主党。長年の懸案に最終決裁を下す「果実」は安倍晋三首相に奪われ、増税に伴う経済対策の中身も公共事業やら法人減税やら、自民、公明両党と結んだ「3党合意」の趣旨とは外れたものに。民主党の現前衆院議員は今、何を思う。【大槻英二】 「3党合意の時とは話が違ってきているんですよ」 国会閉会中で閑散とした東京・永田町の衆院第2議員会館内の事務所で、“ミスター年金”こと長妻昭元厚生労働相(53)=衆院東京7区、当選5回=はいらだちの表情をにじませながら切り出した。 「消費税の増税分を全額社会保障のために使うのは大前提であって、3党合意には社会保障を今より充実させる、その費用のうち国の借金で賄っていた部分を減らしていくという二つの大きな目的がありました。国と地方の財政赤字を2015年度までに半減し、20年度までにゼロにするというのは菅直人、野田佳彦、安倍晋三の歴代3首相が対外的に表明した、いわば『国際公約』です。おカネに色はついていないから自公は『全額社会保障に使う』と言い張るでしょう。しかしそれは国民にトリックをかけるようなもの。公共事業や法人減税のために借金が減るどころか膨らむとしたら国際公約に反し、結果として社会保障のために使うはずだった増税分を流用したことにもなります」 「ここにこう書いてあるんです」。長妻氏は3党の担当者が署名した昨年6月15日付の合意文書の写しを示した。<消費税率の引き上げにあたっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する> 来年4月から消費税率を5%から8%に引き上げる増税は予定通りに進む一方、社会保障制度改革の道筋は示されていない。年金や高齢者医療制度の抜本改革を求める民主と現行制度維持が基本の自公との議論は平行線をたどり、民主は今年8月、3党による社会保障制度に関する実務者協議から離脱。長妻氏はそのメンバーの一人だった。 「税率を10%に引き上げた時には1%分に相当する2兆7000億円を社会保障の充実のために使うことになっています。ところが政府は、介護保険の全国一律サービスから要支援者を外す案など社会保障のカットや負担増のメニューばかり出してきていて、『充実』の方は明らかにしていません」。そうした問題点を追及する場となるはずの国会も開かれることなく、事は進んでいく。 とはいえ、それもこれも民主党の力不足が招いたことなのでは? 「3党合意の中身に間違いはなかったと思っています。ただ選挙で敗れ、我々のパワーが落ちてしまっているからこういう事態を許しているわけで、責任は痛感しています。このままでは国民との約束を破ることになりかねない。汚名をそそぐためにも3党合意の理念に戻るよう主張し続けます」。自らに言い聞かせるように言った。 民主党にとって消費税は、触るたびに大やけどをする難物だった。政権交代した09年衆院選の公約には消費増税を明記しなかったが、10年参院選の直前、当時の菅直人首相が「自民提案の税率10%を参考にしたい」と表明し惨敗。衆参の「ねじれ」が生じた。続く野田佳彦前首相が「不退転の決意」で3党合意を取りつけ、増税法成立を果たす一方、造反した小沢一郎生活の党代表らが大量離党。昨年12月の衆院選で壊滅的大敗を喫し、政権から転げ落ちた。 有力議員がバタバタと落選したその衆院選で、総務相だった樽床伸二氏(54)=衆院大阪12区=も苦杯をなめた。民主党本部の“前議員室”で思いを聞くと「党が分裂しようとも歯を食いしばって消費税上げに取り組んできたのは『社会保障の目的税にする』という目標があったから。税率を3%上げて2%分は経済対策で返しますとなると話が違う。返すくらいなら初めから引き上げ率を1%にして、目的税であることを明確にしてもらいたい」。一息にそう述べると「私の意見はそれですべてですわ」。 かろうじて勝ち残った議員らは巨大与党にどう挑もうというのか。9月から国会対策委員長を務める松原仁衆院議員(57)=東京3区・比例で復活、当選5回=は「年金の抜本改革などが積み残されたまま、消費税上げだけが進むのはあまりにもいびつ」と憤る。「増税の最終判断は首相の専権事項としても、事前に国会で野党からのさまざまな疑念、疑問に答える義務が政府にはある。だから臨時国会の早期召集を求めたのに、増税実施の発表後、10月半ばから審議するというのは本末転倒です」 半年後に消費税上げが実施されるまでは諦めずに民主党の主張を訴え続けるという松原氏。だが、3党合意がないがしろにされている状況を意気込みだけでひっくり返せるものだろうか。国対委員長はため息をついた。「我々は正しい旗を振りかざしてはいたけれど、戦術において自民党のような与党としての老獪(ろうかい)さが欠けていたのは残念だ」 「私だってアベノミクスで景気が回復するならそれでいいと思うが、今のままでは賃金は上がらず年金は下がり、物価だけが上昇して生活が苦しくなりかねません」。そう危惧するのは党「次の内閣」厚生労働相の山井(やまのい)和則衆院議員(51)=京都6区、当選5回=だ。「いくら企業を優遇しても雇用や社会保障に対する国民の不安が高まれば消費は増えず、景気も上向かない。その意味では、今回の税率3%引き上げで国民1人当たり年間約5万円の負担増となるのに対し、低所得者への給付金が1年半で1万5000円というのは少な過ぎます」。復興特別法人税の前倒し廃止には「企業ばかり優遇して不公平」と与党内からも批判が広がる中、野党側に反転攻勢のチャンスはないのか。 山井氏は小泉純一郎政権と第2次安倍政権の政策を比較しながら、次のような見立てを語る。「05年に当時の小泉首相が郵政選挙で圧勝してから4年後に自民党は政権を失った。その大きな理由は『消えた年金』『後期高齢者医療制度』『労働者派遣法の緩和などによる非正規雇用の拡大』の三つ。つまり雇用と社会保障を切り捨てたことです。アベノミクスは小泉構造改革以上に格差を広げかねません。小泉元首相は消費税を上げなかった代わりに公共事業もあまりやらなかった。安倍首相は消費税を上げ公共事業もやる一方、社会保障をカットしようとしている。国民の怒りはより大きくなる可能性があります。その時こそ民主党が受け皿の中心になりたい」 アベノミクスが失速すれば国民の怒りが沸き立つことがあるとしても、再び民主党に風が吹くことはあるのか。それは今後、与党を鋭くチェックできるかにかかっている。 ============== ◇「特集ワイド」へご意見、ご感想を t.yukan@mainichi.co.jp ファクス03・3212・0279 関連記事 消費税:4月8%に引き上げ 安倍首相が表明 (10月01日 13時34分) 消費増税:首相、午後表明 5兆円対策で景気腰折れ回避 (10月01日 11時42分) 藤村前官房長官:政界引退へ 衆院選で落選 (10月01日 06時15分) 藤村・前官房長官:政界引退へ (10月01日 06時03分) 消費増税:民主税制調査会が見解 政府をけん制 (10月01日 06時03分) オススメ記事 特集ワイド:消費増税と民主党 「果実」さらわれ歯ぎしり 【関連記事】 消費増税:来春8% 着実な経済活性化を 各界から求める声 /千葉(2013年10月2日 12時46分) 【関連記事】 消費増税:来年4月から8% 景気腰折れ懸念 被災者に不満、社会保障は期待 /埼玉(2013年10月2日 12時31分) 【アクセス上位記事】 特集ワイド:消費増税と民主党 「果実」さらわれ歯ぎしり写真付き記事(2013年10月1日 15時06分) 【アクセス上位記事】 くらしナビ・ライフスタイル:優しく繊細「日本ワイン」写真付き記事(2013年10月2日 6時07分) 【SNSのジャンル上位記事】 美術賞:「日産アートアワード」グランプリ決まる(2013年9月25日 19時15分)
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