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2013年09月30日(月)高橋 洋一 現代ビジネス
いよいよ10月だ。衣替えで季節も変わったことが実感できるが、1日はよりによって消費税増税アナウンスがある。
政府として増税方針を述べるので、秋の臨時国会では是非ともきちんとした国会論戦をやってもらいたいものだ。臨時国会は10月15日から開くようだが、当初の予定より遅く始まり、早く終わる。どうやら、政府は国会をあまり長くやりたくないようだ。しかも、しょぼくれた5兆円の補正予算は、10月15日から予定されている臨時国会には出さず、来年、通常国会の冒頭で、という話もでている。
■歳入庁をなぜつくらないのか
それにしても、消費税の基本的なことを国民は十分に理解できずに、増税が進んでしまった。
日本経済新聞社とテレビ東京が9月27〜29日におこなった世論調査では、消費増税について、賛成47%・反対48%と意見はまだ分かれている。ちなみに、この質問は、「安倍首相は消費税の税率を来年4月から8%に引き上げることを10月1日に表明します。あなたはこの引き上げに賛成ですか、反対ですか」だ。まだ、安倍首相は何もいっていないのに、増税することを決め打ちしての質問も酷いが、それにも関わらず意見が分かれているのは、潜在的な増税反対が多いからだろう。
ちなみに、日経新聞は、8月26日付け朝刊で「消費増税 7割超が容認」との見出しをつけたが、とんでもない報道だった。というのは、質問は「予定どおり引き上げるべきか?」について、「引き上げるべき」17%、引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」55%を合計したものを「消費増税 7割超が容認」という、”誤報”に近いものだった。
新聞はこうした増税一本槍の論調ばかりだ。前出の世論調査で、「消費増税に備え、あなたはどのような政府の対策が重要だと思いますか。次の中からひとつだけお答え下さい」の質問に対して、「食料品などの消費税率を低くする軽減税率」48%、「所得税など個人向けの減税」18%、「現金給付など低所得者対策」10%、「賃上げや設備投資を促す企業向けの減税」7%、「公共事業」5%が上位五つの回答だ。
新聞業界は、軽減税率を希望しているので、新聞の”教育効果”のために軽減税率の回答が高いのかと邪推してしまうそうだ。
軽減税率と現金給付を比較すれば、ある品物について軽減税率を適用すると、所得の高い人まで恩恵を受けるに対して、現金給付のほうは所得の低い人向けに手当できるので、明らかに現金給付のほうが優れている。新聞では、自己の業界に不利になるので、こうした正論はなかなか出てこない。
もっとも、本格的に現金給付をするためには、課税ラインより上の人は減税、課税ラインより下の人へは現金給付という給付付き税額控除にならざるをえない。それを実施するためには、番号制と歳入庁の社会インフラがないうと難しい。番号制はやっと制度が動き出したが、歳入庁はまったく手がついていない。このコラムで再三指摘してきたが、社会保険料が10兆円以上増収になるし、何より税と社会保険料の徴収の不公平がなくなる。
国民年金では、2012年度の保険料納付率は59%だった。デフレ以前は納付率は80%台をキープしていたが、1997年度に79.6%と80%台を割ると、デフレ悪化により2001年度には70.9%にまで低下した。2002年度から国民年金保険料の徴収業務が市町村から国(社会保険庁)に移管されると、納付率は一気に62.8%にまで低下してしまった。
これは、社会保険庁の徴収能力の欠如とともに、市町村が徴収業務をやっていたときには国民も市町村税の感覚があったからだ。
こうした社会保険料の徴収を穴だらけにしておきつつ、消費増税で取り繕うのは間違っている。しかも、しょぼくれた「1万円」の”簡素”すぎる給付ではまずいだろう。臨時国会では、是非とも「歳入庁をなぜ作らないのか」を政府に聞いてもらいたい。
■不公平を是正するインボイス
次に軽減税率であるが、その導入の必要性は乏しいと思うが、もし導入するとすれば、「インボイス方式」が欠かせない。インボイス方式とは、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除することができる方式であり、世界では日本を除くすべての国で採用されている。
一方、日本は、「請求書等保存方式」であり、帳簿の保存と取引の相手方(第三者)が発行した請求書の保存を仕入税額控除の要件としている。軽減税率(複数税率)の場合、請求書に適用税率・税額の記載(インボイス)がないと適正な仕入税額の計算は困難になるので、軽減税率すら導入できなくなる。
また、インボイスがないと、1%刻みのような増税も、転嫁が難しくなってできなくなる。今回、1%刻みの増税を主張しても、インボイスがないので机上の空論になってしまった。さらに、インボイスがないために、増税すると逆に儲かる人も出てきて、消費税脱税というか、猫ばばという不埒な輩もでてくる。インボイスは税の不公平をなくすためにも必要だ。
こうした「インボイスをなぜ日本では導入しないのか」も国会で質問してほしい。
■その場しのぎのロジックではダメ
前出の世論調査で、「日本の法人税は諸外国に比べて高いと言われています。あなたは法人税を諸外国並みに引き下げることについて、賛成ですか、反対ですか」という質問で、「賛成だ」44%、「反対だ」40%と、これも結論を誘導する質問なのに回答が拮抗している。
もともと、消費増税で、財務省は経済界と法人税減税とのバーターで握ったという噂がある。もちろん正式にはそんな約束はないのだが、経済界の消費増税への賛成ぶりからいわれているのだ。この噂に不満を持っている人は多い。消費増税に反対の人が法人税減税に批判的でもおかしくない。
政府は、法人税減税のロジックをキチンとしないとまずい。法人税が海外でなぜ低くなっているかというと、個人段階で所得・資産補足をきっちり行っているので二重課税排除の観点から法人税は少ないほうがいいからだ。個人段階での補足のためには、やはり番号制と歳入庁という社会インフラに行き着くが、「政府は法人税についてどのようなロジックで、今後どのようにしていくのか」を臨時国会で聞いてほしい。
なお、前出の世論調査で、「政府は震災復興のための法人税の割り増し分を予定より1年早く廃止する方針です。あなたはこれに賛成ですか、反対ですか」という質問では、「賛成だ」32%、「反対だ」54%と、反対が多い。
そもそも、震災という100年から数百年に一度というできごとに、増税で対応するのが間違っている。100年から数百年かけて税で完済するような国債で対処すべきものだ(2011年4月18日付け本コラム『あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ 本当の国民負担は増税ではない』 )。経済学では、課税の平準化として経済学部学生も知っている話だ。
それを、2012〜2015年の3年間の特別法人税、2013〜2037年の25年間の特別所得税、2014〜2023年の10年間の住民税のそれぞれの増税でまかなう。世論調査の結果は、なぜ法人税だけが早く増税から逃れらることへの批判であろう。
このように、基本的なことを知らずに間違ったその場しのぎのロジックで増税をすると、その後の修正が大変になる。
歳入庁やインボイスをやらずに増税し不公平感を高め、法人税減税の哲学なしで行われる消費増税について、マスコミはでたらめばかりなので、せめて臨時国会で与野党でキチンとした議論をしてほしい。
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