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2013年09月27日
国連総会で「国連総会の演説を通じて、国際社会における日本の存在感をしっかりとアピールしていきたい」とキリリと語りニューヨーク・マンハッタンにある国連本部ビルに意気揚々と出かけた我が国の安倍総理大臣様は、今回も肝心のバラク・オバマ殿の謁見は叶わなかったようである。隠密でフォーシーズンズ・ホテルの一室で密会したと云う噂も聞こえてこない(笑)。国民の目から見る限り、これほど米国大統領からすげなくされた同盟国日本の総理大臣は皆無だろう。
しかし、我が国の総理大臣は、米国大統領とは既に充分に信頼関係が築かれているので、無理に時間を調整する必要はないとでも言いたい風情で、兎に角風の便りに聞く、オバマ政権からのミッションを死に物狂いで、実現しようと、国内の世論を二分する重大事を、さも軽々と実行しようと意気込んでいる。筆者は何度となく、安倍晋三の情緒的ナショナリズム嗜好と世界金融勢力が強くプッシュするグローバリズム経済を日本国内に持ち込もうとしている。この論理的矛盾は、真っ赤に白を混ぜピンクな国になろうとしているようなものだ。
集団的自衛権の実行可能に向け、政権は確実に動いている。我が国の自衛隊が米軍の傭兵となり、必要とあらば、世界の果てまでも米軍傭兵として存在感を示すなどと、世迷言染みた話を本気でしている。少なくともオバマ政権は、日本の自衛隊に、そのような行動を要求している事実はない。仮に忖度外交だとしても、あまりにも急激な方向転換である。何処かで、何かを、重大な誤謬付きでミスジャッジしている可能性さえある。
ただ、ミステリー小説のようなストーリーを展開させると、“深慮遠望な野心”が見えないわけでもない。“風が吹けば桶屋が儲かる”ように、次々と日本を取巻く世界情勢が変化し、米国も日本の核武装の必要性を容認する、と云う奇想天外な仮想のシナリオに準じた目的を持っているかも?と云う問題は、現実存在する。今年の3月に、米上院の外交委員会で「日本の核武装」が主要な論題となった点を注意深くみておく必要がある。この話題が出たのは、北朝鮮政策の延長線上の話なのだが、仮説の上に仮説を重ねるような議論でもあった。
北朝鮮が長距離弾道ミサイルを装備した暁の心配をしているのだが、それを非軍事的に阻止できるのは中国だ。しかし、中国は見て見ぬふりをしている。その中国に日本核武装と云う威嚇情報を提示すれば、躍起になって、北朝鮮核問題解決の為に動くに違いない、と云う話の流れで、日本核武装論がオマケのように展開されたようだ。この米国議会の話は別にして、朝鮮半島全体の流動的情勢を鑑み、多くの識者が、「日本核武装」について、論を展開している。今日は、その一端を下記に紹介するにとどめる。なにせ長文なので、読む方も大変に違いない(笑)。筆者の考えは、当面保留しておく。先ずは、船橋洋一氏と田中宇氏のコラムを読んでいただき、夫々に解釈して貰おうと考えている。
≪ 核保有の統一韓国に日本も核武装で対抗を…「日本最悪のシナリオ」提示
「北朝鮮で内戦が発生する。この機会を生かして統一に成功した韓国は核保有国となる。 日本も核で対抗する」。
日本のシンクタンク「財団法人日本再建イニシアティブ」(理事長、船橋洋一元朝日新聞主筆)が提示した「日本最悪のシナリオ9つ」の一つ、北朝鮮崩壊シナリオだ。
財団は日本が直面した危機を▽北朝鮮の崩壊▽尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる衝突▽国債金利の暴騰▽首都直下地震▽サイバーテロ ▽伝染病の大流行▽ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー危機▽核テロ▽人口減少−−の9つで整理した。各テーマ別に「発生する可能性が高い」シナリオではなく、日本の立場で「最悪のシナリオ」に焦点を合わせた。
日本が想定した最悪の北朝鮮崩壊シナリオは、20XX年2月17日の金正恩(キム・ジョンウン)の平壌(ピョンヤン)脱出と弾道ミサイル発射から始まる。弾道ミサイルが落ちたのはなんと平壌。保守派と軍部勢力が金正恩を追放し、平壌を抜け出した金正恩は、直轄の弾道ミサイル部隊を動かし、「平壌勢力」に対する反撃に出る。
内戦に入った北朝鮮は無政府状態となる。韓国大統領は極秘計画「復興」を米国に密かに発動する。「復興」の核心は「平壌での臨時行政府樹立」。南北統一計画だ。混乱の中、一部の北朝鮮部隊がソウルに向けてミサイルを発射し、韓米政府は軍事行動を開始する。北進した韓国軍が平壌に「統一韓国、平壌総督府」を設置し、米中は直ちに国連安全保障理事会を招集する。米中の内部で「非難決議案」採択の動きも出たが、事態の収集が優先という判断で結局は留保される。
中国は北朝鮮進軍を検討するが、中国を牽制するには統一韓国が望ましいと判断したロシアが真っ先に「統一韓国」を承認する。結局、米国・日本・中国も後に続くことになる。統一韓国は日本に「1965年の韓日国交正常化当時、5億ドルを支援したのは韓国を対象にしたものであり、半分の経済援助金を追加で出すべき」と主張し、現在価値換算額100億ドルを要求する。これに対し日本ではナショナリズムが最高潮に達する。
一方、金正恩は韓国側に慈江道にある秘密地下核濃縮施設の存在を打ち明ける。こうした中、米中は統一韓国政府樹立前に「北朝鮮の有事の際、米国と中国が韓半島を共同管理する」と密約した事実が暴露され、韓国のナショナリズムも強まる。続いて統一韓国の第2期大統領は核保有宣言と核拡散防止条約(NPT)脱退、韓米安全保障条約の破棄に動く。これに日本も核武装で対抗し、米国も北東アジア勢力均衡のためにこれを容認する。結局、最悪のシナリオは統一韓国と日本の核保有に帰結される。
財団は昨年5月から9カ月間、日本国内の主要専門家と熟考を繰り返した。政府省庁の元・現官僚の意見も聴いた。こうして作成されたシナリオを根拠に、現行法・制度、官民協力、対外戦略、首相官邸体制、コミュニケーションの面で補完すべき点を提言の形で整理した。
財団はこうした内容を冊子にして来週から市販する予定だ。安倍晋三首相には12日に伝えられた。船橋氏は「リスクを認知して正しい対 策を立てるためには、『こういう話は空想にすぎず、起きる可能性は低い』として無視してはならないと判断した」と述べた。 ≫(中央日報日本語版:「財団法人日本再建イニシアティブ」船橋洋一)
≪ 日本の核武装と世界の多極化 2013年5月15日 田中 宇
原発で排出される使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す、日本原燃の青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場は、2006年から試運転中だが、トラブル続きで正式操業が何度も延期されている。日本政府が最近、この工場を今年10月から正式操業することを計画し、米国政府が懸念を表明した。「プルトニウ ムを燃料として使う原子炉が国内で動いていないのに、なぜ再処理を進めるのか。日本は核兵器を作るつもりでないか」という懸念だ。米政府が懸念しているとの報道は、権威ある右派有力紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が5月1日に行った。反原発メディアが発したのでなく、右派有力紙の指摘だけに、日本で増殖した右派の人々も事実として受け止めざるを得ない。 (Japan's Nuclear Plan Unsettles U.S.)
日本政府の原子力規制委員会は、今年中に原発や核燃料に関する新たな安全基準を策定する予定で、新基準は従来の基準より厳しくなる。新基準ができる前に再処理工場の正式稼働を認められないと、同委員会は反対している。 (U.S. Opposes Japan's Nuclear Plan)
プルトニウムを主たる燃料に使う高速増殖炉は、一般の軽水炉より危険度が高く、日本に一機だけある高速増殖炉「もんじゅ」は、事故や故障が続いて運転を停止したまま、再稼働のめどが立っていない。プルトニウムは、ウラン燃料と混ぜて軽水炉の燃料(MOX)にできるが、国内原発50機のうち動いているのは2機だけだ。急いで新たな燃料を作る必要はない。MOXを軽水炉の燃料として使うことの安全性も確立していない。日本には、フランスで再処理してもらったプルトニウムもある。
日本は現在、新たなプルトニウムを核燃料として必要としていない。米政府が「日本は核兵器を作るつもりか」と勘ぐるのは当然だ。六ヶ所村の再処理工場がフル稼働すると年間9トンのプルトニウムを抽出できる。核兵器2千発分だ。安倍政権の周辺からは、日本が核武装すべきとの世論を盛り上げようとする動きがある。日本外務省は、06年9月に、日本が核兵器を作るとしたら3−5年の時間と3000億−5000億円の経費がかかると試算した核武装 議論のたたき台となる報告書を作っている(報告書を、防衛省でなく外務省が作った点に注目)。日本は核兵器を作る方向を模索していると考えられる。 (Is Japan Developing a Nuclear Weapons Program?)
現実を見ると、六ヶ所再処理工場の正式稼働は困難だ。政府内で六ヶ所を正式稼働させたい勢力がいることに対抗し、原子力規制委員会は5月 15日、プルトニウムを燃やす「もんじゅ」について、1万個の機器に点検漏れ(保安規定違反)があったことを理由に、再稼働に向けた準備をやめるよう命令した。もんじゅが動くめどがなければ、六ヶ所の正式稼働を急ぐ必要も減る。この決定は、六ヶ所正式稼働を急ぐ政府内勢力に対する原子力規制委員会からの反撃だ。日本政府の中枢で、核武装したい勢力としたくない勢力がいて暗闘している感じだ。
最近、もんじゅだけでなく、一般の軽水炉の再稼働を困難にする決定がいくつも出されている。原子力規制委員会は5月14日、福井県の敦賀 原発2号機の直下に活断層があると判断する決定を下し、敦賀2号機は廃炉の可能性がぐんと高まった。青森県の東通原発の敷地内でも活断層が見つかり、建設中や完成後数年しか経っていないのに廃炉の可能性が高まっている。今夏は電力各社が電気を安定供給できそうだとの見通し記事も出た。電力を安定供給できるなら、国民の不安を押しのけて原発を再稼働する必要がない。以前の記事で予測したとおり、国内原発の再稼働は拡大しそうもない。稼働中の福井県の大飯3、 4号機も、次回の定期点検で運転停止した後、再稼働できるかわからない。 (日本の原発は再稼働しない)
安倍政権の肝いりで、日本企業がトルコで原発新設を受注しそうだという報道が出る半面、米国では原発の新規建設が次々と頓挫し、原発の新設が全くできない状況になっている。シェールガスブームなどによる石油ガス相場の低下もあり、原発新設が相次ぐと予測され「原子力ルネサンス」と喧伝された数年前に比べ、米国の状況は激変した。 (Nuclear Power Falters, Engulfed by 'Cauldron' of Bad Luck)
先進諸国では原発がすたれていきそうな半面、中国と韓国は、日本が核燃料の再処理を稼働したがるのを横目で見ながら、日本に負けない核燃料再処理をやりたがっている。これまで再処理を自国内でやっていなかった中国は、フランスの政府系原子力産業アレバに再処理工場の建設を発注した。日本の六ヶ所と同規模の再処理工場だ。韓国は、米国と締結している原子力協定を改定し、これまで同協定で許されず米国に委託してきた核燃料再処理を自国内でやり たいと言い出している。日本がプルトニウムを増産するなら、うちも負けられないというわけだが、米国は韓国の要請を断っている。日本の核燃料再処理の拡大は、中国や韓国が対抗して再処理を拡大する動きを呼んでいる。米国はこの点も懸念している。日本が再処理拡大を通じて核武装し、対抗して韓国も核兵器を持ち、中国は保有核兵器を増やすかもしれないからだ。 (China approaches reprocessing commitment)
米国の懸念が当たっているなら、日本は急いで核兵器を開発しようとしている。日本が急いでいないなら、先にもんじゅや軽水炉群を再稼働していき、プルトニウムを核燃料として使う必要があることを世界に示し、世界に納得してもらってから再処理工場を正式稼働すればよい。そうした気の長い話をすっ飛ばし、国内原発がほとんど稼働していないのにプルトニウムだけ作りたがる日本は、急いで核武装したがっていることがバレバレだ。
日本が急いで核武装したがる理由は何か。北朝鮮の核武装か。中国の脅威か。私が見るところ、本質はいずれでもない。日本政府、特に、核武装の計画書を書いたことがある外務省が考える至上の国是は対米従属だ。北朝鮮や中国の脅威拡大は、日本が米国の核の傘にしっかり入る好機であり、むしろ日本が核を持たず丸腰であり続けた方が、日米同盟の強化に好都合だ。 (尖閣問題と日中米の利害)
それなのに日本外務省は、逆に日本が核武装したがっていると世界に思わせてしまう核武装計画書を作った。外務省がこんなことをするのは、日本が米国の核の傘の下に居続けられない可能性が高まっているからだろう。そうでなければ、いくら秘密裏でも、報告書など作らない(外務省は日本が機密性の低い国であることを熟知している。政治家が官僚を外してこっそり独自策をやろうとするたびに、それをマスコミにリークして潰すのは外務省自身だ)。外務省は、米国側の認知を得つつ、核武装計画書を作った可能性が高い。米国はすべて把握した上で懸念を表明して見せている。
昨年あたりから、日本政府の高官が「米国には、日本の防衛を米軍に頼らず自前でやれと言われており、わが国もそのつもりだ」と表明する頻度が増している。日本で防衛庁が防衛省に昇格した07年には、すでにこの傾向が始まっていた。米国は、イラク占領が泥沼化した05年ごろから財政の浪費がひどくなり、08年のリーマンショック後の金融救済で浪費が激増し、外国を守るために金をかけられなくなった、 (日本の孤立戦略のゆくえ)
オバマ政権は一昨年から「アジア重視(中国包囲網)」の戦略を掲げているが、これは日本などアジアの同盟諸国から金や市場アクセスの利権を巻き上げるための政策にすぎない。中国は米国の大企業にとって金のなる木だ。米国は、大企業と金融界が最大の権力を持つ国だ。米国は、中国と本気で対立する気などない。オバマ政権は2期目に入り、財政赤字削減を本格化し、外国への軍事駐留費用をさらに削ろうとしている。 (米国の「アジア重視」なぜ今?)
米国は財政面だけでなく、国際政治の影響力(覇権)の分野でも、自国の力の低下を容認している。中東では、シリアやイランやパレスチナの政治問題が、米国主導から中露などBRICS主導による解決態勢へと切り替わり始めている。 (◆大戦争と和平の岐路に立つ中東)
日本が得意とするはずの貿易の分野でも、WTOの事務局長がブラジル人のアゼベドに代わり、WTOの主導権が米欧からBRICSに移る流れが加速することになった。アゼベドは貿易交渉の専門家だが、米国主導で築こうとして頓挫しているドーハラウンドをBRICSが潰したときの張本人だと、 権威あるWSJが指摘している。WSJの記事の題名は「(アゼベド就任による)WTOの衰退」だが、この「衰退」は欧米日から見た視点であり「WTOは BRICに乗っ取られ、米欧にとって損な機関になる」という意味だ。日本がWTOにそっぽを向いてTPPにうつつを抜かしている間に、WTOは非米・反米 的なBRICSに乗っ取られている。 (The Decline of the WTO)
BRICSの台頭、つまり世界が米国の単独覇権体制から多極型の覇権体制へと展開する流れが確定的になっている。トルコはNATO加盟国だが、その一方で、NATOのライバルである中露主導の上海協力機構に入ることにした。NATOの主導国である米国は、トルコの動きを黙認している。 (Turkey Sees Future in Asia With Joining SCO)
それどころかオバマはイスラエル訪問時、トルコのエルドアン首相に電話して、ネタニヤフを電話口に出して謝罪させ、イスラエルとトルコの 和解を仲介した。米国では右派のWSJが、今後のシリア内戦終結に向けた交渉で、米国とトルコが協調して主導役をすべきだと書いている。 (Needed: A Turkish-American Plan for Syria)
米国の覇権が縮小して中露の台頭が加速している。米国主導のNATOがアフガニスタン撤退とともに有名無実化(EUは軍事統合でNATO不要になる)する一方で、中露主導の上海協力機構が中東などユーラシア西部の管理者になりそうだ。トルコが上海機構に接近するのは当然といえる。米国は、NATOに居続けながら上海機構に入るトルコの動きを黙認するのだから、日本が日米同盟を堅持しつつ中露と仲良くしても黙認する可能性が高い。 (アフガンで潰れゆくNATO)
米国の覇権を支えてきたドルは不安定さを増している。金融危機が再発したら、覇権の多極化が決定的に進む。米国の覇権が蘇生する可能性は減りつつある。日本政府が、国民の将来を考えるなら、日米同盟を維持しつつ中露との協調を深める「トルコ式」をやるのがまっとうだ。いまさらだが、鳩山元首相は「宇宙人」などでなく、実は良い日本人だったことになる。長期の国益を考えるなら、尖閣問題で中国と対立し続けるのは愚策だ。 (多極化に対応し始めた日本) (尖閣で中国と対立するのは愚策)
国民の大多数が中国を嫌いなら、好きなように中国と対立すれば良い。安倍政権は選挙で圧勝して民主的に選ばれたのだから、好きなようにやって良い。ただし、アベノミクスは日本の財政破綻を招く可能性が高いし、中国との長期対立は日本を国際的に孤立させる。日本はおそらく子孫の代に、国民の生活水準として、中国より貧しい国になる。日本人は民主的に自滅の道を選択した。清貧は日本人の気質に合っている。 (財政破綻したがる日本)
すでに書いたように、外務省が核武装計画書を書いたのは、米国の覇権衰退と多極化が進み、日本が対米従属できなくなる可能性が高いと知っていたからだ。多極化への対応策なら、静かに軸足を多極側に移していくトルコ式や鳩山式(小沢式)の方が良いのだが、外務省をはじめとする日本の官僚機構 (とその宣伝機関であるマスコミ)は鳩山小沢を潰すことに全力を傾け、安倍を担ぎ出し、中国との敵対を意図的に強めつつ、対米従属一本槍を続け、その一方で対米従属できなくなった時への備えとして核武装を模索している。
日本は戦後、戦争反対と核廃絶を掲げて「平和を愛する」国だった。戦争放棄の憲法は過激だった。今の日本は、反戦反核の過激さから、核武装や好戦性の過激さへと、極端から極端に転向している。日本人が好きだったはずの「中庸」は吹き飛んでいる。戦略性に富むなら極端から極端でも良いが、今の日本の動きからは戦略性が感じ取れない。
日本の上層部(官僚)は「米国が覇権を失って中露などが台頭するなら、その前に核武装しよう。いったん核武装してしまえば、誰も廃絶を強要できまい」と思っているのかもしれない。しかし、この考えは甘い。日本は貿易立国だ。核武装を世界から非難され、経済制裁されたら半年も持たない。日本が核武装するとしたら数年後だが、そのころには国連の主導権は中露など非米反米諸国に移り、米国は日本を支持しても国連を動かせなくなっている。 (国連を乗っ取る反米諸国)
核武装するなら、日本はNPTから脱退せねばならない。それは、国際社会での日本の孤立を象徴する事件になるだろう。日本は戦前に国際連盟から脱退して独伊と組んで戦争にのぞみ惨敗した。今またその愚行を繰り返そうとしている。戦後の日本は、二度と「負け組」に入らなくてすむよう、安保や外交の権限を放棄して米国に預け、事実上の米国の植民地となる道を選んだ。だが、日本はその後の60年間に世界のことを何も学ばず、考えず、結局のところ、米国覇権が崩れそうな今、戦前と同じ失策を繰り返そうとしている。
日本が、北朝鮮のように飢餓に直面しても国家や社会を維持していく根性や貧困甘受性、もしくはイスラエルのように世界を動かす謀略や恫喝の力があるなら、世界から制裁されてもやっていけるかもしれない。しかし今の日本には、そのどちらもない。日本には、核兵器を持つために必要な心構えや洞察力(世界の動きを見抜く目)がない。
そもそも日本は、1列島1民族1国家の「天然の国」であり、深い実体がある。北朝鮮やイスラエルのような、頭でっかちで人工的で、はかない「歴史のあや」とも言うべき浅い実体の国々と根本的に違う。(アシュケナジと呼ばれる今のイスラエル人の多くは、古代のダビデの子孫でなく、スラブ系民族の東欧の農奴の末裔だ) 日本は無理して核武装する必要などなく、島国で、世界のことに無知で、のほほんとしていてかまわない国のはずだ。
覇権の起源(2)ユダヤ・ネットワーク http://tanakanews.com/080829hegemon.htm
イスラエルと並んで米国の覇権戦略を牛耳ってきた英国は、早々と核兵器を放棄したがっている。英国も従来、日本と同様に、米国との同盟関係を何よりも大事にしてきた。米国の覇権が崩れている今、英国は自衛力を高めるため、手持ちの核兵器を大事にしたり、新たな核兵器を開発したりすべきかもしれない。しかし現実の英国は、自国から分離独立しようとするスコットランドに核兵器を押しつけるかたちで核兵器を手放そうとしている(英国の核兵器はスコットランドの基地にある)。 (`Nukes may delay Scottish independence') (Trident risk by Scot independence warned)
この英国の行動は何を意味するか。英国ほど、国際政治を熟知し、世界の先行きに敏感な国はない。今の国際政治の体制を200年前に作ったのは英国だ。その英国が、これからは核兵器を持たない方が有利だと考え、安上がりな方法で核兵器を手放したがっている。今後の世界は、核兵器の抑止力が大幅に低下するということだ。どのようなシナリオで、核兵器の抑止力が無効になるのか、私はまだ納得できる分析や情報を得ていない。だが、この15年あまり 国際情勢の精読を試みてきた私には、世界の先行きが英国が予見するとおりになるという確信がある。
英国は中国にすり寄り、ロンドンを世界最大の人民元のオフショア市場に仕立てようとしている。最近英国のキャメロン首相とフランスのオラ ンド大統領が相次いで中国訪問し、中国政府は左派のオランドを大歓迎した半面、右派のキャメロンを冷遇した。キャメロンは、それでもめげずに中国にすり寄っている。英国は、多極化が進んで中国が経済成長し続けると予測している。 (Chinese roll out red carpet for Hollande)
英国が予見するとおり、今後の世界で核兵器の抑止力が低下するとしたら、それは、多極型に転換した後の世界が、今より外交重視、戦争回避の傾向になることを意味する。中国やロシア、イランなど、多極型世界で台頭しそうな国々は、好戦的で独裁的な国というイメージだが、実のところ中露イランよりも、覇権末期のこの10年あまりの米国の方がずっと好戦的だ。多極型世界が今より外交重視になるなら、多極型に転換した国連が主導する、核廃絶を拒む国に対する経済制裁が効果を持ち、核の抑止力より外交の抑止力が強くなるだろう。このシナリオだと、英国のめざす核廃絶が納得できる。また、以前から書いている「オバマの核廃絶」の構想とも合致する。 (オバマの核軍縮)
英国による先読みが正しいとしたら、日本の核武装は全くの愚策だ。日本人がいくら否定しようが「やっぱり日本は戦前と同じ好戦的な国で、靖国神社や南京虐殺や慰安婦の問題もすべて日本が悪い」という見方が世界的な「真実」になってしまう。日本は簡単に「極悪非道」に突き落とされる。今後の世界で軍事より外交が主導になるなら、外交官の能力が問われる時代になる。日本外務省にとっても本領発揮のチャンスだ。しかし現実のところ日本外務省は、核兵器開発の計画書を作ったりして、英国外務省と対照的に世界の先読みができず、自ら外交能力が低いことを露呈している。
北朝鮮の核武装は、いずれ核廃棄する見返りに米韓中からいろいろな恩恵をせびりとるための政治の道具に使われそうだ。日本政府の特使として飯島参与が訪朝したことから考えて、近いうちに6カ国協議が再開されるのでないか。北は、核廃絶するときに恩恵を被る。しかし、対照的に日本の核武装は、日本に、経済制裁による貧困、日本の国際的な評判と地位の劇的な低下、日本人が世界から尊敬されてきた状況の喪失、最終的に極悪非道のレッテルを貼られつつ核廃棄させられた上、中国人や朝鮮人から恒久的に中傷罵倒されて黙っていなければならない屈辱感など、自滅的に悪いことばかりを引き起こす。
今の日本人は、マスコミや官僚が作り出す雰囲気に簡単に流され、自国の自滅につながる策に賛成している。まったく情けない。私を「そんなに中国や北朝鮮を勝たせたいのか売国奴」と罵倒する前に、よく考えた方が良い(考える際の基礎になる情報が日本語マスコミの中に皆無なので絶望的だが)。 ≫ (田中宇の国際ニュース解説)
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