http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/305.html
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あいば達也さんのことは良質な書き手だと思っているが、次に示す論考を読む限り、経済問題について誤解があるようなので簡単に触れてみたい。
「財政赤字で長期金利が低位安定のカラクリ 0.5〜1.0〜0.67%に落ち着くまで (世相を斬る あいば達也)」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/295.html
● 長期金利の動向
あいば氏は、「「国債暴落のトラウマ」と云う見出しで、黒田日銀は当初、異次元金融緩和で、長期金利を低め誘導しようとする明確な目標を持っていた。ところが、いざ金融緩和が始まると、長期金利は0.5%から1.0%に、アレヨアレヨと言う間に跳ね上がった。日銀内部は大混乱の極みだったそうである。黒田総裁は平気な顔を装ったが、まさに青天の霹靂だったに違いない。1.0%の長期金利では、国債の利払いでアウトだ」と書いている。
元ネタの朝日新聞の記事は経済板に投稿されているが( http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/660.html )、日銀の大混乱といった話は、与太話のレベルを越えるものではない。
あいば氏の文中にも、「本日、日銀は2兆円以上の金融機関の長期国債やCPを買い入れるため、金融機関が日銀に預け入れている当座預金が100兆円に達する」とあることでわかるように、銀行は、手持ちの国債を売っても、国債以外に潤沢な資金(預金)を安心して運用できる先がないのである。
日銀当座預金の準備金を超えた部分には0.1%の付利がある。0.1%の利回りといえば2年物国債の利回りに相当するから、より年限が長い国債であれば、ほんとうは日銀に売らずに保有を続けたほうが有利なのである。
一方、日銀は、異次元の「量的緩和」政策と称して、毎月7.5兆円(年間で80兆円超)規模の国債購入を続けている。
銀行が、もっと有利な資金運用先があるながら資金が国債に“固定化”されているため身動きできないという状況にあれば(無理に売って換金すれば暴落する危険)、「量的緩和」政策は有効であろう。(但し、融資であれば、「信用創造」(=預金創造)で済むからその必要さえない)
国債以外にボリュームをこなせる資金運用先がない現実を考えれば、ことさら売る必要を感じていない相手(銀行)から、国策であることを盾に売って貰っているのが「金融緩和」政策と言える。
あいば氏は、「1.0%の長期金利では、国債の利払いでアウト」と書いているが、長期金利(10年物国債利回り)が1.0%を下回ったのは11年11月以降のことであり、それまでは1.0%以上より正確には1.5%平均ほどで推移していたのだから、1.0%の利率で「国債の利払いでアウト」ということはない。
それは、900兆円と言われる国債残高の利率の加重平均が、今年3月時点で1.19%であることを考えればわかる。
残高が増えることで利払いの絶対額も増えるという問題はあるが、1.0%で新規国債を発行しても、まだ国債残高の利率の加重平均を下げる働きをする状況である。
5月の長期金利上昇については、昨日の投稿でも引用したが、解説したものがあるのでご参照いただきたい。
※ 参照投稿
「7ミリ秒の疑惑 FOMC声明文が事前漏洩か:漏洩がなくとも「量的金融緩和の縮小延期」は“読み筋”の決定」
http://www.asyura2.com/13/hasan82/msg/643.html
● 国債増発=赤字財支出の増大要因
経済問題に言及する人の多くが陥っている根本的な無理解は、赤字国債の増大が、税収不足を補うためだけでなく、銀行の資金運用難に対応するために意図的に行われてきたという事実である。
財務省などは口をつぐんでいるが、銀行経営の“健全性”を維持するために赤字国債の発行が膨らんできたとも言えるのである。
ほんとうに厳しい危機的な財政状況であれば、財政で経済を縮小させることなく、国民生活はなんとしても支えるという理性的な考えのもと、歳出増加は社会保障関連経費の自然増とされる1兆円にとどめられるはずだが、来年度予算の概算要求は6兆円の増額になっている。(厚労省のみ1兆円の予算増額を認め、他の省庁は、従来の予算枠のなかでやりくりをするようにと命じれば済む)
詳しい説明は後日行いたいと思っているが、97年の消費税増税の影響が実体経済に大きな影響を及ぼした98年を境に、日本の資金循環構造に大きな変化が起きた。それは、それまで最大の資金需要部門であった企業が、資金供給部門に変わったというものである。
この変化のため、銀行は、家計部門のみならず企業部門からの預金が増大する一方で融資先の多くを失ってしまった。苦境の中小企業は資金難にあえいでいた(いる)が、そのような相手への融資はリスクが大きく、公的保証がなければ融資に踏み切れない。
企業部門の現金・預金残高は、3月末時点で、過去最高の225兆円にまで膨らんだ。
そのような資金循環環境のなか、銀行の預貸率は、この6月、四半期ベースで過去最低の70.4%に落ち込んだ。中小企業が中心の信用金庫は、無惨にも50%を割り込んだ。
デフレ基調経済のなか、銀行が銀行としての機能を果たせなくなっているのが日本なのでる。
預金は年率4%のペースで増加する一方、貸し出しは年率3%しか増加していない。このような預金と預貸率の推移を一緒にグラフにすれば、右を向いた鰐が大きく口を開けた姿になる。
銀行という鰐の命を保つため、この大きく開いた口に投げ込まれるエサが、膨大な額の国債なのである。
このような状況でほんとうに“財政健全化”(赤字国債の縮小)を行えばどうなるかと言えば、“銀行危機”の発生である。
極低金利とはいえ、預金には利払いが発生し、数多くの従業員を抱え、IT設備にも資金がかかる。仮に、預金の30%が運用先をなくなれば、多くの銀行が赤字に陥ることになる。
“銀行危機”の発生を封じ込め、銀行の健全性を維持するために、赤字国債の発行が膨らんでいるとも言える。
そして、笑い話になりかねないが、赤字国債の増発で歳出を増やすことでも銀行の預金が増加するから、さらなる赤字国債の増発が必要になる。
現状のように税収と国債発行額が同等というのはけっして好ましい状況ではない。
毎年の歳出(国債費を除く)と税収はトントンに近いほうが望ましいと考えているが、だからといって、現状が、財政危機というわけでも、経済に悪影響を与えるというものでもない。
(逆に、赤字財政を縮小すれば、実体経済・銀行経営ともにより悪くなってしまう)
円安状況にある今、日本に必要なのは輸出企業競争力アップの消費税増税ではなく、国債発行を抑制しても、資金循環(銀行経営)がスムーズにいくような経済成長の実現である。
ざっくり言えば、このところ語られている経済対策をすべて実行する一方で、消費税増税を延期することがその第一歩となるはずだ。
※ 参照投稿
「来年度に「消費税増税+法人税税率引き下げ」政策が実施されることはない:だから、消費税増税は延期」
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/271.html
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