http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/271.html
Tweet |
何度か書いてきたことだが、安倍首相(財務省官僚も同じ判断)は、十中八九(ある経済指標が大きく変動しない限り)、来年4月の消費税増税延期を表明すると考えている。
安倍首相や財務省が延期を決めた理由を早くきちんと説明しろという声もあるが、この投稿で最大の理由にはとりあえず触れ、まとまった投稿は9月中に経済板で行うつもりである。
ここ政治板では、政治的な感覚で消費税増税延期問題を扱っていきたい。
主要メディアの消費税増税関連の報道を見聞きしていると、今さらながら、我が国の将来が暗いものに見えてしまう。
主要メディアは、安倍首相が10月1日に消費税増税実施を表明するという前提で安倍政権が進めている経済対策を報じているはずだが、そうであるなら、復興増税分を剥ぎ落とすかたちでの法人税税率引き下げ政策に対して強い批判を展開しなければならないはずである。しかし、法人税税率引き下げに疑義を呈する報道は散見するが、キャンペーンといえるほど持続的で強い批判の言論活動は見当たらない。
消費税増税は、財政健全化を通じて社会保障制度の持続と充実を達成することを目的とした政策である。
生活がそれほど楽でない人たちまでも消費税増税をしぶしぶ容認しているのは、社会保障制度がズタズタになることや子どもや孫が1千兆円を超える政府債務のツケに苛まれることを憂えているからである。
財政が“緊急事態”であることを理由に多くの国民に負担(我慢)を強いる政策を断行しようとしていながら、最終利益を課税ベースとする法人税の実効税率を引き下げようという政府の動きを批判せずに、いつどんなテーマで政府を批判するのか問いたい。
とりわけ、法人税税率引き下げがテーマになる以前から、消費税増税をめぐる経済対策の要が法人税減税であることを考えれば、法人税税率引き下げ政策への批判は当然と言えるものである。
実効税率の引き下げをことさらしなくとも、「設備投資減税+研究開発費減税+雇用拡大・賃上げ減税+固定資産税減税」がほぼ決まっており、米倉経団連会長も言っている実効税率の引き下げで得られる内部留保の活用であるのなら、利益を上げた法人の納税額は大きく圧縮されるのである。税率の引き下げを含めると、法人税絡みの減税規模は1.4兆円とされている。
復興増税分を剥ぎ取ることで復興財源の不足が問題視されると、赤字国債の増発に頼らなくとも財源は確保できると答えているが、消費税増税の主旨に照らせば、1千兆円も積み上がった政府債務を少しでも減らすことが重要なはずだから、“余裕”の財源は、法人税税率引き下げの穴埋めではなく債務縮減に回すべきと叱責されて当然であろう。
メディア批判をしても詮ないことなので、来年度に「消費税増税+法人税税率引き下げ」政策が実施されることはないという結論について説明したい。
民主党政権(財務省官僚)は、姑息なことに、法人税問題が「税と社会保障の一体改革」で扱われることがないよう、先行して法人税の減税を実現した。
そのような処理は、グローバル企業優遇策としてセットである「消費税増税と法人税減税」をできるだけ切り離して処理したいという思惑によるものであろう。
消費税増税でグローバル企業の利益(不労所得)は増加するが、法人税が従来通りであれば、増加した利益の一定部分は税として取り上げられてしまう。法人税税率引き下げが実現することで、増加して利益を手元に残すことができる。手元に残った利益をどう使うかで、そのような税制政策の功罪が決する。
普通の感覚でも、財政危機で社会保障制度の持続性も揺らいでいるから消費税を増税したいと言う一方で、投資などへの優遇はともかく法人税の税率まで引き下げるでは、いかにおとなしい日本国民でも黙っていないと思うはずだ。
※ 「消費税増税と法人税減税」のセットがグローバル企業優遇策であることの参照投稿
「E:消費税増税の目的は、「社会保障」や「財政再建」ではなく、「国際競争力の回復」である:付加価値税と“国際関係”」
http://www.asyura2.com/12/senkyo129/msg/400.html
このような意味で、9月中旬から「消費税増税+法人税税率引き下げ」政策が目立って報じられている事態は異様なことなのである。
政治的に言えば、このような動きは、後から出てきたもので、前からのものを打ち消すための事前広報活動である。
後から出てきたものは「法人税実効税率の引き下げ」であり、前からのものは「消費税増税」である。すなわち、「消費税増税」を延期する環境づくりのために「法人税税率引き下げ」を持ち出したのである。
安倍首相(財務省官僚)は、4月初旬頃には来年4月の消費税増税を延期する腹を固めと見ている。
というのは、4月17日に国会で開催された党首討論会で民主党の海江田代表とのやり取りのなかで、安倍首相が、「消費税を増税したからといって必ずしも税全体が増収になるとは限らない」と発言したからである。
その後も、参議院選挙前の党首討論などことあるごとに「消費税を増税したからといって必ずしも税全体が増収になるとは限らない」という趣旨の発言を繰り返している。
先週17日に収録されたというテレビ朝日のインタビューでも、安倍首相は、消費税を上げる目的は税収を増やすことであり、税収を増やすためには経済成長が実現されなければならないと説明している。
※ 参照投稿
「消費増税について安倍総理の肉声 安倍総理インタビュー 報道ステーション SUNDAY」(赤かぶさん)
http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/185.html
昨年秋には欧州中央銀行の無制限国債買い取り表明で円高傾向に終止符が打たれ、その後、アベノミクスも手伝って円安傾向が定着した。
現状の日本経済を考えれば、消費税を増税し、法人税税率の引き下げまで行うことは、経団連に加盟しているようなグローバル企業に限ったことだが、「良い土地を分け与え、家を建ててやり、さらに家具調度品まで面倒見る」政策になってしまう。
“良い土地”とは円安状況であり、“家を建ててやり”とは消費税増税であり、“家具調度品まで面倒見る”とは法人税税率引き下げである。
消費税増税を企図した財務省官僚たちは、円高で“良い土地”がないということを前提に、それでもグローバル企業がなんとか活動しやすい条件をつくり出そうと消費税増税を考え、投資や賃上げにかかわる法人税減税まで付加する政策を組み上げたのである。
消費税増税を延期する最大の理由は、円高という前提条件が変わったことである。
円安という好条件を手に入れたのだから、輸出(グローバル)企業は、消費税増税に頼らずとも国際競争力を高められたはずという判断である。だからといって、投資減税などの政策はやめない。円安で得られる利益と各種減税政策を活用して、積極的な事業展開を図って欲しいという思いの政策である。
急浮上した法人税税率の引き下げは、消費税増税を延期する代替政策である。
前述したように、消費税増税で増加する利益をできるだけ手元に残すためには、法人税の税率引き下げが不可欠である。
グローバル企業が大いに期待してきた消費税増税を延期するお詫びという意味もあるが、消費税を増税せずとも円安で増加した利益をできるだけ手元に残せるようにという配慮が法人税の税率引き下げである。
むろん、安倍首相も財務省も、手元に残された利益が、設備投資・賃上げ・研究開発に使われることを切に願っている。
グローバル企業の経営者が政府のそのような思いにどれだけ応えかが日本経済の今後を左右することになる。
最後に、法人税税率引き下げに渋い顔を見せている自民党税調幹部も主要メディア幹部も、消費税増税が延期されることをすでに知りつつ、いろいろ演じていると思っている。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。