http://www.asyura2.com/13/senkyo154/msg/208.html
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9月10日という少し古い新聞記事の転載で恐縮だが、サンクトペテルブルグで開催されたG20サミットにおける安倍首相と習国家主席の“立ち話”についての裏話が書かれているので紹介したい。
サンクトペテルブルグG20での安倍首相と習国家主席の“立ち話”は、抜き差しならない状況を見せてきた日中関係を改善させる大きな一歩だと考えている。
転載する日経新聞の記事に拠れば、G20での“立ち話”は、日本側の働きかけでようやく実現したもののようである。
「日本側の打診にどう応じるかをめぐって、習主席の周辺では論争があったという。結果からみると、日本の働きかけに中国はいくらか前向きの反応を返した形だ」と書かれていることから、中国側も、大手を振って日本との関係改善をアピールすることはできないが、現在の膠着状態を少しずつでも解きほぐしていきたいという思いはあるとみることができる。
記事は、「野田・胡会談と違って表情がわかるような映像がないのに、あの時の胡主席のようにこわばった表情を習主席も浮かべていたのではないか、と想像してしまう」とも書いているが、先般投稿したように、香港ATVニュースは、安倍首相と習国家主席が握手を交わし、笑顔で4、5分間話したと報じている。
※ 参照投稿
「中国外務省の対応 臆測呼ぶ:中国人は東京五輪の成功を望む」
http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/593.html
現在において日中関係の改善を明確に示す指標は、尖閣諸島海域とりわけ領海からの中国公船の“撤退”である。
日本政府やメディアの理解しがたい態度は、中国側の誤った対応が最大の問題であるとしても、領海さえ含む尖閣諸島周辺の日本支配海域がおよそ1年にわたって日中の「二重権力状況」にあるにもかかわらず、「日中間に領土をめぐる係争はない」という従来的主張をそのまま続けていることである。
中国側(台湾・香港を含む)の民間人が日本領である尖閣諸島(領海)に不法侵入したり、中国側(台湾を含む)が領有権を主張したりするレベルの領有権係争状況であれば、そのような主張も有効だろう。
しかし、政府間レベルにおいて、すでに言葉による主張の応酬を超えた生々しい権力的激突状況に陥っている。
中国公船が尖閣諸島領海を遊弋するという中国側の支配権誇示行動が常態化している現状に照らせば、「日中間に領土をめぐる係争はない」という日本側の主張は、正誤云々ではなく虚しいものになってしまっており、言葉の弄びであり自己満足のためのものでしかない。
この期に及んでの「日中間に領土をめぐる係争はない」といった主張は、ノーテンキ=悠長なものでしかないのである。
むろん、「二重権力状況」という日本の領有権が侵害されている現状を打破する方法として、日本政府が権力を行使して、不法侵入している中国公船を排除することも考えられるが、それは、戦争には至らずとも、武力を含む強制力の衝突を招き、日中関係はそれこそ泥沼の対立状態に向かうことになる。
日米安全保障条約を盾に日本側が期待する米国政権も、“領有権問題については中立”を表明しており、強制力を先制的に行使するのが中国側ではなく日本側であるかぎり、日本を軍事的に支援することはない。
対中国強硬論を唱える人たちのなかには、経済的関係で困るのは日本ではなく中国という主張も散見されるが、「利益のためには自分たちを縛り首にするためのロープさえ売る」資本の論理を考えれば、日本の有力企業が世界で群を抜く成長性と経済規模を有する中国市場を諦めるようなことはしない
仮にだが、日本政府が対中禁輸を断行すれば、日本の有力企業は、生産拠点や開発拠点をさらに国外に移すことになる。
日中関係を改善することも主要な任務として成立した安倍政権は、日中関係の改善に向け、水面下で様々な接触を続けてきた。
そのあおりで、川口順子参議院議員が環境委員長の職を解任されるといった政局も発生したが、安倍政権は、「日中間に領土をめぐる係争はないが、外交問題として扱い、中国が領有権を主張することは妨げない」というレベルでの妥結をめざしてきた。
しかし、中国側の主張は、「尖閣諸島の領有権をめぐって係争があることを日中双方が認めたうえで、問題を“棚上げ”する」というものであり、その“落差”を埋めることができないでいる。
尖閣諸島をめぐる日中間の争いで重要なポイントは、中国がすぐさま尖閣諸島を譲渡しろとは言っていないことである。
この間の中国側の言動を見てそんなことは信じられないと思う人も多いだろうが、中国側は尖閣諸島の実効支配をめざしているわけではなく、係争地として相互が認め合い現状(日本の実効支配)のまま“係争を棚上げ”すべきという主張である。
尖閣諸島をめぐる日中間の主張の対立は、原則論と戦術論のいずれに重きを置くかの違いだとも言える。
日本側の主張に従えば、戦争など日中間に決定的な変化が起きない限り、将来にわたって日本が有する尖閣諸島の領有権についての曖昧性を排除できる。
その一方、中国側の主張を日本が妨げたいと思っても、中国側の言動を阻止することは不可能だから、領有権のめぐる外交的やり取りは行わないとしても、外交的対立にとどまらず尖閣諸島周辺での「二重権力状況」はいつまでも継続することになる。
中国側の主張に従えば、尖閣諸島に対する日本の領有権は“曖昧な状態”が続くことになるが、120年ほど続いてきた尖閣諸島の実効支配はこれからもとりあえず安泰である。
愛国保守派を自称する安倍首相としてはなかなか踏み切れないだろうが、尖閣諸島周辺の侵略状況(「二重権力状況」)を解消するためにも、日本経済の再生軌道を確実にするためにも、尖閣諸島領有権をめぐる日中間の係争を認めたうえで、日中が現状(日本の実効支配)を認め合う外交的決着を達成すべきだと考えている。
領土をめぐる係争は日中間に存在しないという虚しい抽象論を繰り返すのではなく、領土紛争が存在するという前提に立ち、日中関係を正常に戻す外交努力に奮闘することこそが現実的対応である。
※ 参考投稿
「尖閣諸島領有権問題:X氏の批判に応える3:敗戦処理〜「カイロ宣言」からSF講和条約へ、そして沖縄返還協定〜」
http://www.asyura2.com/09/reki02/msg/762.html
「尖閣諸島領有権問題:X氏の批判に応える2:関係改善が見えてきた日中関係:日中両国民の多数が納得できる解決策を」
http://www.asyura2.com/13/senkyo151/msg/749.html
「尖閣諸島領有権問題:X氏の批判に応える1:尖閣諸島に対する日本領有を正当化できる根拠」
http://www.asyura2.com/13/senkyo151/msg/729.html
「新しい酒を盛る人たち:元次官谷内氏が秘かに訪中こじれた関係の修復に:中国共産党は日本との対立を本来望んでいない」
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/171.html
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今年も日中首脳が「立ち話」 関係打開はばむ抗争の壁
論説委員 飯野克彦
バルト海に面したロシア第2の都市サンクトペテルブルク。ここで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議の場で5日、安倍晋三首相は中国の習近平国家主席と握手し、あいさつを交わした。
習主席が中国の最高指導者になったのは昨年11月。安倍首相の就任は同12月だった。ようやく、というべきだろう。両首脳の初顔合わせが実現した。それまでは電話で話したこともなかったので「初接触」と呼ぶ方が適切かもしれない。
尖閣諸島をめぐる対立があるので、正式な首脳会談は開かない。そんな了解が両国政府間では事前にできていたようだ。そのうえで日本側は「立ち話」の実現を目指した。
日本側の打診にどう応じるかをめぐって、習主席の周辺では論争があったという。結果からみると、日本の働きかけに中国はいくらか前向きの反応を返した形だ。「意味は大きい」(菅義偉官房長官)と評価することもできよう。ただ、前途は決して楽観できない。
初顔合わせのやりとりや雰囲気はほとんど明らかになっていない。それでも、習主席が中国の原則的な立場を表明するにとどまったことは、日中双方の報道から十分に読み取れる。そして、習主席の挙措はとても堅苦しいものだった、と聞く。
ほぼ1年前の情景が、思い浮かぶ。
同じロシアの領内ながら、サンクトペテルブルクから1万キロ東方にあるウラジオストク。太平洋に面したこの街でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたのは、昨年の9月。そしてやはり、正式な会談を開けない日中の両首脳は「立ち話」をした。
もちろん、主役2人の顔触れは違っていた。日本からは野田佳彦首相(当時)。そして中国からは胡錦濤国家主席(同)。当然、セリフも違っていた。
にもかかわらず、安倍・習会談と野田・胡会談は、同じ台本を演じた印象がある。野田・胡会談と違って表情がわかるような映像がないのに、あの時の胡主席のようにこわばった表情を習主席も浮かべていたのではないか、と想像してしまう。
中国の指導者にとって、対日政策は扱いが難しい問題だ。共産党政権のなかで複雑な波紋を引き起こしがちだからだ。足元で権力闘争が激しくなりつつあるだけに、習主席としても対日政策では慎重にならざるを得ないのが実情だろう。
汚職などの罪に問われた重慶市の元トップ、薄熙来被告の初公判が結審した8月26日。共産党内の規律問題を担当する中央規律検査委員会(中規委)は、中国石油天然気集団(CNPC)の王永春・副社長を「厳重な規律違反の疑い」で調査していることを明らかにした。
翌日にはCNPCの別の3人の幹部を、9月1日にはCNPC前会長で閣僚級の蒋潔敏・国有資産監督管理委員会(国資委)主任を、それぞれ調査していることを公表した。腐敗撲滅運動を進める習政権の最大の標的は石油閥だ、とする見方が一気に広がった。
石油閥とは、CNPCをはじめとする国有石油メジャーの資金力をバックに強大な政治力を誇ってきたグループ。そして目下の焦点は、昨年秋に引退するまで石油閥の頂点に立っていた周永康・前共産党政治局常務委員まで調査が及ぶか、だ。
過去、腐敗撲滅運動は幾度もあったが、最高指導部を構成する政治局常務委員の経験者を追及した例はない。「虎(大物)もハエ(小物)も容赦しない」。そんな大見えを切った習主席といえど、長年の不文律を打破できるかどうか。
いずれにしろ当面、新たな政治問題を生み出しかねない対日政策の調整に乗り出す余裕は無い、とみるべきだろう。
では、習主席が権力基盤の強化に成功したとして、対日政策はどうなるか――。胡前主席は日本との関係強化に前向きだったが、石油閥はその足を引っ張り続けたとされる。とすれば、習主席が石油閥の力をそぐことに成功すれば対日関係の打開に動きやすくなる、との見方ができないわけではない。
それでも楽観は禁物だろう。習主席が前任者のように対日関係を重視しているかどうか疑問がある。何よりも1年前、胡氏のメンツを野田氏がつぶした経緯がある。前任者の轍(てつ)は踏みたくないと、習主席は思っているはずだ。
[日経新聞9月10日朝刊P.10]
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専門家:日本の外務省高官は退任するや親中発言
中国社会科学院日本研究所の高洪副所長は22日、人民網の取材に、日本の多くの外務省高官が退任するや否や別人のようになって、釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題で中日間に暗黙の了解と共通認識があったとの発言を始めていることを明らかにした。
高氏は「日本の学術界には釣魚島の帰属問題について一貫して理性的な声がある。人々のよく知る井上清、村田忠禧は多くの理性的研究を行い、矢吹晋など中日関係研究の権威ある識者は釣魚島は歴史的に中国が最初に発見し、利用したという客観的事実を間接的に論証してすらいる」と指摘。
「釣魚島問題で日本政府は再三混乱しているが、日本外務省を退任した多くの高官が退任するや否や、釣魚島問題で中日間に暗黙の了解や共通認識があったとの発言を始めていることは示唆に富む。事実は雄弁に勝り、外交記録の一方的な抹消や書き換えによって、中日両国の外交の歴史において釣魚島問題についてかつて存在した暗黙の了解と共通認識を変えることはできないということが分かる」と指摘した。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年9月23日
http://j.people.com.cn/94474/8407505.html
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