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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130916-00000005-sasahi-pol
AERA 2013年9月23日号
日頃は歴史認識問題などで手厳しい海外メディアも、あの演説は絶賛するしかなかった。2020年の五輪開催地は当初、東京の劣勢が伝えられていた。だが、ブエノスアイレスでの安倍晋三首相の招致演説を、英BBCは「安倍首相が立役者だった」と高く評価。ロイター通信は「カリスマ的嘆願」と世界に伝えた。
自信たっぷりの笑顔と大きな手ぶり。そして、絶妙な緩急。最後に両手を前に差し出した。「We are ready to work withyou(みなさんと働く準備が、私たちにはできています)」
心配の種だった東京電力福島第一原発の汚染水問題も、不安の払拭(ふっしょく)に手を打っていた。まず演説で、状況がコントロールされていることを説明。その後の質疑では、「汚染水の影響は原発の港湾内の0.3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」「健康問題は全く問題ない」と念を押した。
実際には汚染水の流出は止まってはいない。東電自身が、首相の言葉に「完全に遮断ができているわけではない」と戸惑っている。しかし、大見えを切らなければ、国際オリンピック委員会(IOC)委員の理解は得られなかっただろう。首相周辺は胸を張る。
「国内メディアは東京落選を見込んで『首相が原発事故の不安を払拭できなかった』とこき下ろす準備をしていたが、首相はスピーチで見事に跳ね返した。逆バネですよ。昨年、下馬評を覆して勝った総裁選と同じだ」
そんな安倍スピーチを、陰で支える人物がいる。外交ブレーンの谷口智彦氏(56)だ。
第1次安倍内閣では、国際広報を担当する外務副報道官を務め、今年2月、安倍氏に請われて内閣審議官に就任した。もとは経済誌「日経ビジネス」の記者だ。英語に堪能で、ロンドン特派員時代には「言葉を磨く」ためにと、BBCの番組に定期出演していた。
「日本人として言うべきことはきちんと言わなければならないし、そのためには自分で発信することを躊躇(ちゅうちょ)していては何も始まらない」が持論。首相スピーチには、そんな谷口氏の持論がにじむ。5月の東京での講演で、
「(アジアで)おごらず、威張らず、しかし卑屈にも、偏狭にもならないで、経験を与えるにして寛容、学ぶにして謙虚な一員となるよう、日本人と、日本をもう一度元気にする」
と語った。自由や民主主義を共有する国と連携する「価値観外交」を掲げたものだ。こうした「理念発信型」の演説を書いたのが、谷口氏と言われる。
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