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寿ぐべき東京五輪、喜ぶべき再興の兆し。
日本時間8日未明、2020年オリンピック東京開催が決まり、翌9日には4−6月のGDP改定値について、年率換算で実質3.8%増(名目3.7%増)と高い値が発表された。( http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0302Y_T00C13A9GO2000/ )
五輪決定と高いGDP増は、真に国民として寿ぐべき喜ばしい事であると共に、国のリーダーとして安倍首相の運の強さを感じずにはいられない。
◆一過性GDP増と五輪効果◆
これを受けて、安倍首相は来年4月に消費税を増税した場合の景気マイナス効果に対する経済対策の策定を指示し、主要マスコミは首相が増税を決断したと報じた。
直後に菅官房長官が、首相が増税を決断した事実はないと否定したものの、大和総研の熊谷亮丸氏等の証券会社系エコノミスト達は消費税増税が決定的になったと喧伝し、政府与党幹部の中には「消費税を上げない理由が無くなった」と越権発言をする者も現れ、10月に行われる安倍首相の最終判断を前に消費増税が早くも既定事実化されつつある。
しかし、GDPの瞬間風速と東京五輪決定をもって消費増税に進むのは下策である。
東京都などの試算では、13〜20年の7年間で国内経済にもたらす直接の経済波及効果は約3兆円。約15万人の雇用を創出すると予測する。
( http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0302Y_T00C13A9GO2000/ )
これを、年率GDP伸び率にすると0.09%の押上げ効果に過ぎない。
しかも、5千億円程度の施設総工費(政府・東京都支出)を含めた数字である。
なお、大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは経済波及効果を東京都等の資産の50倍の総額150兆円規模になるとするが、もしそれが本当に実現するなら年率実質GDP4%成長となり、そもそも消費税増税は不要となるだろう。
また、4−6月のGDP改定値は、やるべき事をやらなかった民主党政権下で溜まりに溜まったものが、黒田日銀による異次元の金融緩和とそれにより派生した円安効果で一気に戻ったもので半年以上は持たない一過性のものである。
◆第3の矢は何処へ行った?◆
やはり、本格的な持続的成長の為には、将にアベノミクス第3の矢、成長戦略の具体化と実施を待たなければならない。
東京五輪を「アベノミクス第4の矢」と位置付ける向きがある。
しかし、第3の矢は何処に行ったのか?
成長戦略の現状はどうなっているのか?
政府の経済財政諮問会議や産業競争力会議では、竹中平蔵氏らの規制緩和派と藤井聡氏らの公共工事を含んだターゲットポリシー派が対立して、何一つ具体的なものが決まっていない。
規制緩和の内容と方法の中に良いものと悪いものがあり、ターゲットポリシーの内容と方法の中にも良いものと悪いものがある。
それらを腑分けして、具体化しスケジュール化し、パッケージに組み上げる。
戦略とは、勝つための、差別化され体系化された、実行への決然とした意志を伴う、包括的シナリオ・概略作戦書である。
安倍政権が今一番やらねばならないものは、消費増税で無くそれではないのか?
そもそも、アベノミクスで掲げられた目標が、安倍政権途中からGDP実質1%、名目3%成長とトーンダウンした事は志が低いと言わざるを得ない。
実質2〜3%を目指すべきだし、成長戦略の中身次第でそれは可能だ。
前述の熊谷亮丸氏等は、民主党野田政権が「国際公約」した消費増税を回避すれば国債暴落すると言う。
しかし、成長戦略を練り上げ堂々国民と世界に問い、英断をもって実行するのが本来であり、熊谷氏等の主張は増税ありきを前提としており立論が倒錯している。
◆社会保障改革でなく「社会改革」を◆
また、民主党の野田政権下での3党同意で消費税増税は「社会保障改革」財源の為に行うとしていたが、その「社会保障改革」の議論が一行に進まず識者やマスコミの批判を受けている。
しかし、「社会保障改革」と立派な名前が付いているが、その中身は保険料負担を引き上げ、給付を引き下げ、それでも足りない部分を消費税で穴埋めする事が想定されているという単純な話である。
それを具体化してしまうと、身も蓋も無くなり国民の反発により消費税増税の障害になるため、財務省、厚労省、与野党が結託して議論が進まないのが実態である。
そもそも、「社会保障改革」という発想が間違っている。
先ず、「社会改革」が必要である。
即ち、雇用機会が増え、良い人材流動化により新規産業に適材が移り、年寄りや女性も働けて、生活保護受給者が減り、年金受給年齢も自然に引き上げ可能になる。
このためには、給付付き税額控除、同一労働同一賃金、恒久的雇用減税等の労働、社会政策が不可欠である。
目指すべきは、こうした鼓腹撃壌の世の実現でなければならない。
アベノミクスの成長戦略では、こうした部分が弱い。
東京五輪は、成長戦略の一環として第3の矢の中に組込みトータルで施策する一方、こうした社会改革の部分を切り出してアベノミクス第4の矢として位置づけるのが適当だろう。
安倍首相は、周囲に押され消費税増税に進むのか。
成長戦略に本気で取り組み、消費税増税はその成功の後に回すのか。
首相に経世済民の覚悟を問いたい。
●ご意見を参考に、下記にて随時推敲更新予定
http://blog.livedoor.jp/ksato123/
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