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http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20130915-00028136/
2013年9月15日 18時46分 児玉 克哉 | 三重大学副学長・教授
地域政党の可能性がマスコミをにぎわしたのは数年前。大阪で大阪都構想を掲げた橋下徹氏が大阪府知事、大阪市長として「大阪維新の会」を結成しました。その後、「日本維新の会」もたちあげ、日本の改革の目玉となるのではないかという期待感が生まれました。
名古屋では、河村たかし氏が名古屋市長として、減税や議員報酬削減などを掲げて、「減税日本」を立ち上げました。河村市長は全国でも例を見ない議会リコールをリードし、実際に議会を解散させ、選挙にまで持ち込みました。その選挙では「減税日本ナゴヤ」の議員を多く当選させ、大きな変化をもたらすかにみえました。愛知県知事の大村秀章氏も河村氏と連携する形で「日本一愛知の会」「中京維新の会」を結成しました。嘉田由紀子滋賀県知事は、支援母体である「対話でつなごう滋賀の会」を持ち、地域活動を行いました。また小沢一郎氏と組み、日本未来の党を結成し、国政選挙にも挑戦しました。
いくつかの地域での新たな政党づくりの試みがあり、何らかの地殻変動が起きるのではないかと予想した人も少なくありませんでした。この地域政党への期待はかなりしぼみつつあるというのが現状です。1年前と比較すると見る影もないというくらい熱気は冷めています。
橋下氏の維新の会は、今も関西地域ではある一定の活力は保っていますが、橋下氏の慰安婦に関する発言などの影響もあり、一気に減速。前回の衆議院選ではある程度の議席は確保したものの東京都議選、参議院選では惨敗に近い結果となり、影響力の低下が指摘されています。以前の活気はありません。
河村氏の場合には、議会リコール選挙でかなりの議員を獲得したものの、減税日本ナゴヤの議員の不祥事が相次ぎ、離党組も増え、議員数が大きく減るとともに、常に守りに回ることになり、政策における影響力はほぼ失うことになりました。大村知事も全国的な影響力を持つような形にはならず、日本一愛知の会などが地域政党として発展する期待感はなくなりました。
嘉田知事の試みは、日本未来の党の衆議院選での惨敗によって、注目からはずれることとなりました。
地域政党はなくなったわけではなく、地道な活動を続けているものもあります。しかし、一時のように地域政党が日本変革の核になるという熱気は消えています。ではいったい何が問題だったのでしょうか。
まず第一に、日本の社会の構造的なものがあります。この地域政党の動きの中核を担ったのは橋下氏と河村氏。橋下氏は弁護士ですが、一般にはテレビのコメンテータ、タレントとして全国的な知名度を持っています。河村氏も同様に衆議院議員としての顔というよりも、タレント的な人気者として全国的に知られていました。全国区のメディアが彼らの活動を大きく取り上げたのです。他の「地味な」知事らがどんなに活動をしても、全国区としてはほとんど記事に取り上げられません。それと比較するといかに特別扱いであったか分かります。時期は少しずれますが、宮崎県の東国原氏が知事となった時もすごい取り上げられ方をしたことと同じ構造です。しかし日本は中央集権の国。その体制を変えよう、ということで次々と政策が展開されるのならともかく、そこは遅々として進みません。年月がたち、そうした人の全国区としてのタレント性が薄れるなら、徐々にニュースバリューがなくなるという仕組みになっています。橋下氏のニュースも激減しました。河村氏のニュースは、全国区としてはほぼなくなり、地域においてもかなり少なくなりました。今の地域政党の流れ、そして勢いは、政治力においても、情報においても中央集権の日本の体質を変えるところまでは行っていなかったといえるでしょう。まずは、地方分権、地方主権を日本の制度として確立できるかどうか。ここが最大に重要なポイントのはずですが、ほとんど進まないままに失速したという感じです。
次に、こうした地域政党の動きが本当に地域主権を勝ち取ることを第一目標としたかどうかは疑問が残ります。日本維新の会が掲げた目標には、地域主権の他にタカ派的な政策も入っていました。地域主権では目的を共有しても、その他の政策や方向性では一緒に活動できない人もでてきます。地域主権なら、様々な政策の方向性はその地域で決めればいいことなのですが、そこにも方向性を出しました。国政政党の性格と地域政党の性格が同居し、方向性が明確にならなくなったと言えるでしょう。
これは河村氏にもいえます。河村氏の最大の主張は減税。しかしそれは、地域政党として主張するよりも国政で主張し、制度を変えるべきものです。地域だけで大きな減税をして責任をとるほど、日本の地方自治は進んでいません。その地方自治の制度を作り変える、というのなら拍手喝采ですが、それをしないで、自分の政治主張を実行しようとしました。何をやりたいのか、よくわからなくなったのです。
これから地域政党が日本の社会に地殻変動を起こすことができるかどうか。地域政党が意味を持つには、今の中央集権的な制度を変革していくしかありません。メディアもほぼ完全に中央集権的になっています。ここにメスを入れるだけの迫力ある動きができるかどうか。私は日本の社会構造の地殻変動を起こす地域主権の動きは可能だと考えています。しかしそれは難しい挑戦です。力ある政治家、官僚、メディア、地域経済界が一緒になって動きを起こす必要があります。関西と中部という経済圏がまずはジャブを打ちました。今のところ厳しい情勢です。後、できるとしたら福岡経済圏や北海道経済圏でしょう。これらが地方主権に向けて、歩調を合わせた挑戦をして、日本の社会構造に大きな変化をもたらしてほしいと思っています。
児玉 克哉
三重大学副学長・教授
三重大学副学長・人文学部教授、国際社会科学評議会理事。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。
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