http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/737.html
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陸山会・虚偽報告書事件の関係者一覧
マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件に対する隠ぺい捜査の実態とは(2)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/maedatsunehiko/20130914-00027799/
2013年9月14日 6時59分 前田恒彦 | 元特捜部主任検事
前回記事
マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件に対する隠ぺい捜査の実態とは 前田恒彦(元特捜部主任検事)
http://www.asyura2.com/13/senkyo152/msg/344.html
私は、昨年(2012年)5月8日、田代政弘元検事やその元上司が刑事告発されていた陸山会・虚偽報告書事件に関し、中村孝検事の取調べを受けた。
中村検事は、この事件の捜査を取りまとめ、田代元検事らに対する刑事処分を決する主任検事だった。
不起訴処分後に告発人が検察審査会に対して審査申立てをし、審査会から出席を求められた場合には、審査会の会議に出席し、意見を述べる立場にもあった。
田代元検事について
【虚偽報告書の件】
私は、中村検事に対し、石川知裕氏らの逮捕状取得に際して田代元検事が作成したという1通目の虚偽報告書のことや、田代元検事の告白を他の関係者にも伝えたことなどを一通り説明した。
また、この1通目の虚偽報告書の件と告発されている2通目の虚偽報告書の件とは事件の構図が全く同じであることや、田代元検事に「記憶の混同」などあり得ないことなど、事件の背景事情についても包み隠さずに供述した。
具体的には拙稿「マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件の背景とは」に記載しているとおりであるが、中村検事に対しては、この記事で触れていない細部や関係者の実名などについても言及した。
その上で、私は、中村検事に対し、田代元検事は「黒」であり、検察が不起訴で落とすのは困難ではないかと率直に述べた。
また、「記憶の混同」といった子供じみた弁解に終始せざるを得ない田代元検事が誰よりも一番苦しいのではないかとも述べた。
中村検事の話では、田代元検事は検察庁の公用パソコンを使い、ワープロソフト「一太郎」で虚偽報告書を作成していたが、既に文書データは消去されており、データ復旧もできなかったとのことだった。
最高検の捜査開始が遅すぎたため、証拠の隠滅や散逸を招いたことは明らかだった。
他方、パソコンのログ記録から「一太郎」のアクセス日時が特定できており、田代元検事は石川氏の取り調べを行った2010年5月17日に報告書の作成を始め、陸山会事件の捜査主任だった木村匡良検事らから指示を受けつつ、3日後くらいまで改訂を続け、最終完成に至っているとのことだった。
ここから分かることは、この報告書が二重の意味で虚偽のものだったということだ。
報告書に記載されている石川氏の供述内容は隠し録音という客観証拠と食い違っていた上、文書の作成日かつ完成日が5月17日とされている点も、同じく客観証拠から特定される実際の完成日と食い違っていたからだ。
5月17日に作成を始めたとしても、作成者が署名押印して公文書として完成させたのが20日であれば、報告書の作成日かつ完成日も20日としなければならない。
例え形式的なことであっても、一つ一つ正確を期して作成するからこそ、公文書に対する社会の信用性が保たれる。
取調べ日と同じ日を報告書の作成日かつ完成日としたのは、取調べの直後から作成を始め、かつ、その日のうちに完成に至ったという方が、記載内容の信用性を高めるからにほかならなかった。
「別の報告書のねつ造を伝えられ…黒であって不起訴で落とすのは困難」(5/8の獄中ノートより)
http://rpr.c.yimg.jp/im_sigg8N4GaKkG0_HktSZ9SNvSYg---x280-n1/amd/20130914-00027799-roupeiro-002-28-view.jpg
【偽証の件】
田代元検事は、小沢一郎代議士の公判に証人出廷した際、偽証したという疑いでも告発されていた。
偽証の主眼は虚偽報告書の作成状況に関するものだったが、むしろ私が気になったのは、田代元検事が拘置所で他の検事と情報交換をしていないという趣旨の証言をしていたことだった。
しかし、実際には私と田代元検事は情報交換を密にしていたし、お互いの立会(たちあい)事務官を介し、担当被疑者の供述調書のコピーを交付し合っていた。
立会事務官とは、検事とペアを組み、捜査に従事するとともに、取調べに立ち会ったり、書類整理やコピー作業などを担当する検察事務官のことだ。
東京拘置所に詰めていた検事は、私や田代元検事に限らず、皆、それぞれの立会事務官を介してお互いに担当被疑者の供述調書のコピーを交付し合い、担当外の被疑者の供述状況を確認しながら捜査を進めていた。
小沢代議士の供述調書も、秘密保持の観点から幹部や主任以外の捜査員にはコピーを配布しない性質のものだったが、田代元検事と並行して石川氏の取調べを担当していた吉田正喜副部長の判断により、中核となる拘置所の検事にだけはコピーが配布され、内容を確認することができていた。
田代元検事の証言は事実に反するものであり、供述調書のコピー作成や配布を担当した複数の立会事務官らから当時の状況を聴取すれば、簡単に証言の虚偽性が裏付けられる話だった。
ただ、供述調書のコピー配布は「身柄班」の判断だけで行っており、表向き「やっていないこと」になっていたので、田代元検事もこの建前を前提として証言したものと思われた。
私は、こうした事情についても中村検事に一通り説明した。
田代元検事の元上司について
特捜部長や副部長、主任検事ら田代元検事の元上司らは、検察審査会に事件記録を提出する際、起訴方向に傾く田代元検事作成の虚偽報告書を含ませる一方、不起訴方向に傾く一部の証拠を記録から外して隠し、検察審査会を騙した上、小沢代議士の起訴相当議決を導いたという偽計業務妨害の事実で告発されていた。
ただ、検察が強制起訴を導くために違法不当な手段を使って検察審査会を騙し、実際にその目的を達したとしても、その後の公判遂行は裁判所選任の指定弁護士に委ねられ、検察によるコントロールが効かなくなる。
指定弁護士の公判活動で検察の違法不当な手法が表沙汰になるリスクを考慮すると、むしろ端的に検察内部の幹部を騙し、自ら強引に起訴まで持ち込んだ方が安全だ。
この件は、元上司らがそうしたリスクを回避するため、具体的にどのような方法で指定弁護士をコントロールするつもりだったのかといった疑問に対し、説得力のある回答が求められるはずだが、全員が否認を貫いている以上、その点の証拠が乏しいのは確かであり、さすがに「無理筋」と思われた。
そこで私は、中村検事に対してその旨述べた上で、他方、告発の中で引用されていた「クレーム申入書」や「取調べメモ」に関する問題について、一通り説明した。
【クレーム申入書の問題】
これは、陸山会事件の捜査当時、石川氏の弁護人から検察の取調べに関するクレームが来ていたのに、この事実を伏せた上で、クレーム申入書を検察審査会に提出する事件記録から除外していたという問題だ。
弁護人から取調べに関する苦情が来ていたからといって、その中身まで全て真実だと断定できるものではない。
それでも、内容がどのようなものであれ、何らかのクレームが来ていたというだけで、石川氏が田代元検事や吉田副部長の取調べに納得していなかったのではないかとの疑念を生じさせるには十分だ。
この事実を隠すということは、石川氏の供述調書の作成過程に何ら問題がなかったと装うに等しい。
しかし、実際の取調べは、国会議員である石川氏に取調べ室で土下座させて屈辱感を抱かせるなど、問題が多々あった。
もし検察審査会の審査員にそうした事実を知られたら、それだけで石川氏の供述調書の任意性や信用性を否定されたばかりか、検察捜査全体が疑いの目で見られたはずだ。
この点、石川氏の弁護人が検察あてに提出していたクレーム申入書は1通のみであり、その内容も取調べの全面録音録画を求めるといった一般的な記載にとどまるものだった。
しかし、たった1通でもそうした申入書が存在したという事実が重要である上、弁護人が接見指定を求めるために検察に電話を入れた際、併せて取調べに関する苦情を述べたような場面も多々あったはずだ。
ただ、従前から、検察では、弁護人のクレーム申入れやこれに対する検察内の対応状況などに関する書類を事件記録と別扱いにした上で、起訴状写しや求刑予定、内部決裁資料などを綴った検察官手持ちの「検察票綴り」と呼ばれる書類綴りの中に編てつするといった取扱いが行われてきた。
今回も、悪意に基づいてクレーム申入書を事件記録から外したというよりも、単に従前と同様の取扱いをしていたにすぎないとも考えられた。
しかし、それは検察の勝手な都合にほかならず、捜査の過程で判明した事実は有利不利を問わず全て証拠化し、仮に原本が1通で事件記録が共犯者の数だけ分けて作成されるような事案の場合でも、きちんとその数だけの謄本を原本から作成した上で、各事件記録に編てつしておくというのが検察の取るべき態度だったはずだ。
私は、中村検事に対し、以上のような事情を一通り説明した。
【取調べメモの問題】
これは、各検事が取調べを行った関係者の供述内容をワープロソフトを使ってメモにまとめており、この「取調べメモ」が検察で組織的に管理され、捜査員にも配布されていたにもかかわらず、検察審査会に提出する事件記録からはその全てが除外されていたという問題だ。
この問題の本質は、例えば建設業者が小沢代議士サイドへの裏金交付を否定したり、仮に認めていてもその一部に検察にとって不都合な部分があるような場合には、あえてそれらを「供述調書」にせず、「証拠」という形で残さないことで、将来の証拠開示に伴う公判の紛糾を避けようとする点にある。
ただ、そうした供述であっても捜査公判を担当する検察内部では情報共有をしておく必要がある。
そこで、「取調べメモ」という形で残した上で、単なる検事の聞き取りメモであって完成された公文書ではないとして事件記録から外して別管理とし、この写しを幹部や主任、捜査担当検事に配布し、併せて公判担当検事にも事件記録と別に引き継ぐことで、情報共有を図ることとなる。
こうしたやり方であれば、実際にはどのような供述内容だったのかが表に出てこないし、検察の都合でいつでもそのメモを廃棄でき、仮に弁護人から証拠開示請求が出たとしても、「存在しない」として拒否することが可能となる。
ところで、中村検事は、私の取調べに際し、小沢公判における私の証人尋問後、検察が渋々ながら指定弁護士に交付していた70通ほどの取調べメモの写しを全て持参していた。
私は、中村検事からこれらのメモを示され、がく然とした。
というのも、この70通は、各検事が作成していた「取調べメモ」のごく一部にすぎず、かなりのものが間引かれていたからだ。
そこで私は、中村検事にその旨述べた上で、「○○のメモがない。あのメモには××といったことが記載されていた」などと言って、間引かれている取調べメモの存在と、その具体的な内容を伝えた。
そもそも検察審査会に取調べメモの存在を隠していたということが問題となっていたのに、なおも検察は指定弁護士に一部を交付するのみで、あたかもそれが全てであるかのように装い、大部分の不都合なメモを隠し続けていたのだった。
しかも、この70通の取調べメモですら指定弁護士に開示するのを渋っていたわけであり、余りにも不誠実な検察の対応を知り、呆れるほかなかった。
この日の取調べは午後4時30分ころに終わり、私の供述調書は翌日回しとなった。(続)
前田恒彦
元特捜部主任検事
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。獄中経験もあり、刑事司法の実態や問題点などを独自の視点でささやく。
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