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ダイヤモンドから
http://diamond.jp/articles/-/41574
いよいよ安倍首相は、10月1日にも消費税増税について結論を出すという。私は昨年からずっと消費税増税には反対を唱えてきた。本稿ではまずその理由を述べるとともに、消費税増税を実施しなくとも、財政再建が可能なことを示す。
増税反対10の理由
安倍首相は、10月1日に消費税増税をするかどうかを決定するという。消費税増税は昨年に決まったこととかいわれるが、そうではない。
今の議論の前提になっている昨年8月に成立した消費税増税法附則18条3項をみてみよう。
「この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」
これを素直に読めば、「総合判断」なので、何でもありだ。
筆者は、昨年からずっと消費税増税に反対である。理由は別途連載のコラム「俗論を撃つ!」でも、再三述べてきた(2012年6月14日付け本コラム「6・13 国会公聴会 私が述べた消費税増税反対の10大理由」参照)。
詳しくはそれをご覧いただくとして、そこで書いた反対理由は、まず、経済対策として、@デフレの解消が先、A財政再建の必要性が乏しいこと、B欧州危機時にやることでないこと、第2に税理論として C不公平の是正が先、D歳入庁の創設が先、E消費税の社会保障目的税化の誤り、F消費税は地方税とすべきこと、第3に政治姿勢として、G無駄の削減・行革が先、H資産売却・埋蔵金が先、Iマニフェスト違反がある。
このコラムはアベノミクスの登場以前の民主党政権時に書いたが、ほとんどの部分は今でも妥当するものの、一部の修正は必要だ。
今は政権交代があったので、Iマニフェスト違反は書き直しが必要だ。ただし、昨年の総選挙や参院選で、消費税増税を堂々と争点にしたとはいいがたい。この意味で、I政治的に国民の理解を得ていないと書き直しておこう。
B欧州危機時にやることでないことは、昨年ほどの深刻度はないものの、中国経済などの新興国経済の先行きが不透明と、修正すればいいだろう。
増税分はバラマキに回る
自公政権になって、ちょっと酷いことになったので、追加すべき事項もでてきた。実は、昨年8月に消費税増税法が、民、自公の賛成で成立したとき、自公からの修正によって、附則18条2項が追加されている。
「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。」
これは、増税した分を「バラマケル」という規定だ。
すでに消費税増税の前にも、バラマキ気分は盛り上がっている。今年度でも税収の上振れが数兆円単位であることがわかっているので、それを財源として秋の補正予算の話も出ている。
来年度予算はもっと凄い。来年度一般会計の要求総額は99兆2500億円程度で、要求額としては過去最大だ。この理由は、8月8日に閣議了解された概算要求の方法だ。この概算要求はこれまでのものとかなり異なっている。その前に、これまでの概算要求を説明しよう。概算要求というのは、しばしばシーリング(天井)といわれるように、各省庁ごとに要求のキャップ(上限)の役割を果たしてきた。
ところが、今回の概算要求には、要求のキャップがないのだ。このような概算要求はこれまでに例がない。筆者は2日テレビ朝日の「TVタックル」でこの点を発言した。そうしたら、出演した世耕弘成官房副長官が是非説明したいといって、消費税増税がまだ決まっていないことと歳入増があるので、歳入が決められないからだと言った。
歳入が決まらないのはいつも同じだ。予算はもともと歳出権を決めるものであって、歳入は単なる見積もりでしかない。世耕発言はくしくも、消費税増税を見込んで使ってしまうことを白状してしまった。財政当局がしっかりしていれば、消費税増税なしという前提で要求額のキャップを決めておき、もし消費税増税になれば、歳入の上振れとして、財政再建に回せばいいだろう。
消費税増税が官僚の間では既定路線になっていて、その増税分はバラマキの対象になっているから、要求のキャップがなく事実上青天井の概算要求になっているのだ。消費税増税分は「バラマキ」にだけ使われるけでない。減税にもまわる。新聞には軽減税率、経団連には法人税減税というアメ玉をしゃぶらせるのにも使われる。
こうした実弾を撃つのに、消費税増税は使われる。ただ、増税して「バラマキ」するのでは何のためなのかという疑問がでてくるだろう。
なぜ財務省は増税を指向するのか
なぜ、財務省は増税を指向するのか。それは、予算での「歳出権」の最大化を求めているからだ。予算上、増税は歳入を増やし結果として歳出を増やす。さらに、歳入は見積もりであるが、歳出権は国会の議決で決めるのという点が重要だ。一方、実際の税収が予算を下回ったとしても、国債発行額が増えるだけで、歳出権が減ることはない。
この歳出権は各省に配分されるが、それが大きければ大きいほど財務省の権益は大きくなる。このため、財務省が歳出権の最大化を求めるのは官僚機構として当然となる。それと結託しているのが、古い自民党である。政権交代で残念ながら、古い自民党議員が多く当選してしまった。
こうした結果、消費税増税しても財政再建はまったく無視されている。そうしたことを知りながら、財務省は消費税増税を先送りすると、財政再建の意思が弱いとみなされるので国債が暴落するという悪辣なデマを流していたわけで、マスコミはそれにまんまとはまったわけだ。
実は、消費税増税すると半ば自動的に歳出増になるので財政再建できなくなる。一方、消費税増税をしないと歳出増は抑えられるとともに経済成長するので、結果として歳入増(税収増)となり財政再建が進む。したがって、消費税増税すると財政再建懸念がでて、消費税増税しないと財政再建がうまくいく。この好例は、2001年からの小泉政権である。消費税増税を封印しつつ歳出の伸びを抑え、同時に経済成長を目指したから、基礎的財政収支赤字は28兆円から6兆円まで改善した。
こうした実例がありながら、まだ多くのマスコミは、増税しないと財政・社会保障の持続性が危ないと誤解している。実際、DOL編集部ですらも、筆者の増税なしの代替案に対して「増税なしで、財政・社会保障の持続性は大丈夫なのか」と聞いてくる。
増税なしの財政再建策を示す
筆者の増税なしの財政再建策は、アベノミクスによるデフレ脱却すなわち名目GDP成長率アップと、歳入庁創設や消費税のインボイス制度導入による不公平是正かつ増収策である。
これによって財政再建が可能なのは、一部を行った小泉政権でさえ財政再建の実績があることから明らかだろうが、これまでの連載コラムに書いたものからも数量的に確認できる。5月30日付け連載コラム『経済財政諮問会議が放ったとんでもない“矢” 「財政健全化を第4の矢に」は正しいか』では、アベノミクスの数量分析をしている。同コラムのグラフ3から、今のアベノミクスの金融緩和によって2年後は名目GDP成長率は4%程度超になる。となると、同コラムのグラフ2から、その時の基礎的財政収支対名目GDP比は悪くても▲1.2%程度である。
そこで、歳入庁創設で10兆円(名目GDP比2%)や消費税インボイスで3兆円(名目GDP比0.6%)の増収があることを考えると、基礎的財政収支対名目GDP比は、▲1.2+2.6=1.4%以上もプラスになる。これで財政再建は終了だ。
社会保障費が毎年1兆円増えて大変という話も基礎的財政収支の中に含まれている。債務残高がGDPの2倍になっていて大変という話も、5月30日付けラムで数式で説明しているように、基礎的財政収支対名目GDP比がプラスになれば何の心配もいらない。
歳入庁創設や消費税インボイスは、公平な社会保障政策を実施したり、公正な税執行を行うために必要な社会インフラだ。これらはどのような社会保障政策、税制をとるにしても必須なので、これらは増税派でも否定できないものだ。それらをやらずに、消費税増税をするのでは、官僚の歳出権を増やすだけで、経済成長にも財政再建にもつながらない。
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