http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/665.html
Tweet |
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-9801.html
2013/9/11 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
経済波及効果3兆円、雇用15万人増、外国人観光客1000万人突破――。東京五輪の開催決定で、メディアには景気のいい数字があふれている。株式市場では五輪関連銘柄が高騰し、五輪特需で経済が復活、「万事うまくいく」みたいな報道ばかりなのだが、果たして本当にそうか。
「56年前の夢よ、もう一度」とメディアは煽るが、戦後の傷痕が癒え、高度成長期にさしかかっていた当時と、少子化、デフレ不況下の今とでは、状況が全く違う。
しかも、今の日本の借金財政のきっかけになったのは、1964年の東京五輪なのである。過剰なインフラ整備の反動で、五輪開催の翌年に景気は急激にダウンした。俗に言う「昭和40年不況」である。政府は財政出動を余儀なくされ、日銀特融と戦後初の赤字国債の発行に踏み切った。これが常態化した結果が、今日の累積債務1000兆円なのである。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「1964年当時は、高度経済成長期で、インフラ整備が経済発展に寄与しました。人口も増えていたため、国内消費が拡大し、赤字国債を発行しても経済成長で吸収できた。しかし、日本は2015年ごろから、東京都は2020年から人口減が進み、超高齢化社会が到来します。立派なハコモノをつくっても、維持管理費が将来にわたって大きな負担になってくる。本来なら社会保障に使われるはずのお金が削られ、五輪のインフラ整備に回されるのは、国民生活にとってはマイナスでしかないのです。私は東京五輪開催はアベノリスクのひとつだと考えています」
当時と今は全く違うのに、日本中が「夢よ、もう一度」で、五輪決定に浮かれている。
◆スポーツ偏重が続けば国力はますます衰える
きのう(10日)午後、都庁で開かれたIOC総会の帰国会見も異様だった。猪瀬都知事は「スポーツで心のデフレを脱却」とかハシャぎ、森元首相は「スポーツは人間教育に最高だ」と陶酔していた。五輪招致を決めた高揚感で、誰も彼もが「スポーツ馬鹿」になってしまったかのようだ。
スポーツの感動はもちろん否定しないが、デフレも荒廃した教育もスポーツで解決するというスポーツ万能論、スポーツ礼賛は違うだろう。教育問題に詳しい精神科医の和田秀樹氏もこう言って危機感をあらわにした。
「ここ数日、テレビに元五輪選手などスポーツ関係者が出まくり、中には“今後は入学試験も学力よりスポーツ”なんて言う人まで出てきている。見てると不安になりますよ。1964年当時は、実は受験熱が最も盛んな時代でした。みんなが勉強熱心だったから、スポーツ振興にも大きな意味がありましたが、今は多くの私大が定員割れという時代です。早稲田大学でも7割がエスカレーターやAO入試で、純粋な受験で入学するのは少数派なのです。日本人の学力は下がり続け、中国、韓国にも抜かれている。学力低下によって、1人当たりの生産性も落ちています。それが不況の原因にもなっている。そんな中で“学力よりスポーツ”という風潮が蔓延するのは滑稽なことです。五輪招致に浮かれ、この先7年間、スポーツ偏重の世の中が続けば、ますます国力は衰えてしまいます」
1964年の東京五輪は発展の始まりだったが、2020年の東京五輪は危ない。五輪、五輪でバカ騒ぎしていると、本当に日本中がバカになってしまう。五輪を契機に日本の凋落が始まるという悪夢がよぎるのである。
◆ギリシャ破綻も五輪開催がきっかけだった
東京五輪で日本中がスポーツ一色、思考停止に陥っているのか、消費税増税に対する慎重論も、すっかりかき消されてしまった。これも大問題だ。
もともと安倍首相は迷っているフリをしていただけで、先送りする気なんてサラサラなかった。全国民が納得するような“理由づけ”を探していただけだ。GDP改定値の上方修正に加え、五輪の招致決定という追い風に内心、ガッツポーズだろう。
10月1日に増税を正式に表明するため、安倍はきのうの閣僚懇談会で、増税時の経済対策を今月中にまとめるよう指示を出した。消費税は予定通り来年4月に8%、その翌年には10%に引き上げられる。そうなると、五輪景気なんて吹っ飛んでしまうかもしれない。
内閣府の試算では、消費税が10%になった場合、年収500万円の4人家族で年間11万5000円の負担増になる。これは政府発表だけあって大甘見通しだ。社会保障アップも含めると、年収500万円世帯で年間32万円の負担増になると大和総研は算出している。同じように生活しているだけで、給料1カ月分が丸々消えてしまうのである。
しかも、この試算にはアベノミクスによる物価高は含まれていないから、実際の家計負担はもっとシビアになる。
「増税で景気が落ち込むのは確実だから、その都度、大型の補正予算で内需を創出する必要が出てきます。国の借金はすでに1000兆円を超えているのに、ますます借金を増やすことになる。それで経済が良くなればいいが、そうなる見込みはない。五輪特需といっても、東京一極集中が進むだけだし、儲かるのは建設業やサービス業などごく一部だけ。国民の税金を使って五輪を開催しても、すべての人に恩恵があるわけではない。その間、給料が上がらず、物価だけが上がるスタグフレーションが続けば、庶民生活は持ちこたえられるでしょうか」(小林弥六氏=前出)
財務省関係者は「大規模補正で10兆円程度は覚悟している」と話すが、消費税1%につき約2兆円の国家税収だから、補正で5%分の税収が消えてしまう。つまり、差し引きゼロ。“行って来い”ですめばまだよくて、増税による景気悪化で税収が落ち込む可能性の方が高い。97年の増税時もそうだった。こうなると、何のための増税なのか。逆に国の借金は膨れ上がってしまうのだ。
◆被災地は置き去り、国民負担は増大
それでなくても、安倍政権は五輪のインフラ整備の名目で公共事業もバンバンやる気だ。国だけでなく、地方自治体も右に倣えになる。老朽化が進む首都高は、現在進行中の整備計画をさらに見直し、大幅に整備規模を拡大する。国交省関係者によれば、「最優先課題の羽田線の整備だけで4兆〜5兆円かかる」という。これに環状線、羽田空港と成田空港を結ぶ鉄道の敷設計画、リニア中央新幹線の前倒しだなど、あっという間に予算は数十兆円に膨れ上がる。
リニアは2027年開通予定だが、それじゃあ、五輪に間に合わない。そこで国が後押しするわけだ。それやこれやを考えれば、税収をはるかに上回る巨大支出が7年間も続くのである。
1965年に政府が赤字国債の発行を閣議決定した際は、日本銀行代表の吉野俊彦氏が「国債発行は禁断の木の実だ。満州事変以降の苦い経験を忘れてしまったのか」と詰め寄った。しかし、今の日銀は政府の言いなり。どれだけ借金を重ねても、日銀が国債を買ってくれるのだから、財政規律もクソもない。大盤振る舞いで国の借金は膨れ上がり、国債暴落危機が日増しに深刻化してくるだろう。
ギリシャ破綻のきっかけも、2004年アテネ五輪のための大規模なインフラ整備だった。
「近年の五輪で経済的に成功した例はロサンゼルスとバルセロナくらいで、多くの開催都市は莫大な借金に苦しんでいます。しかも、日本には震災復興との両立という課題がある。五輪の決定で建築資材や労働力が東京に集中したら、被災地は置き去りにされてしまう。そうやってハコモノをいくらつくったところで、雇用は一時的なものですから、新しい産業が生まれ、安定的な雇用を創出するわけではない。そうなると、財政だけが悪化し、消費税が15%、20%と引き上げられるかもしれない。五輪が終われば、国の借金は増大し、被災地の復興は進まず、国民は増税と将来的な財政負担に苦しむことになる。子供たちに夢を与えるどころか、巨大なツケを残す結果にならないことを祈るばかりです」(立教大教授・郭洋春氏=経済学)
五輪が終われば、ギリシャと同じ道か。夢が覚めた後には残酷な現実が待ち受けている。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。