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日本はやるべき順番を間違えていないか
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★「田中良紹氏の視点ー(2013/09/11)」★ :本音言いまっせー!
2020年夏のオリンピックが東京に決まったと聞いてフーテンが
真っ先に思ったのは、「猛暑の東京で大丈夫なのか」という事だった。
今年の猛暑を体験したばかりだからかもしれないが、熱中症で倒れる人
がどれほど出てくるのだろうと心配になった。
東京の夏の暑さは尋常でない。フーテンは昔イラクで40度以上の気温
を経験した事があるが、それでも湿気がなく夜には気温が下がるので、
東京と比べればまだ我慢できたような気がする。
しかし東京の暑さはまるでサウナ風呂だ。日陰にいても暑さは変わらず、
夜になっても気温は下がらない。屋外で行われる競技の選手や観客は
大変だろうと思った。
ところが報道を見るとそんな心配をする人間は少数派らしい。
オリンピックの経済効果に期待をかける国民が多く、株価は連日値上がりし、
「これでデフレから脱却できる」と喜ぶ日本人が大半のようだ。
オリンピックを「アベノミクス第四の矢」ともてはやしている。
暑い盛りに行われる高校野球を海外の人間は将来伸びる若者を酷使して
潰すと考えるが、日本人は暑い盛りに若者が奮闘する姿に感動して
選手の将来など考えない。だから猛暑のオリンピックも気にならない
らしい。
とにかく現在の日本人は「景気が上向けば何でも良い」と考えるようだ。
だから確実に格差を生み出すアベノミクスに庶民までもが熱狂する。
フーテンはオリンピックに経済効果があることを否定しないが、
それによって日本がどのような国になるかを考えないと、ただ喜んで
ばかりもいられない。景気の良い話に踊らされて後で泣きを見るのは
庶民の常である。
日本が何にも増して取り組まなければならないのは東日本大震災からの
復興と原発事故の収束である。また最大の課題として横たわっているのが
世界最速で進む少子高齢化に適応できる社会を構築する事である。
それらはいずれも簡単な課題ではない。本気になって英知を結集し、
もてる力を総動員しなければ成果を得られない難事業である。
そこに東京オリンピックと言うタイムリミットのある事業が加わった。
これが相乗効果を生んで他の課題に良い影響を与えられれば良いのだが、
そうとは思えないから簡単に喜ぶ気持ちになれない。東日本大震災からの
復興が遅れているのは、資材と人手不足が大きな要因と言われてきた。
アベノミクスの第二の矢である大胆な財政出動の方針の下、
自民党は公共事業の大盤振る舞いを始めたが、それによって東北の復興に
人手が回らなくなるのではと懸念されている。
そこに東京オリンピックが加わった。こちらはタイムリミットがあるので
工事が優先して行われる可能性が高い。それが復興の遅れをもたらす事に
ならないか。
原発の廃炉には40年かかると言われている。従ってオリンピックが
開かれている時も原発事故の収束には至っていない。
安倍総理はIOC総会の演説で福島第一発電所の汚染水問題は
「完全にブロックされていて全く問題ない」と大見得を切ったが、
現実にはブロックされていない事が分かっている。
安倍総理は国際社会に「うそ」をついたと厳しく批判する人もいる。
問題はオリンピックに対する批判を封じ込めるため「うそ」をつき続ける
事にならないかという恐れである。国際社会に「日本は安全だ」と
思わせることが至上命題となり、そこから原発問題の厳しい現実を
直視しない風潮が作られ、東京の安全性を強調するために被災地と東京
との間に「壁」のようなものが作られてしまわないかとフーテンは恐れる。
汚染水問題を海外メディアが注目し、日本の招致委員会メンバーに質問が
相次いだとき、メンバーが「東京は安全だ」と繰り返すさまを見て、
東京が安全なら福島は汚染されたままでも良いのか、日本人が一つに
なって原発事故を乗り越えようとしたあの時の気持ちはどこに行って
しまったのかという気になった。
また日本はオリンピックのために潤沢な基金を持っているという説明を
聞くと、金があるならオリンピックよりも原発事故の収束の方に回すべき
ではないかという気持ちにもなった。日本の招致活動を見る事によって
フーテンは、日本は国家としてやるべき順番を間違えてしまっている
という印象を持つようになった。
「オリンピックを成功させるため」が葵の印籠となって、東京の一極集中
に拍車がかかり、強い者はますます強く、弱い者はそれを必死に下支え
させられる。悪い話には耳をふさぎ、ひたすら経済効果を追い求める。
そんな日本人像が出来上がりそうな気がするのである。
少し前までは少子高齢化社会の到来に備えて社会保障をどう見直すかに
関心を寄せていた国民が、オリンピックによってその関心を薄れさせ、
一過性の国民的イベントに列島中が舞い上がる。
そんな日本の姿がフーテンの目には浮かび上がってくる。
だから社会保障の中身の議論もないままに消費税が上がろうとしている。
国民は7年後を夢見て文句を言わない。
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