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2013/9/9 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
◆得意満面の極右首相の国威発揚に格好の舞台
60票対36票――。決選投票でイスタンブールを退けた東京が、2020年の五輪開催都市に選ばれた。その瞬間から、大マスコミは例によって大ハシャギだったが、さて、この決定と熱狂に、マユをひそめる良識者層も少なくない。
日本全体が「福島」を切り離して、喜び、浮かれているからだ。
安倍首相は最終プレゼンテーションで、福島原発の汚染水問題に言及。「完全にブロックされている」「東京にはいかなる悪影響もない」と言い切った。露骨な福島切り捨てだったが、結果的にIOCはそれを評価し、日本のメディアは大絶賛した。
まともな人間であれば、「違和感」を覚えるが、東京決定という狂乱報道にかき消された。東京五輪開催にはさまざまな見方、感想、懸念がある。きらびやかな光の裏には影がある。メディアに踊らされ、浮かれまくっている庶民も、それを知っておいた方がいい。
ジャーナリストの斎藤貴男氏は「“酒が飲めるぞの歌”を思い出した」と、こう言った。
「1月は正月で酒が飲めるぞ、というアレです。何でもかんでも飲むネタにしてしまう。被災地も福島も騒ぐネタにしたのが今度の五輪招致です。最初は復興を売りものにしようとして、最後は福島を切り捨てた。“汚染水はコントロールできる”“東京は違う”という論法は恐ろしいし、卑しい。このプレゼンテーションが受け入れられたということは、IOCも同じ価値観で“儲ければいい”“騒げればいい”“酒が飲めればいい”のでしょう。大メディアも同じ発想ですから、切り捨てられた福島を問題にしようともしない。国民もバンザイバンザイで浮かれている。これは異様な光景です。古代ローマの詩人ユウェナリスはパンとサーカスによって、ローマ市民が政治的に盲目にされていることを揶揄しましたが、五輪というサーカスの裏で、どんな政治が行われているのか。庶民はもっと敏感になるべきです」
◆ベルリン五輪を国威高揚に利用したヒトラー
評論家の佐高信氏も、この熱狂に違和感を覚えたひとりだ。
「東京は安全、安心でも福島はまったく違うわけです。しかし、みんなが“それでいい”と言う。“おかしいじゃないか”と思っても、東京開催で浮かれる世論がそれを許さないというか、そんなことを言ったら非国民扱いされるようなムードになっているのが恐ろしい。そもそも、五輪というのは、そんなきれいごとではないんですよ。1936年のベルリン五輪のマラソンで優勝した孫基禎は朝鮮出身の選手でしたが、日本の統治下にあったため、日本人扱いとなった。アジア初のマラソン金メダリストと騒がれたが、本人は自分の国歌は君が代ではない、と抵抗した。長らく、朝日歌壇の選者を務めた歌人、近藤芳美は五輪を評価する歌を絶対に選ばなかった。時に政治利用される五輪の怖さを知っていたからだと思います」
そのベルリン五輪で開会宣言をしたのはアドルフ・ヒトラーだ。次の1940年は東京開催が決まっていたが、1937年、日中戦争が本格化したことで、日本は開催権を返上した。当時も東京五輪開催決定に人々は浮かれたが、それがイヤな時代の幕開けとなった。今度も不吉な予感がする。福島を無視した国民の熱狂、安倍のドヤ顔、メディアの狂騒。やっぱり、マトモじゃないのである。作家の三好徹氏が言う。
「安倍首相は、招致に成功したのは、プレゼンテーションで安全を確約した自分の手柄と思っているかもしれないが、被災地の人は憤慨しているのではないでしょうか。地元に帰りたくても帰れない人がたくさんいるし、7年後に帰還できるかも分からない。復興は進まず、原発事故の収束も先が見えないのに、首相は票の欲しさに虚言を弄した。この程度のウソは許されると思っているのかもしれないが、約束を破れば、日本は国際社会から信用されなくなる。首相ひとりの問題では済まなくなります。
◆4号機の核燃料プールのことは忘れたのか
元スイス大使の村田光平氏はこう言った。
「経済優先の安倍政権は、原発事故処理を東電任せにしてきた。五輪開催地決定の直前になって、ようやく汚染水処理問題に乗り出すことにしたのも、国際社会が厳しい目を向けていることに気付いたからで、五輪招致のためです。ずっと、汚染水問題に取り組んできて、安全を保証するというわけではないのです。大体、放射能で近づけないため、抜本的な補強ができていない福島第1原発4号機の核燃料プールは震度6強の地震で崩壊する。1533本もの燃料棒が大気中に放り出され、燃え出せば、おびただしい放射能が放出される。五輪までに地震が起きない保証はありませんから、原発は安全でもないし、確実でもない。国際社会は納得していないと思います」
村田氏は「決まった以上はプラスに考えたい」と話すが、当初は、本紙のインタビューでも「日本は五輪を辞退すべきだ」と語っていた。安易に安全を約束し、「勝った」「勝った」と浮かれている日本を見ていると、ハラハラしてくる。それが識者の見方なのだ。
◆五輪を口実に増税強行、バラマキ正当化の懸念
五輪招致に成功したことで、得意満面、ふんぞり返っている安倍首相が今後、どんな暴政を始めるかも心配だ。この調子だと、また、内閣支持率が上がる。消費税10%は決まりだし、ヘタすりゃ、五輪を口実に大増税の懸念もある。
埼玉大教授の相沢幸悦氏(経済学)が言う。
「安倍政権は五輪を錦の御旗にして、消費税を最終的に15%から欧州レベルの20%くらいにまで引き上げるかもしれませんよ。本来であれば、増税する以上、政府もバラマキをやめなきゃおかしい。しかし、五輪のための公共事業だと許されてしまうムードがある。それでなくても、自民党が政権に返り咲き、すでに来年度予算案の概算要求は過去最高の100兆円に迫る勢いです。この流れが五輪開催でますます加速する。防災計画や国土強靭化を大義名分に、リニア計画の具体化や全国のトンネル、橋、道路の整備に大盤振る舞いが始まると思います。そうなりゃ、多少の経済効果はあります。しかし、甘い汁を吸うのは族議員に近いゼネコン、不動産業者など一部の利害関係者だけで、その分、庶民は消費増税を迫られることになりかねません」
大メディアにはきちっと監視してほしいが、NHKの政治部記者は安倍へのインタビューで「これで消費税は問題なくなりましたね」なんて言っていた。
これじゃあ、ますます、安倍をつけあがらせるだけである。
◆愛国心の強要、右傾化に拍車がかかる
「右傾化も心配です」と話すのは、政治評論家の本澤二郎氏だ。
「五輪は良くも悪くも愛国心を刺激するイベントです。これを為政者が政治的に利用してきた例は、ヒトラーを筆頭に枚挙にいとまがありません。中国、韓国との関係が行き詰まっている安倍政権にとって、国民の関心が五輪に向くことは都合がいい。招致の成功で安倍首相がますます強権化すれば、近隣諸国との関係もさらに悪化する。そこへ五輪を持ち出せば、国民意識をまとめることができる。愛国心を煽って、軍事費の拡充に利用する可能性もあります」
前出の斎藤貴男氏も同じような懸念を抱いている。
「五輪には華やかさとは裏腹に負の側面もあるのです。例えば、国威発揚という名目での愛国心の強要や、セキュリティーを理由にした監視社会の強化です。それでなくても、安倍首相は国歌国旗への尊敬を強要しようとしている政治家です。そういう首相に五輪という格好のツールを与えてしまった怖さを感じる。今後は、五輪の啓蒙を大義名分に、小学生にも小冊子が配られ、日の丸を振り、国への応援が当たり前である、というような教育がなされる懸念もある。この熱狂を見ていると、おそらく、国民はそれを違和感なく、受け入れてしまうのでしょう。改憲で人権を制限しようとしている安倍自民党政権が五輪を取ってきたということで、どうしても暗い時代を連想してしまいます」
◆極右首相が図に乗りやりたい放題の恐怖
1964年の東京五輪招致が決まったのは、岸信介政権のときだ。敬愛する祖父に続く“偉業”に安倍はさぞかし、高揚しているのだろう。元外交官の孫崎享氏はこう言った。
「五輪開催は素直に喜びたいが、よりによって、安倍首相と猪瀬都知事という独善的なトップの時に決まるとは、スポーツの素晴らしさが曇ってしまいそうで一抹の不安を覚えます。五輪招致が政治利用され、おかしな右傾化が進みそうになった時には問題提起をしなければなりません」
参院選に勝ち、ねじれを解消し、五輪招致にも成功した安倍政権は、目下のところ、挫折なしでここまできている。気味が悪いくらいの強運だ。この調子で、TPPも強行し、憲法の解釈変更、集団的自衛権の行使、最後は憲法改正を仕掛けてくる。
とんでもない暴政なのだが、人々は五輪に熱狂して気付かない。安倍の暴走をリーダーシップと勘違いしてしまう恐れがある。
「夏季五輪開催では電力需要も問題になってきます。それを“人質”に原発再稼働も全面解禁しかねません」(本澤二郎氏=前出)
五輪に浮かれていると国民は感覚そのものがマヒしてしまう。それが7年間も続けば、すっかり、国の形も景色も変わってしまうかもしれない。
将来世代に夢を与える東京五輪というが、逆にならないことを祈るばかりだ。
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