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9月7日 東京新聞「こちら特報部」 :「日々担々」資料ブログ
橋下徹・日本維新の会共同代表の掲げる「大阪都構想」の是非を最大争点とした堺市長選(十五日告示、二十九日投開票)が迫る。「都構想」に反旗を翻した現職と、維新が対抗馬として擁立した新人の一騎打ちとなりそうだ。党勢に陰りの見える維新は、敗れれば党の存亡に関わると総力戦の構えだ。 (榊原崇仁、上田千秋)
「僕の怒りは最高潮」「竹山さんが堺市を残したいのは、百年市長をやっていたいから」
五日夜、日本維新の会傘下の大阪維新の会が堺市で開いたタウンミーティング。橋下氏は、八百人を超す聴衆を前にまくしたてた。怒りの矛先は、堺市長選に再選を目指し出馬する現職竹山修身(おさみ)市長(63)。維新の支援者の無職男性(68)は「堺で負けたら都構想も橋下も終わり。そら必死にしゃべる。自分が市長選に出たいくらいやと思う」と話した。
竹山氏は、元大阪府政策企画部長。四年前の市長選では、当時府知事だった橋下氏の全面的な支援を受けて出馬し、現職を破って初当選した。当初は橋下氏と共同歩調をとって改革を進めたいとしていた。その後、橋下氏が堺市を再編する都構想を打ち出すと、反対姿勢を示すようになり、今では全面対決の様相だ。
こうした竹山氏は、橋下氏にとっては戦乱の「裏切り者」と映る。「橋下さん、はらわた煮えくりかえってるわ。どんなことしても竹山市長を落とすはずや」。印刷業の男性(50)は、橋下氏の心境をこう代弁した。
「大阪都構想」は、維新にとって「一丁目一番地」の政策だ。二重行政を解消し、無駄な出費を削減。赤字体質の行政を効率的に運営するのを狙いとする。大阪府内にある大阪市と堺市の二つの政令市を解体し、身近な住民サービスを担う複数の特別区に再編。広域行政は、府に代わる「大阪都」が担当する。都構想実現には、法定協議会などへの堺市の参加が不可欠。ここで、堺市に反対されたら、計画は頓挫する。
維新は、昨年末の衆院選で第三党に躍進。しかし、今年五月の橋下氏の慰安婦問題に関する発言をきっかけに逆風にさらされた。七月の参院選は八議席獲得にとどまり、国政で存在感が薄れつつある。堺市長選はまさに正念場だ。もし、敗北すれば、橋下氏は求心力を失うばかりか、党の命脈を絶たれることにもなりかねない。
維新にとって「絶対に負けられない」戦い。維新は、竹山氏に対抗する候補者を模索。地元テレビ局のアナウンサーらに打診したが断られ、結局、大阪維新の会副幹事長で堺市議だった西林克敏氏(43)の擁立を決めた。だが、食品店を営む女性(64)は「印象が薄い。誰か分からん」。維新も知名度の低さを補うため、西林氏の後援会事務所には橋下氏の写真が入る巨大な横断幕を取り付け、「橋下頼み」で乗り切ろうとする。
竹山氏のスローガンは、「堺はひとつ! 堺を無くすな!」。都構想に反対姿勢を明確にしている。「堺の自治が奪われる」「地方自治の流れに逆行する」というのが、竹山氏の主張だ。
市内のあちこちで、竹山氏と日本サッカー協会の川淵三郎最高顧問ががっちり握手をするポスターが張られている。川淵氏は、日本維新の会の石原慎太郎共同代表と親しく、これまで維新を応援する立場だった。しかし、竹山氏とは「市内の高校の先輩後輩」という間柄から、堺市長選では、竹山氏支持に回ったのだ。
政党の支持関係は複雑だ。自民党大阪府連は竹山氏支持の方向で、党本部に推薦を要請しているが、党本部は難色を示している。国政レベルでは、改憲などで維新との連携を重視しているからだ。公明党は、昨年の衆院選で大阪府内の小選挙区で維新とすみ分けした経緯などがあり、自主投票の方針だ。民主党は既に竹山氏の推薦を決めた。
共産党も実質的に竹山氏を支持している。このため、竹山氏と川淵氏が握手するポスターと、共産党のポスターが並んで張られている光景も珍しくない。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を購読する年金暮らしの男性(85)は「自民と同じ候補を応援する時代が来るとは思わんかった」と苦笑いした。
堺には、「自由都市」の独特の気風があるという。「堺は堺、独立独歩のまち。なのに何で外の人間に堺が消されなあかんねん」。堺市役所の前を歩いていた無職男性(77)は都構想に憤る。
堺は中世以降、日本随一の国際貿易拠点として発展。中国やスペイン、ポルトガルなどとの交易で財をなした豪商らは自治組織をつくり兵を雇って自衛した。「殿様がおらんのが堺。自分らのことは自分らで決める」という風潮が強い。
プライドも高い。堺からは、織田信長が好んで使った鉄砲をはじめ、三味線や線香、金魚、傘、自転車など多くの技術が日本各地に広がり、「ものの始まりなんでも堺」という言葉まである。
仁徳天皇陵など古墳が点在。茶道の千利休、天才棋士の阪田三吉、歌人の与謝野晶子と、ゆかりの文化人も多い。仁徳陵近くに住む清掃会社の男性社長(53)は「他にないもんがここにある。堺の解体なんて屈辱以外の何物でもない」。
「大阪」という看板には抵抗感も抱く。堺の商人は豊臣秀吉によって大阪に強制移住させられた。明治維新後の廃藩置県で一度は「堺県」となったが、後に大阪府に合併された。
ジャーナリストの横田一氏は「維新に圧倒的な支持があった昨年までなら、都構想や橋下氏の考えに理解を示してくれる人も多かったろうが、今は逆風が吹いている」とみる。市議会でも維新は少数野党だ。「市長選に勝ったとしても、都構想実現までのハードルは高い。負けた場合のダメージが大きいのに比べ、得られるものはそれほど多くない」と分析する。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「維新の関係者はすでに『堺市長選で勝てるとは思っていない』と言っている。(都構想の是非を問う来秋の)大阪市の住民投票に向けて、何が何でも強引に進めていこうとするのではないか」と話す。
鈴木氏は「いま一度立ち止まる時期に来ている」と提言する。
「今の維新は、国政と地方政治が完全に分離していて、いびつな形になっている。地域主権や改革を訴えて出てきた、地域政党としての原点に立ち返るよい機会。むしろ、そこにいったん回帰できるかどうかが問われている」
<デスクメモ> 室町時代、宣教師は、濠(ごう)に囲まれた堺のまちを「東洋のベニスのようだ」と評した。それぐらい、豊かで美しかったらしい。織田信長、豊臣秀吉に相次いで圧力をかけられ、自治は崩壊した。それだけ、堺商人の経済力がほしかったのだろう。以来、恨みは続いているのかもしれない。 (国)
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