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2013年09月06日(金)長谷川 幸洋
日銀が景気判断を上方修正した。
5日に発表した「当面の金融政策運営について」(PDFです)という文書で、景気は「緩やかに回復している」とはっきり書いた。前月は「景気は緩やかに回復しつつある」だった。
どこがどう違うのかといえば、ニュアンスの差みたいなものだが、回復軌道に「もう乗った」というのと「いま乗りつつある」とでは、前者のほうが強い。
8月に判断を据え置いただけで、これで1月以来、ほぼ連続して上方修正を続けている。
■景気が良くなっているから増税、は正しいのか
となると、直ちに思い浮かぶのは、では消費税引き上げがどうなるか、だ。
「景気が良くなっているのはたしかだから、予定通り上げるべきだ」という増税派の声が一段と勢いを増すのは、容易に予想できる。
それは正しいのか。
ここは根本に立ち戻って考えなければならない。私は「景気が回復している→だから消費税を上げるべきだ」ではなく「景気が回復している→だから増税せず、過熱するくらいまで待つべきだ」と考える。
まず、日銀の公表文をどう読むか。
日銀の文書を読むと「輸出は持ち直し傾向」「設備投資は企業収益が改善する中で持ち直しつつある」「公共投資は増加を続け」「住宅投資も持ち直しが明確」「個人消費は雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している」とある。
日銀は全体の基調判断で「緩やかに回復している」と言っているが、実は個別の需要項目を見ると、輸出も設備投資も住宅投資も「持ち直し」と表現している。個人消費については「底堅く推移」と一段と慎重である。
回復といっても、内実は「悪かった状態から少し改善した、ないし堅調になってきた」という程度なのだ。
新聞には「景気回復」という文字が踊っているが、実は「景気が良い」状態にはほど遠い。これが現状認識である。
そこで消費税だ。
政権内の増税派からは「消費税を上げても、景気を冷やさないように予算で大盤振る舞いする」という話が盛んに出ている。これは一見、もっともらしい。だが、ちょっと考えてみれば、財政政策として完全に倒錯している。
■増税派の景気認識には矛盾がある
景気が冷え込んでいるときに財政支出を拡大して、あるいは減税して刺激する。逆に景気が過熱しているときには、財政支出を減らすか増税して景気を冷やす、というのが景気調節機能としての財政政策の基本である。
にもかかわらず「増税しても、景気を冷やさないように財政支出をばらまく」のでは「右手で景気を冷やしつつ、左手で景気を刺激する」という話になってしまう。
いったい景気をどう認識していて、どうしたいのかはっきりしないどころか、そもそも矛盾しているのだ。
なぜかといえば、増税派にとっては、初めから景気を冷やしたいとか刺激したいという狙いはないからだ。そもそも景気は2の次、3の次の話であって、肝心なのは「とにかく増税を実現すること」、つまり増税そのものが目的になっている。
増税派はデフレ脱却などまったく視野に入らなかったときから一貫して、増税を目指していた。野田佳彦前政権で3党合意で増税を決めたとき、デフレ脱却の見通しがあったか。まったくない。それでも増税を決めた。それが「増税派にとって景気は2の次、3の次」の証拠である。
景気が悪かったら考え直すという景気条項を入れたのは、増税派が主張したからか。
まったく違う。増税に慎重な勢力が強硬に唱えたからだ。
こう書くと「いや、我々は財政再建が目的なのだ」という反論があるだろう。
本当にそうか、といえば、それもまた怪しい。いま増税をしゃにむに唱えている同じ顔ぶれが、同時に財政支出の拡大を目指している。増税分を公共事業などに使ってしまうので、これでは財政再建にはならない。単に政府のサイズを大きくするだけだ。
■増税派は増税そのものが目的になっている
では増税派にとって、なぜ増税そのものが目的になるのか。これが問題の核心である。
まず国会議員にとっては、増税して同時に財政支出を増やすなら、自分たちの出番が回ってくる。つまり地元に公共事業を持ってきやすくなる。
地元へのばらまきこそが自分たちの存在基盤、と信じている議員はいまも多い。
次にエコノミストや学者にとっても、増税賛成論さえ唱えていれば、自分たちの地位が脅かされることはない。エコノミストに給料を払ってくれる会社は銀行や証券会社、保険会社などだ。こうした金融機関にとって、財務省は国債取引や外為取引で最重要のお得意様である。
メディアの記者たちにとっても、財務省は最高の取材相手である。ここを敵に回したら、たちまち「おたくの〇〇さんとはお付き合いできないですね」などとデスクや部長に告げ口されてしまう。悪くすれば、財務省担当から外され、出世にも響く。
フリーランス記者なら、なおさらだ。財務省と仲良くしていれば、何かと情報をもらえるが、敵に回したら財務省はおろか霞が関全体から干されてしまう。それでは、とてもじゃないが食っていけない。もっと悪くすれば、税務調査までされかねない。だから、財務省の提灯持ちみたいな記事が氾濫するのだ。
では、私を含めて増税反対派は何を考えているか。
それは最初に戻って結局、日本の景気である。景気が本当に良くて過熱気味なら、私にも増税が選択肢に入ってくる。その前に、まずは財政支出の無駄を省くほうが先決であるが---。官民ファンドの乱立をみても、政府に無駄がないわけがない。
■景気がいいという経営者には1人も出会ったことがない
いま本当に景気がいいか。良くなっているのはたしかである。
だからといって、過熱するほど調子がいい、とはとても言えない。日銀が個別需要項目について言っている通り、せいぜい「持ち直している」という程度である。
実際に全国を回って、地方の企業経営者たちの声を聞いてみれば、すぐ分かる。私は月に何度も地方に出かけている。断言するが「景気がいいですね」などという経営者には、1人も出会ったことがない。それが現実だ。
そんな状態で増税するには気が早すぎる。
ここは「いつやるの」「今でしょ」じゃない。「しばらく待て」だ。
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