21. 2013年9月06日 10:36:44
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http://sun.ap.teacup.com/souun/11965.htmlこれが日本の新聞には決して取り上げられることのないアジアの実態だと理解してほしい。 「TPPは我々の国益ではない」 アンワール・イブラヒム 2013年8月12日 TPPはアジア太平洋地域の12か国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカ、ベトナムそして最後に日本)で交渉されている。 参加国のGDPを合計すれば2012年ベースで33兆ドルに達する。 貿易と海外からの直接投資に依存し、狭隘な国内市場、TPP参加12か国GDPの1%に満たぬ経済規模から考えれば、当初TPPは、2020年までに発展した高所得国家になるというマレーシアの大望に、神から与えられた近道に思えたかも知れない。 しかしながら、TPPは旧来のFTAとは本質的に異なる。 その目的は、貿易と投資を自由化し、新旧貿易問題だけでなく21世紀型の新しい貿易への挑戦を表現する次世代の地域協定を目指すものである。 それは物品サービスへの市場アクセスすなわち関税の撤廃と非関税障壁の除去だけを取り扱うのではなく、我々の国益と主権を揺るがしかねない法制度・裁判制度、経済構造や様々な国内制度への直接的な影響を与える横断的な“水平方向の問題”を内包している。 現時点で、アメリカはTPP参加国のうち、6か国すなわち、オーストラリア、カナダ、チリ、メキシコ、ペルーそしてシンガポールとすでにFTAを締結している。 このTPPはWTOプラスの問題を包含するために、従来の物品・サービス貿易の範疇を飛越えるものである。 オバマ政権の主要な貿易政策でもあり、TPP自体アメリカの典型的なFTA協約テンプレートに依存しほとんどすべての主要提案を、アメリカ交渉官が取り仕切っていることは疑いの余地がない。 通常のFTAが最大でも10章程度を扱うのに対し、TPPは29章もの章を取扱い、主導者のアメリカがその全面自由市場経済、自由放任的アプローチ、規制緩和と小さい政府というようなアメリカブランドの経済モデルを強要するものである。 中国、韓国、台湾そしてインドネシアという急激に膨張する経済圏を欠いたままでのTPPは、このアメリカの経済、ビジネスそして地政的なアメリカの利権を推進する現代版アメリカ覇権理論以上の何物でもない。 いかなる交渉においても、ある程度の交渉の秘密は理解できないわけではない。 しかし、このTPPの秘密交渉と隠密性は我々を極度に疑心暗鬼にそして当惑させるものだ。 このTPP交渉なるものが、秘密のとばりに囲まれているために、TPPの29章の内容としてこれまで我々が知りえたものは、参加国交渉担当者からリークされたものか、あるいは現行のアメリカFTAの分析から推察されたものということになる。 実際、このような国際条約の交渉プロトコールは、広く認められた国際基準とりわけその公開性・透明性に基づいていなければならないし(WTOの交渉された合意協定書は一般に公開されている)また、各国の立法府によって批准された民主主義的原則に基づいていなければならない。 現在、我々はすでに参加各国の発展段階および競争力に応じた平等な市場アクセスを提供するTPPの12章のうち9章相当分に関して、アセアンおよび我々の二国間協定を通して、広範なFTAの枠組みを成立させている。 それは自由貿易(FreeTrade)であると同時に公正な貿易(FairTrade)なのだ。 (巨大な多国籍企業を利すだけのようなTPPとは違って、それぞれの国の置かれている状態に対して公正(fair)なのだ)実際、マレーシアは二つの大型自由貿易協定を交渉中だ。 それはRCEPであり、EUとのFTAである。 マレーシアは世界で第17位の貿易国家であり、人民正義党(Keadilan)はいかなる自由貿易原則にも、公正貿易原則にも支持を表明する。 しかしながら、我々はTPPが本当に長期的に便益が費用を凌駕するか確信を持てないがゆえに、あえてTPPに対する支持を留保するものである。 マレーシア政府による包括的費用便益分析の国民への全面開示を欠いたまま、「TPPの下ではマレーシアが最大の勝者であり、これにより輸出は417億RM,2025年までに年間263億RMのGNIを獲得する」とするワシントンにあるピーターソン(元商務長官?)国際経済研究所が2012年に実施した調査の結果を飲まざるをえないのか?一例をあげれば、TPPによってマレーシアの企業は、理論上は、年間5000億ドルのアメリカ政府調達市場にアクセスすることが可能だ。 しかし現実にはそのかなりの部分は防衛市場であり、それはTPPから除外されるだけでなく、50州すべてが、各自の調達方針により決定し、また各州にはアメリカのFTAを遵守する義務はないのだ。 アメリカは現在、TPPだけでなく、まさにEUとの間でTTIP(環大西洋貿易・投資協定)を結ぼうとしている。 アメリカはこの二つの協定を交渉するに際し、まったく異なったアプローチをとっていることを指摘しないわけにはいかない。 欧州委員会は、EUのために交渉し、EU加盟国および欧州議会に定期的に最新状況報告をすると公式表明している。 EUはこのTTIP交渉で何が行われているかについて、国民、メディア、そしてすべての関係者(stakeholder)に最大限の情報提供を行うことを約束している。 例えば、交渉のさまざまな局面におけるEUの基本ポジションペーパー(項目別政策書)を国民に開示し、全分野の交渉官のリストを提示するなど、いままで前例のないほど情報公開に努めている。 たしかに太平洋と大西洋との違いこそあれ、包括的かつ中立公正な費用便益分析が行われ、その結果が国民に広く伝えられ、TPPの主要問題点がすべての関係者(stakeholder)とりわけ国会議員に認知され、そして最終的な協定(協定全文が開示され)が必ず国会において批准されることなくしては、人民正義党はこのTPPを拒否するものである。 いかなるFTAはそれが二国間であれ、多国間であれ、相互の利益と参加国の経済発展段階、社会ニーズそして競争力に基づいたものでなければならない。 持続可能な経済発展、活発なビジネス、国民の繁栄のためのエコシステムの普及のために革新、創造性、高付加価値追求を前提とする包括的な改革計画を推進することに異論はないが、マレーシアの経済自由化や市場開放はあくまで我々のペースでまた我々のニーズにしたがって行われるべきだと人民正義党は考える。 58もの交渉において超えることのできない一線、レッドラインによって、2006年にスタートしたマレイシア/アメリカFTA交渉は2009年に中断した。 そのFTA交渉と今回TPPのテンプレートとはあまり差がないことを考えれば、これらの58ものレッドラインが4年のうちに突然消滅したとはとても信じることができない。 国民の中における主要な恐れや心配を考慮すれば、残されたTPP交渉のラウンドにおいて、我が国の交渉官が以下のテーマにおいて、いかに明確なレッドラインを押し通すのが困難で対応に苦慮する問題であっても、我々の権利と特権を守り通すことを人民正義党は求めるものである。 1. 以下の品目に物品貿易関税撤廃の例外を求める。 米およびその他の食糧産品、たばこ葉、アルコール、自動車および特定地域に影響のある他のセンシティブな工業製品。 地域における諸産品の加工、関連工業製品や下流部門での産業活動を推進するための輸出税に対する制限撤廃。 繊維産業におけるYarn Forward Rule(アメリカ製糸使用など:訳注)の適用禁止。 衛生および植物検疫(SPS)やTBTをマレーシアのハラル証明を自由化したり、その基準を下げさしたりすることの禁止。 2. サービス部門の自由化はポジティブリスト方式で行い、事前にネガティブリストに登録されていない場合は自由化対象と見なすネガティブ方式は採用しないこと。 3. 投資関連の問題たとえばISDS方式はTPP参加国の投資家からマレーシア政府が訴訟され賠償請求にさらされるようなメカニズムを採用しない。 WTOルールを越えた制限を設けない。 4. 知的財産権については、WTOのルールであるTRIPSを越えた要求をしない。 パテントや著作権の期間延長はしない。 パテントと医薬品制度との間にあるデータの独占排除、パテントの応用禁止、パテントのpre-grant opposition禁止措置 など、特に、一般国民が必要な治療、医療および医薬品を入手できるようにする。 5. 国営企業、政府管掌企業および中小企業が国家間紛争調停の結果、競争を強いられないようにする。 6. マレーシアの金融サービス自由化の強制やその金融自由化度を拘束することの排除。 金融セクターを規制する際の政策的融通性への制限排除。 マレーシアのネガラ銀行の指令や金融セクター安定のためのセーフガードを実施するさいのファンドの流動性制限や規制強化に対する拘束の排除。 7. 食品安全、安全表示、特にマレーシアの食品安全政策への干渉排除、特にGMOやGM食品の安全表示の変更要求排除。 8. 地域の慣習的権限および環境問題9. 29章のすべてに有効な例外規定を設ける。 これまでのマレーシアの国際交渉や国際訴訟におけるはかばかしくない経歴を見れば、MITIからほかの省庁まで、我々の未来をこれらの交渉官の手にゆだねるのはあまりにもリスクが大きいと言わざるを得ない。 最近の失敗事例をみるだけでも、我々の原則と立場を勝ち取るために彼らが十分な仕事をしてくれるとは期待できない。 このように、TPPはマレーシア全体を十分な便益なしに、マレーシアの状況を悪化させるとしか思えない。 「正義」は以下を実行する以前に、TPP調印をなぜ急ぐのかその理由を見つけることはできない。 (a)関税および非関税障壁の除去、サービス部門の自由化や政策空間における主権の損失、憲法改正、政府調達、ISDの影響、知的財産権などを含む様々な問題の影響に対し、独立・包括・詳細の費用便益分析を行い結果を国民に開示すること(b)すべての関係者(stakeholder)による円卓会議や公開フォーラム(c)国会における詳細分析と議論国会におけるTPP特別委員会開催でもよいが、「正義」は多党参加の国会集会(Parliamentary Caucus)の開催を求める。 ここには消費者団体・ビジネス/産業業界団体・NGOや政府のTPPをめぐる決定を検証しようとする市民団体などを含むすべての関係者の便益を守る目的のためにBarisan National党およびPakatan Rakyat党の所属議員が参加する。 我々はこの国会集会(Parliamentary Caucus)がTPPに関する閣僚の決定に適切な影響力を持つ強力な圧力団体となると期待する。 「正義」は2015年までに発効するアセアン経済共同体(AEC)を通して、地域での努力を強化することに傾注することこそマレーシアにとって適正であり理想的であると考える。 より強力な貿易、投資そして経済ブロック(AEC)において、マレーシアはやTPPのような多国間FTAで個別の交渉を試みるよりも、先進諸国に対してより選択的に接近し交渉することにおいてより有利な立場に立てると考える。 さらに、我々のアセアンならびに、シンガポールと日本に次ぐ貿易相手国である中国の入るBRIC諸国における地政学的な姿勢を維持することによって、世界経済の40%そして世界人口の60%の構成する市場に我々はすでに存在しているのだ。 マレーシアにとっての真の挑戦は、長年の与党BNの経済運営の失敗、悪質な教育、訓練と人的資本の発展政策欠如、国内諸制度の崩壊などによって痛めつけられてきた社会保障ネットワークを適正に再構築し、我々の真の競争力を高めるところにあるのだ。 (仮訳 首藤)
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