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2013年9月 3日
政府は9月3日、原子力災害対策本部と原子力防災会議の合同会議を首相官邸で開き、東京電力福島第1原発汚染水漏れの総合対策を決定した。
総額約500億円の対策費が計上された。
2013年度の予備費から210億円を拠出して原子炉周辺への地下水流入を防ぐ凍土壁設置を促進する。
突然の決定に強く影響しているのがIOC総会である。
9月7日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれるIOC総会で、2020年のオリンピック開催地が決定される。
世界の世論は、原発事故から2年半も経過した時点で、高濃度放射能汚染水を海洋に垂れ流している日本の現状を厳しく見つめている。
安倍晋三氏は、オリンピックを日本に招致するため、突如、汚染水処理に国費を投入することを決めたのだと思われる。
東電が行なってきた汚染水対策に関して、毎日新聞は次の事実を伝えている。記事より主要部分を転載する。
毎日新聞 2013年08月25日 東京朝刊
福島第1原発:汚染水流出
使い回しタンクから漏出
「金かけず作った」 協力会社会長が証言
地盤沈下が原因で移設されていたことが明らかになった東京電力福島第1原発の汚染水タンク。廃炉作業に参加している東電協力会社(福島県いわき市)の会長(72)は毎日新聞の取材に「タンクは工期が短く、金もなるべくかけずに作った。長期間耐えられる構造ではない」と証言した。
同社は事故前から原発プラントの設計・保守などを東電から請け負い、同原発事故の復旧作業では汚染水を浄化して放射性物質を取り除く業務に携わっている。このため汚染水を貯留しているタンクを設置したゼネコンともやり取りがあり、内部事情に詳しい。
会長が東電幹部やゼネコン関係者から聞いた話では、今回水漏れを起こしたタンクは、設置工事の期間が短かった上、東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた。タンクは組み立て式で、猛暑によってボルトや水漏れを防ぐパッキンの劣化が、通常より早まる可能性も指摘されていたという。
会長は「野ざらしで太陽光線が当たり、中の汚染水の温度は気温より高いはず。構造を考えれば水漏れは驚くことではなく、現場の感覚では織り込み済みの事態だ。現場の東電の技術スタッフも心配はしていた」と明かす。」汚染水から放射性物質を取り除く「多核種除去装置(アルプス)」も拡充する。
放射能汚染水対策がおざなりであった最大の理由を示す象徴的な発言が示されている。
「東電の財務事情から安上がりにすることが求められていた。」
どういうことか。
東電は原発事故の損害賠償責任を負っている。
ところが、東電の純資産額は損害賠償債務よりもはるかに小さい。
東電の財務能力では損害賠償責任を果たせないのだ。
つまり、損害賠償債務を考慮すると、東電は実質破たん状態にあるということになる。
したがって、東電を法的整理するのが資本主義社会のルールである。
法的整理するケースとしないケースで、どこにどのような違いが出るのか。
最大の差は、経営者責任、株主責任、債権者責任が問われるのかどうかということである。
法的整理する場合、経営者、株主、債権者が、法の規定に沿って、適正な責任を負わされる。
責任を取るべき者が適正に責任を問われることになるわけだ。
東電を破綻処理すると、原発事故の損害賠償に支障が生じるのではないかと危惧する人がいるかも知れない。
その心配を除去する定めが法律に存在する。
原賠法第16条に、必要があれば国が援助することが出来るとの規定が置かれているのだ。
東電を破綻処理しても、損害賠償については、国が責任をもって対応すれば問題は生じない。
原発事故の処理、損害賠償を行うには、最終的に国費投入を避けられない。国費投入というのは、国民が費用負担をするということだ。
汚染水の問題を含め、損害賠償を適正に行うことは必要不可欠であり、日本国民はその費用を負担することに同意するだろう。
しかし、このときに、極めて重大な問題が表面化する。
国民が費用負担する前に、責任ある当事者が適正に責任を負うのが筋ではないかという問題だ。
多くの国民は、原発事故処理、損害賠償実行のために国民が費用を負担することをやむを得ないことだと考える。
しかし、責任を負う当事者である、東電の経営者、株主、債権者の責任がまったく問われないまま、国民に負担が押し付けられるのは、筋違いであると考える。
多くの国民は、この事実に気付いていない。
事故発生の責任当事者である、経営者、株主、債権者の責任は、問われないまま、放置されているのである。
この問題を放置したまま、さらに500億円もの国費=国民負担を注ぎ込むことは、誰がどう考えても不当なものである。
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