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8月31日 東京新聞「こちら特報部」 :「日々担々」資料ブログ
99兆2000億円−。各省庁による2014年度の概算要求の総額は、過去最大に膨れ上がった。まるで、増税を先取りしたかのようで、1割削減を掲げた公共事業も、抜け道によって逆に2割近く増えている。当初予算に比べて要求額が多いのは毎年のこととはいえ、今年は少々、前のめりすぎないか。 (小倉貞俊、榊原崇仁)
「消費税率の引き上げは、景気がもう少しよくなってからにした方がよい。無駄な公共事業はやめてほしい」
東京・銀座で、美容師の木下宗一朗さん(20)はこう話した。
「生活に必要なインフラ整備はしてもよいが、無駄はトコトンなくすべきです」
JR新橋駅前を歩いていた千葉県市川市の村田倫子さん(66)は消費税の増税を容認するものの、公共事業の拡大には眉をひそめる。
増税には賛否がある。それなのに、三十日に締め切られた各省庁の概算要求は増税ありきの内容だった。概算要求とは、各省庁が翌年度に実施したい政策を示し、見積もった経費や人件費の予算を財務省に要求することを指す。財務省が最終的に額を減らすとはいえ、今年は各省庁があれもこれもと盛り込んだ。
消費増税による増収の見込みは四兆円程度で、国内の財政事情を劇的に好転させるには足りない。国と地方の赤字を二〇一三年度の三十四兆円から、一五年度には十七兆円に減らし、二〇年度までに黒字化する中期財政計画の達成には歳出削減が不可欠となる。
政府も歳出削減の必要性を認識している。例年、財政状況を踏まえて、各省庁にどのように概算要求をするか基準を示すが、今回は公共事業などの「裁量的経費」を本年度当初予算から10%、計一兆三千億円削って要求するように明示した。
基準に従えば要求額は減るはずなのに、なぜか、要求額が肥大化している。カラクリが、「特別枠」という抜け道だ。
今回は「新しい日本のための優先課題推進枠」という特別枠が設けられ、防災や成長など幅広い分野で三兆五千億円まで要求できるようにした。つまり、裁量的経費は差し引きで二兆二千億円を増額できる仕組みだ。
額は10%を削減した裁量的経費のうちの30%分。数字に根拠があるわけではなく、財務省主計局総務課の担当者は「各省庁にのびのびと要求してもらえるだけの幅を設定した」と説明した。
そのほか、高齢化によって年金や医療費が約一兆千三百億円増額し、厚生労働省の要求は約三十兆五千六百億円(3・8%増)。国の借金返済などに充てる国債費を過去最大の約二十五兆二千八百億円(13・7%増)とし、概算要求総額は膨らんだ。
増税時の影響を議論する政府の集中点検会合で「増税分を将来不安の解消に充てることを条件に増税に賛成」した全国消費生活相談員協会の吉川万里子理事長は「各省庁が消費税の増収を見越し、予算確保に前がかりになっている。懸念していたことがもう起きている。残念でならない」。
公共事業費の増額要求が著しいのが国土交通省だ。概算要求全体のうち約九割を占める公共事業関連費は本年度当初予算比16・6%増の約五兆千九百八十五億円。10%減額させるはずの公共事業が逆に増えたのは、特別枠を最大限に活用したからにほかならない。
国交省の担当者は「全て大切な事業。整備をしたことによって将来的な税収増につながる期待もある。予算枠がある以上、上限まで要求するのは自然なことだ」と説明。財政再建は念頭にないかのようだ。
項目ごとにみると、道路整備が一兆二千二十六億円(17%増)。そのうちの「災害で不通となった場合の代替ルートの確保」「効率的な物流ネットワークの強化」などでは特別枠の二千七百二十二億円を使った。市町村の防災対策などを支援する「防災・安全交付金」は約一兆二千億円(17%増)を計上し、特別枠分は約二千八百億円。
北陸新幹線など整備新幹線五区間の整備費も増額して八百二十二億円(16・5%増)。整備新幹線の整備費は二〇〇五年度以降、当初予算額を七百六億円で固定してきたが、増やせるものは増やすと、露骨に特別枠の百十六億円を活用した。
十年以上、削減傾向にあった公共事業費は、安倍政権発足後の本年度当初予算で既に増加に転じている。安倍政権は「国土強靱(きょうじん)化」政策を掲げており、増額の勢いが止まらない。
法政大学の五十嵐敬喜教授(公共事業論)は「国民に負担を強いる消費税増税が議論されているのに、予算を目いっぱい獲得し、何としても公共事業を拡大するという国交省の体質を浮き彫りにした」と指摘する。
実は、消費増税を盛り込んだ社会保障と税の一体改革関連法が昨年成立する際、「財政による機動的対応が可能となる中、成長戦略、事前防災、減災などに資金を重点配分する」という付則が加えられた。五十嵐氏は「付則によって、増税分が公共事業に回される恐れもある。土建国家を復活させる前に、政府はすべての事業をきちんと国民に説明する必要がある」と訴える。
公共事業では、もう一つ気になる省がある。農林水産省だ。
概算要求は二兆六千九十三億円(13・6%増)で、そのうちの約三割を占める公共事業費は七千七百七億円(18・5%増)。農林水産業の基盤整備を「成長戦略の一環」と位置付け、農業用水や治山事業などで千二百一億円を増額した。
公共事業以外でも特別枠をできる限り活用する。農地集約のために都道府県単位で新設する農地中間管理機構の費用は約九割が特別枠の九百二十億円。存続するか決定していない民主党政権が設けた戸別所得補償制度の費用も、本年度当初予算と同額の七千百八十六億円を計上した。
明治大の西川伸一教授(政治学)は「自民党の代名詞ともいえる対症療法にほかならない」とばっさり切り捨てる。
「開いた口がふさがりません。環太平洋連携協定(TPP)で利益が損なわれることが懸念される農林関係者に手厚くし、土建国家への逆戻り。政権交代を経験しても自民党は以前と何も変わっていない」
<デスクメモ> 以前、愛知県の職員が「公務員の最大の仕事は予算を取ることです」と言っていた。予算がなければ、仕事がなくなり、「お役御免」になるからだという。そこには、「市民のため」という意識は全くない。本当に増税しか手がないのか。無駄な事業が行われていないか。まだまだ、チェックが必要だ。 (文)
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