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2013/8/30 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
暮らしが成り立たない
消費税の税率を来年4月に上げるかどうかについて、有識者からの聞き取りが続いているようだ。総勢60人に聞くというから大がかりなセレモニーである。ただ、気になるのは、大半の有識者が賛成していること。
「毎年1%アップに」といったテクニカルな面からの反対や、「増税に伴う販売減少を補う策が必要」といった企業側の要望は出されている。だが、生活者の視点に立った反対意見は少ないように感じる。
もともと消費税は、直間比率の見直しを目的に生まれたものだ。経済状況によって変動しやすい所得税や法人税に頼るのではなく、間接税の割合を増やすことで税収を安定させる。そんな狙いから生まれたものだ。
そのため、消費税率を3%から5%に引き上げた1997年の前後に、政府は所得税と住民税の特別減税を実施している。96年は前年に続いて15%の定率減税をやっているし、98年は所得税3・8万円の定額減税などに踏み切った。
バブル崩壊で失速した景気を刺激する意味合いもあっただろうが、間接税を増やす代わりに直接税を減らし、国民生活への打撃を最小限に抑える工夫をしたのだ。
それなのに今回の税率アップでは、暮らしへの配慮が全然ない。増税で家計が回らなくなったとしても、我関せずという態度である。これでは国民生活は成り立たない。
政府は、「景気は順調に回復に向かっている」という認識らしい。「GDPは2%を超えるプラス成長だ」「失業率も減った」「アベノミクスの効果が出ている」などとアピールしている。とんでもない勘違いだ。
先週の当欄でも指摘したが、いくらGDPが伸びても、国民生活に係る数字はメタメタである。常用雇用者数や現金給与総額はマイナスだし、増えているのは非正規社員ばかり。それも給与水準が低いアルバイトやパートが中心だ。企業が儲けを出してGDPは増えていても、国民の暮らしはちっとも上向かない。それが現実である。
安倍政権は、企業の負担軽減には熱心だ。法人税減税や設備投資減税を消費増税とセットで実施する考えもあるらしい。だが、そもそも7割以上の企業が法人税を払っていないのだ。減税に意味はないだろう。
聞くべきは有識者の意見ではない。声を上げられない人たちの声だ。
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