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「差別許さない」 来月「東京大行進」計画 ワシントン行進から50年
2013/8/27 東京新聞[こちら特報部]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013082702000136.html
「私には夢がある」−。米国の公民権運動指導者マーチン・ルーサー・キング牧師の有名な演説を生んだ「ワシントン大行進」から28日で50年を迎える。くしくも日本では今年、在日コリアンを排斥するヘイトスピーチ(憎悪表現)デモが社会問題化した。これに抗議する人たちは来月22日、「東京大行進」と銘打った差別撤廃デモを計画している。米国の経験から何を学ぶべきなのか。(佐藤圭)
「公民権運動は、法律に支えられた黒人差別体制を打破した。最後の一撃がワシントン大行進だった」
「アメリカ黒人の歴史」などの著書がある上杉忍・北海学園大教授(68)は、大行進の歴史的意義を強調する。
50年前の1963年8月28日、全米各地から集まった約25万人が首都ワシントンの街並みを埋めた。このうち白人は約6万人に及んだ。真夏の太陽が照りつける中、多くの黒人参加者は、教会へ行く時と同じように正装で現れた。
公民権運動が、キリスト教的理想と「自由と平等」という米国の根本原理にかなったものであることを誇示するためだった。
大行進直前の6月11日、ケネディ大統領は、人種や肌の色、性別、出身地による差別を禁止し、差別差し止め命令などの強力な権限を連邦政府に与える公民権法を議会に提出する方針を発表した。リンカーン大統領の「奴隷解放宣言」から100年を経ても、奴隷制の名残をとどめる南部各州では人種隔離法の下、公共の場で白人と黒人を分離する差別政策が横行していた。
当然、南部白人たちは猛反発した。「キング牧師ら黒人指導者たちは、公民権法が骨抜きになるのを恐れた。ケネディ大統領を後押しするために企画されたのが大行進だった」(上杉教授)
キング牧師らは6月22日、ケネディ大統領とホワイトハウスで会談し、大行進の計画を伝えた。首都での騒動を心配したケネディ大統領は迷惑そうなそぶりを見せたが、最後は「秩序立って行われるなら」と支持した。
◆キング師の夢 人種的調和を
実際、大行進は暴動を起こさず、逮捕者を一人も出さないことに腐心した。動員された警察官や兵士は約1万人。緊急医療やトイレ、飲み水などが周到に準備されるとともに、酒の販売は禁止された。プラカードは「今すぐ投票権を」など決められたものしか認めなかった。
行進の集結場所であるリンカーン記念堂前で演説した黒人指導者たちは、連邦政府が南部の人種差別を長年放置してきたことをなじったり、戦闘的運動をあおったりはしなかった。最後に壇上に上がったキング牧師は「私には夢がある。いつの日か、かつての奴隷の息子と奴隷主の息子が、同じテーブルに座れる日を」の名文句で、白人との連帯を呼び掛けた。
大行進から3カ月後、ケネディ大統領はテキサス州ダラスで暗殺されたが、公民権法は翌64年6月、ジョンソン大統領の下で辛くも成立した。
上杉教授は「大行進の成功は、米国社会が人種差別問題に真剣に取り組んでいる証拠として世界に広く宣伝された。人種的調和というアメリカン・ドリームを共有した国民的お祭りだった」と指摘する。
◆ワシントン大行進から50年
「50年前の8月、ワシントンでは人種差別撤廃を求める人々が大行進を行いました。今年は私たちが立ち上がります」
「差別撤廃 東京大行進」のチラシの文句だ。実行委員を務める会社員の木野寿紀さん(31)は「ワシントン大行進を再現してみたい。規模は比べものにならないが、1000人は集めたい」と力を込める。
トップ集団の参加者はワシントン大行進と同じく教会へ行くように、男性はブラックスーツ、女性もフォーマルな装いで統一する。木野さん率いるマーチング・バンド隊は、公民権運動を象徴する歌「ウィ・シャル・オーバーカム(勝利をわれらに)」を演奏する。
木野さんらが東京大行進を企画したきっかけは、東京・新大久保のコリアンタウンなどで「韓国人を殺せ」と連呼するヘイトスピーチデモへの抗議活動だった。木野さんがツイッターで呼び掛けた「プラカード隊」は今年2月以降、デモ隊の横で「仲良くしようぜ」「日本の恥」と書かれたプラカードを掲げ続けた。
現在、ヘイトスピーチデモは抗議活動に阻まれ、新大久保では6月30日を最後に一度も行われていない。しかし、いつまた再開されるか分からない。欧州などでは差別を助長する言動は犯罪だが、日本ではヘイトスピーチそのものを罰する法律がないからだ。米国にはヘイトスピーチ規制はないものの、差別に基づく犯罪を重罰化するヘイトクライム(憎悪犯罪)法が整備されている。
東京大行進では、日本も加盟する国連人種差別撤廃条約の「誠実な履行」を政府に訴える。日本は、ヘイトスピーチの法規制に関する条項を留保している。「処罰立法措置を検討しなければならないほどの差別扇動は今の日本にはない」(外務省)がその理由だ。
ワシントン大行進は、ケネディ大統領と歩調を合わせていた。一方、東京大行進は、外国人を差別する政策をとり続ける自民党政権と対峙(たいじ)しなければならない。
木野さんは「日本政府はヘイトスピーチデモを差別事件と認識していない。差別と闘ってきた米国よりも、見て見ぬふりをしてきた日本の方がひどいのではないか」と問いかける。
米国では今なお、人種問題が暗い影を落としている。先月、南部フロリダ州で黒人少年を射殺した白人男性に無罪評決が言い渡されると、全米各地で抗議デモが起きた。キング牧師の「夢」は半ばだ。
28日は、米国初の黒人大統領であるオバマ大統領がリンカーン記念堂前で演説する。上杉教授は「公民権運動によって法的差別はなくなったが、経済的差別は残った。白人や黒人中産階級と、大部分の黒人貧困層との格差は広がっている。オバマ大統領は演説で、経済的な不平等問題を取り上げるのではないか」とみる。
だからといってワシントン大行進の意義が薄れるわけではない。「少なくともワシントン大行進を機に、白人が公然と人種差別を語れなくなった」と上杉教授。日本でヘイトスピーチに反対する人たちが、自分たちのデモをワシントン大行進に重ね合わせる意味も「差別反対の理念の共有にある」と説く。
「日本は、政治家がヘイトスピーチと取られかねない発言を平気でしているような国だ。東京大行進が『日本社会では差別は許されない』と国内外にアピールする場になれば、ワシントン大行進とつながることになる」
[デスクメモ]
6年前、KKKのメンバーだという中年男性と話をした。白人の優越性を説く男性の笑顔に恐怖以上に、やりきれなさを覚えた。「昔を懐かしんでいる時ではない。まだ旅の途中なのだ」─。ワシントンでの50年記念式典でキング牧師の長男キング3世(55)はこう演説した。父親の「夢」はなお遠い。(栗)
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