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参院選が終わり、今秋に行われる来年4月からの消費増税判断へ向けて財務省が活動を再開した。
TVのニュースショーには、慎重を期し以前と異なりキャスターの辛坊次郎氏やみのもんた氏に一歩引かせる代わりに、大和総研の熊谷亮丸氏や慶応大学の小幡績氏ら財務省親派の証券会社系のエコノミストや経済学者を動員して、消費増税の必要性を語らせ増税既定事実化を図っている。
出身会社である住友化学が輸出戻し税により消費増税が法人税減税とバーターでプラスにこそなれマイナスにならない米倉経団連会長、弟の公金横領疑惑が影響し選挙公約と180度反対の消費増税を「国際公約」せざるを得なくなった野田前首相を始め、似たような事情と抱えるか定見のない与野党議員の過半、記者クラブ制度と放送電波割当制度、新聞の再販価格維持制度の既得権維持の為に霞が関官僚機構と一心同体のマスコミと電波芸者、米国債応札に日本の消費税を原資にしたい米国政府とその意を受けた外資系金融機関、財務省や日銀が外国為替取引等の顧客である日本の金融機関、東大法学部を頂点とする学際ピラミッドが財務省主計局を頂点とする官民ピラミッドと重なり出世の為に逆らえない経済学者等が増税翼賛会を構成している事は、インターネットの普及により以前よりは知られるようになってきた。
◆国家財政と会社経営◆
日本の財政は逼迫し、国債発行残高は遂に1000億円を超えた。
積極財政派からは、国家資産を差し引けば実質は巨額とは言えないとか、国債の殆どが日本人と日本法人の保有のため実質的な借金でないとかの楽観意見もあるが、永遠に借金を増やし続ける訳にもいかず、財政規律が必要な事は間違いない。
財務省主計局とそのファミリーは、消費税増税が国際公約であり、それを先送りにすれば国債の信用が失われ、売り浴びせられ金利が上昇するため、増税不可避を主張する。
それには賛否両論があるが、国際公約云々以前に、増税によって日本の実体経済がどういう影響を受けるのかが遥かに重要であり、それ基づき意思決定をし、対応策を含めて覚悟を持って国際社会へ説明すべきであり、議論の順序が逆である。
しかし、現在の日本はアベノミクス第一の矢である黒田日銀による異次元の金融緩和をもってしてもデフレ克服が未だ為されておらず、実質経済も安定した成長を実現していない。
国家経営は、会社の経営と根本的には変わらない。
国家財政も、会社の財務状況と根本的に変わらない。
正確ではないが非常に単純化して言えば、日本中の企業の利益を集約して、日本の経済が成り立っている。
日本経済は今、会社に例えるなら、売り上げが落ち赤字が嵩み、資金繰りの為に借入を増やし続けている状況にありこのまま行けば倒産する。
このような経営状況で会社の社長の取るべき事は、(1)賃金カットを含む冗費削減と不採算事業からの撤退、(2)死に物狂いの営業努力と工夫、(3)新規分野への研究開発投資の3つである。
これ無くして再建した企業の事例を、筆者はこれまで聞かない。
然るに財務省主計局は、政権を手玉にとり、危機に陥った企業が採るべき企業努力を十分に行わず、企業に於ける安易な値上げに相当する消費税増税を図らせようとしている。
危機に陥った企業が同じ事をすれば、顧客が離れ間違いなく倒産する。
企業が値上げするのは、企業努力により売上が伸び、利益が上がり、顧客に新しく十分な付加価値を提供した時以外にない。
唯一国家と企業の違いがあるとすれば、国家が公共サービスに於ける独占企業である事だ。
独占企業であるから、顧客は離れようがなく、従って値上げ(増税)をしても売り上げ(税収)は落ちないとも言える。
局所的に観ればそれは正しいが、大局的に経済全体を観れば、財布が軽くなった消費者は買い控え(実質GDPの下落)で対応するだろう。
◆アベノミクス成長戦略の不毛◆
では、政府は企業努力に相当するいかなる努力をすべきか。
企業に於ける「(1)賃金カットを含む冗費削減と不採算事業からの撤退」は、公務員賃金カット、天下り特殊法人の廃止、精査した上での不要な公共サービス撤廃である。
「(2)死に物狂いの営業努力と工夫」及び「(3)新規分野への研究開発投資」は、成長戦略に他ならない。
成長戦略は、大きく(1)政府の関与を減らす規制緩和と(2)逆に特定分野への関与を高める政府ターゲティングポリシーに別れる。
しかし、アベノミクス第3の矢である成長戦略は、何も具体化しておらず色々な思惑が渦巻いている。
現在政府の経済財政諮問会議と規制改革会議の中には、竹中平蔵氏の様な規制緩和派と藤井聡氏のようなターゲティングポリシー派が同居して、対立牽制し合いながら噛み合わない議論をしている状態だ。
しかし、お互いのレッテル貼りに終始した議論は意味がない。
筆者は、全体としては規制緩和に賛成だが、規制緩和に良いものと悪いものがある。
例えば、小さい事例だが竹中氏が小泉政権中手掛けたタクシー事業の規制緩和は、仙台駅前に空車タクシーを溢れさせたタクシードライバーを食えない職業にした。(因みにニューヨーク市ではタクシー営業許可の総数を絞る代わりに自由に売買賃貸させて自由競争と秩序を両立させている)
竹中氏の規制改革には、規制改革教に凝り固まったこう言った見通しが甘いものや、米国の代理人として日本の国益を損ね兼ねないものが含まれており、今回安倍政権に於いても十分な監視が必要だ。
一方で、筆者は、高速道路や新幹線、リニア新幹線等の交通・産業インフラ系の公共事業、新エネルギー、バイオ、航空・宇宙、防衛、人工知能等の新産業分野への基盤整備投資について、出資を含め政府が後押しするターゲティングポリシーは日本が国際経済競争で勝ち抜いて行く為にも不可欠であると考えるが、その判断をどのような仕組み・プロセスで行うのかが詰められていない。
これについて、民間の目利き能力と国家の推進意思を併せ持つ官民ファンド設立は答えの1つではあるが、現在の政府の野放し状態では乱立を招き、かつて第三セクターのような責任主体の曖昧さ等により、特定企業に不透明な発注が行われ使い物にならない代物だけが残り、官僚の天下りと資金プールの器と化す。
事業1本1本の国会報告義務、責任体制の明確化、一貫した監視体制が不可欠だろう。
このように、今安倍政権が行うべきは、消費税増税議論に現を抜かし時間を空費する事ではなく、増税凍結を粛々と決定し、アベノミクスの第3の矢を具体化し実際に使い物になるように仕上げ実行する事である。
散々に財務省主計局と東大法学部について皮肉交じりの事を書いてきたが、彼らは元々国家有為の存在である。
しかし財務経理部が、狭い視野だけで会社を牛耳っていては行けない様に、彼らが取らぬ狸の目先のソロバン勘定と、受験戦争の延長の様な手柄争いを目的に国家を牛耳っていてはいけない。
その為に、真に国家に資する仕事、それに基づく評価と名誉、然るべき処遇を含んだ公務員改革も必要だろう。
●ご意見を踏まえ、以下にて随時推敲更新予定●
http://blog.livedoor.jp/ksato123/
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