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日本が初めて本格参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉がブルネイで始まり、きのうの閣僚会合で年内妥結に向け努力するとの共同声明をまとめた。
来年秋の中間選挙をにらみ、実績作りを急ぎたい米国のオバマ政権の意向を反映したとみられる。
しかし日本は、7月のマレーシア会合の後半から交渉に合流したばかりだ。年内決着にこだわるなら、十分な交渉時間を確保できないのは明らかだ。
日本は農産5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)の関税死守が前提だ。
輸出倍増計画を掲げ、市場開放への圧力を強める米国のペースにはまり、安易に妥協することは断じて認められない。
TPP交渉の冒頭に閣僚会合が開かれるのは異例だ。開催を求めたのは米国であり、通常、開催国が担う議長も米通商代表部(USTR)のフロマン代表が務めた。
声明には10月にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、TPP首脳会合を開くことを明記した。
同会合でおおまかな合意を目指すというが、関税や知的財産、環境など7分野の交渉が難航しており、マレーシアは国内企業の優遇見直しに反対を表明した。「年内妥結」は困難との見方が大勢だ。
問題は日本の対応だ。TPP会合前に来日したフロマン氏が「年内妥結」を繰り返し訴えたのに対し、甘利明TPP担当相らは協力を約束した。対米追従の姿勢で「強い交渉力」を発揮できるのか極めて疑問だ。
米国主導の交渉を警戒し、日本に米国への対抗軸を期待する東南アジアの参加国にも失望感が広がる。
特に先行きが懸念されるのは関税協議だ。他分野と異なり2国間交渉を積み上げていく方式を取るが、日本がメキシコなどに示した関税撤廃案は、農産5品目について態度を明らかにしない「未定」とした。
これでは関税撤廃を拒めたとしても、関税引き下げなどの一定の譲歩を迫られかねない。
甘利氏は閣僚会合で漁業補助金の削減反対を表明した。であるなら5品目の関税維持についても、明確に意思表示すべきだ。
TPP交渉は参加国が秘密保持契約を結んでいることを理由に、具体的な協議内容は定かでない。
自民党内にも「情報がない中では議論ができない」との不満が高まっている。産業や暮らしに大きな影響を与える協定を、政府の一部で決めていいはずがない。
閉鎖的で拙速な交渉で、日本の国益が守れるのか強く懸念される。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/487386.html
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