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2013年08月22日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」について、松江市教育委員会に続いて、鳥取市の市立図書館が、小・中学生の目に触れなくしていたという。「残虐なシーン」が、子どもにとって刺激的すぎるというのが理由だ。これは、極端に言えば、子ども向けの現代版「焚書坑儒」に等しい。
しかし、戦争、ましてや一般市民まで無差別に大量殺傷される原爆の実態を描けば、どんなシーンでも刺激的になるのは当たり前だ。この実際の姿を描かなければ、戦争、それも原爆の恐ろしさは、伝わってこない。伝わらなければ、戦争は、美化されたままになりかねない。これでは、むしろ、戦争賛美の教育効果しか生まないだろう。そうなると、大東亜戦争時のような「軍国少年・少女」を大量生産するだけとなる危険がある。
◆私自身の経験で言えば、広島平和記念資料館(「原爆資料館」)が開設された当初、小学校から貸し切りバスで見学に行った。被爆者が着ていて焼けてボロボロになった服や弁当箱、倒壊した家屋の残骸や瓦礫、石段に腰かけていたと思われる人が、原爆の熱線で一瞬のうちに消滅して、その人影だけが残っている石段など、残骸が無造作に並べられていた記憶がある。いまは、丸で商品のようにショーケースのなかに整然ときれいに並べられているので、科学的サンプルのようで、以前のような衝撃度は、希薄になっている。それでも、原爆を浴びたものばかりなので、初めて目撃する人の大半が、単に想像しているよりは、ショックを受けるに違いない。
また、周囲には、被爆者がたくさんいて、同級生のお母さんの顔が、ケロイドで引きつっていたのが、いまでも忘れられない。原爆による白血病で亡くなった佐々木禎子さんをモデルにした「原爆の子の像」が1958年5月5日に広島平和記念公園内完成したとき、やはりクラスみんなで見に行った。「原爆」をテーマにした映画もよく鑑賞した。
◆戦争に関する教材は、こればかりでなく、たくさん残っていた。米軍機B29の空襲により戦艦大和を建造した旧海軍工廠はじめ呉市のあらゆる軍事施設が猛爆撃を受けた跡があちこちに残っていた。防空壕やトーチカは、格好の遊び場でもあった。
呉造船所背後の山の中腹にある小学校の小さな図書室には、戦争中の日本軍の快進撃、目覚ましい活躍ぶりを記録した写真集があり、このなかに、陸軍の将校が、「スパイ」と認定した中国人に目隠しをして座らせ、軍刀で首を刎ね、試し斬りをしている写真もあった。斬首されたばかりの中国人の首が、まだ宙に浮いていたのを見たときは、大きなショックを受けた。それは、いまでも脳裏から離れない。
◆最近では、確かにどこの一般図書館にも、こういった記録写真集めを置いていない気がする。だれかが、子どもたちには、好ましくないと配慮したのかも知れない。
しかし、いまでも世界中で戦争や民族紛争、クーデターと反クーデターなどが多発している。アフガニスタン空爆、イラク戦争、マリ内戦、シリア内戦、エジプトの内乱など数え上げたらキリがない。だが、マスメディアの報道は、現場の残虐な映像や写真をほとんど放映、報道しない。お茶の間には、きつすぎるからである。
米軍は、ペルシア湾上の航空母艦から、戦闘機を発進、巡航ミサイルを発射、あるいは、無人機を飛ばして、その成果は、艦船の戦術室で映像を見ながら追っているので、文字通り「戦争ゲーム」を見ている感がある。攻撃される側では、どこから、だれが攻撃しているのかも知らず、突然、攻撃を受けて将兵の多くが戦死している。また、何の罪もない一般市民が、巻き添えにされて、死傷している。
◆こうなると、平和な日本では、戦争の悲惨さを知ることが難しい。いくら戦争は悪だ、悲惨だと言われても、子どもの多くは、何のことを言っているのか、実感が湧かないだろう。これに加えて、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」まで、「封印」してしまうと、逆に「戦争美化の風潮」を助長することにもなる。
さりとて、戦後生まれの「戦争を知らない世代」のはしりである私が、いくら「反戦」を訴えても、体験がないので、説得力がない。となれば、子どもたちには、「はだしのゲン」を薦めるしかない。
ちなみに、日本には、戦争博物館はないけれど、戦争を知るのにうってつけの場所がいくらでもある。広島平和記念資料館(「原爆資料館」)はもとより、靖国神社の「遊就館」、海上自衛隊幹部候補生学校の「教育参考館」などだ。見学したからといって、決して「好戦的」にはならない。
【参考引用】NHKNEWSwebが8月20日午後4時43分、「『はだしのゲン』鳥取市でも閲覧制限」というタイトルで、以下のように報じた。
「中沢啓治さんの漫画『はだしのゲン』を、松江市教育委員会が一部に過激な描写があるとして市内の小・中学校の図書室で子どもが自由に読むことができなくするよう学校側に求めていた問題で、鳥取市の市立図書館も、おととしから本を事務室に移し、自由に読むことができない状態にしていたことが分かりました。
図書館では今後は制限をなくし誰でも読めるようにしたいとしています。漫画『はだしのゲン』は、去年12月亡くなった被爆者で漫画家の中沢啓治さんが、原爆の被害を受けた広島で力強く生きていく少年の姿を描いた作品です。
この『はだしのゲン』について松江市教育委員会は去年12月、一部に過激な描写があるとして、子どもが図書室などで自由に読むことができなくなる『閉架』の措置を小・中学校に口頭で要請していました。
この問題で鳥取市の市立中央図書館もおととし、本を児童書のコーナーから事務室に移し、自由に読むことができない状態にしていたことが分かりました。理由について図書館では、『女性を乱暴するなど性的な描写がある』と保護者から指摘を受けたためとしていて、希望する人の閲覧や貸し出しには応じていたということです。
鳥取市立中央図書館の西尾肇館長は『どのような形で閲覧してもらうのがよいのか職員で議論するのをつい怠っていた。図書館として閲覧を制限したつもりは全くなく、今後は一般書のコーナーに移して手にとって読めるようにしたい』と話しています。
広島県知事・閲覧制限は適当でない
一方、この問題について広島県の湯崎知事は20日の記者会見で『《はだしのゲン》は広島の被爆の実相を伝える資料として、長年、たくさんの人が読み継いできたものだ。
児童や生徒にはこうした資料を通して被爆の実相を理解してもらい、世界の平和と人類の幸福に貢献できる人に育ってもらうことが大事だと思っている。自由に読んでもらっていいと思う』と述べ、閲覧制限は適当ではないという考えを示しました」
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