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2013年08月21日 世相を斬る あいば達也
国会は開かれていないが、安倍自民党の愚策は着々と進んでいるようだ。いや増す勢いで、国民生活疲弊作戦が急加速している。しかし、偽りの煽り景気の正体がバレはじめ、経済界、マスメディアがビビり出している(笑)。彼らの論は、消費増税の実施により、景気の腰が折れる点が心配という点で一致する。そもそも、実体として景気など一切好くなっていないのに、マスメディアのアベノミクス賛歌で、日本国中が躁状態になっただけに過ぎない。そんなことは、初めから決まっているのだから、予定通り消費増税に邁進し、国民を奈落の底に落とすことが肝心だ。
安倍政権にはあらん限りの力を発揮し、棄民政策に突っ走り、米中韓からも阻害され、アジアの孤児と云う名誉ある地位を得て欲しいものである。鳩山由紀夫の“東アジア共同体構想”が日本のベストの選択だと気づく契機にもなる。無論、筆者は準鎖国論者なので、どの国とも相応の距離を取り、他国の内政に関与せず、自国の内政に関与させない国家像を描いているので、鳩山の論に不満もあるが、アジア人の枠組みで共同体は作る程度は容認したい。何としても、日本が一歩でも独立国になるためには、日米同盟からの脱却は避けて通れない問題なのだ。
それはさておき、安倍政権はアベノミクスと称し、単に世界の金の流れの中で偶然起きた円安と株高を、我が功績のように喧伝し、マスメディアにも同調することを求めた。14年の消費増税3%アップ時の新聞等への軽減税率適用を強く望んでいたマスメディアは、安倍内閣の要求に協力、その“アベクロ政策”の提灯記事に終始した。しかし、参議院選の前後に、新聞等への軽減税率適用が不公正と云う声が強くなり、優遇適用が得られない可能性が強まった。そうなると、今度は掌を返し、消費増税疑問説を強く打ち出し始めている。公正な報道などチャンチャラおかしいご都合主義を発揮している。
まぁマスメディアや論者の多くは勝ち組だと思っている連中なのだから、ポジショントークに終始するのは判っていたことで、風向きが変われば、何を言い出すか判ったものではない。しかしここに来て、円安の流れは完全に頭打ちで、円高に振れる可能性の方が高い按配になってきている。また、株高の勢いも完全に失せ、18,000円相場とか20,000円相場を囃したてたエコノミストは笑い者になっている。昨日などは361円も日経平均は下げ、13,000円台をウロチョロしている。アジアの金融不安と株式の低迷が鮮明になり、経済成長に翳りが出た煽りを受けたなどと講釈をつけているが、初めからアベクロ政策で景気が好くなったら奇妙な話で、そもそも論からして間違っているに過ぎない。
黒田日銀総裁は、異次元金融政策は絶好調と嘯いていたが、「景気が失速するようなら、躊躇せずに追加の金融緩和をする」と語っている。つまり、小出しの金融政策はしない!と偉そうに強調した舌の根も乾かぬうちに、まだまだ奥の手は幾らでもあるような大言壮語の体である。「円高是正や株価回復、消費・投資改善、物価上昇期待という三つの好転が起きている。基本的に 良い方向」と昨日になっても世迷言を言っているが、民間の金は、そういう出鱈目にびくともしていない。
ドイツ連銀は月報の中で「アベノミクスは藁に火をつけたようなもので、早晩燃えかすだけが残る、と大特集で報じた。内容の詳細は省くが、無理に無理を重ねている状況であり、14年4月以降はアベノミクスの後遺症が一気に表面化するだろうと、不気味に予測している。ロイターにブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジストの村田雅志氏のコラムが掲載されているが、このコラムが的を得ているだろう。参考まで添付しておく。TPPによって、グローバル企業の嵐が吹き荒れる不安の声も強く聞かれるが、日本の市場が、彼らにとって本当に魅力的かどうかは、始まってみないと予測が杞憂になることもありそうだ。
≪ コラム:数字が物語るアベノミクス期待の剥落=村田雅志氏
村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト(2013年8月20日)
ドル円は、有識者と呼ばれる方々の当初の予想と異なり上値の重い動きを続けている。8月に入り反発する場面もあったが、100円を再び突破する勢いはなくなりつつある。
もともとアベノミクスと呼ばれる政策群で、ドル円が100円を超える水準まで持続的に上昇すると考えるのは無理があった。大胆な金融緩和の推進を主張する安倍晋三首相の意を汲んだ黒田東彦氏が日本銀行の総裁に就任し、アベノミクスの「第1の矢」とされる大胆な金融政策を打ち出したことを市場は材料視。ドル円は93円台前半から大きく上昇したが、その方向性に大きな影響を及ぼす日米金利差は8月半ばを過ぎても2年前の水準とほぼ変わっていない。 米国債利回りの上昇が限定的だったとの弁明も示されているが、そもそも超低金利状態にある円債利回りを日銀が半ば強引にさらに押し下げたところで、円を下押しする効果は限定的だったと考えるべきだろう。
「第2の矢」とされる機動的な財政政策も従来型の財政支出増と何ら変わることはなく、「第3の矢」とされる成長戦略にいたっては、市場が織り込めるほどの短期間で大きな成果が期待されるものは何もない。アベノミクスという新しいラベルを付け、市場の期待を刺激したのは良いが、中身については従来の自民党政権で実施されたものと大きく変わりはないことが明らかとなり、市場の円安期待も後退。ドル円の上値が重くなってきた、というのが素直な解釈と思われる。
アベノミクス信奉者は、企業の設備投資が増えると主張してきた。4―6月期の国内総生産(GDP) は年率換算で2.6%増とまずまずの伸びだ。しかし、民間設備投資は前期比0.1%減と6四半期連続のマイナスを記録した。機械受注をみても、設備投資の 先行指標とされる民需(除く船舶・電力)の7―9月期見通しは前期比5.3%減と大きく落ち込んでおり、設備投資が今後、増加に転じる期待は持ちにくい。
アベノミクス信奉者は、円安進展により輸出が増えるとも主張していた。しかし、輸出数量は現実には6月まで13カ月連続で前年割れとなっている。7月に入り前年比 1.8%増となったが、米国景気の強さを考慮すれば、あまりに弱い。一方、輸出価格は昨年12月以降伸びが高まり、7月は前年比10.2%上昇と3カ月連続の2ケタ上昇を記録している。
日本の輸出企業は円安が進展しても外貨建ての輸出価格を引き下げて輸出数量の拡大を狙うのではなく、円建ての輸出価格を引き上げることで採算性を向上させる姿勢を続けている。輸出数量を増やさない以上、設備投資を拡大させる必要もない。
輸出企業に限らず、日本の製造業は設備投資を増やす状況にない。6月の製造工業稼働率指数は前月比2.3%低下の95.8とリーマンショック前の2008年前半の水準から2割以上も落ち込んだままである。日銀短観の生産設備判断DIをみても、製造業はプラス12とリーマンショック後も設備過剰感がほとんど解消されていない。円安になっても輸出企業は生産を大きく拡大させる意向がなく、設備の稼働水準は低く、設備過剰感は続いたままの状況のなか、円安進展で設備投資の増加を期待するのは合理的な考えとは思えない。
<円安で吸い取られた家計の購買力>
円安の進展で日本の株価が上昇したことを評価する見方もある。ただ、上述したように円安が永続的に続くとは期待できず、円安主導の株価上昇は難しくなっている。日経平均株価が5月23日の場中に記録したピーク(1万5942円)どころか、1万5000円すら上抜けできないことをみれば、 円安による株価上昇に限界があることは容易に理解できる。
円安と株高によってもたらされた消費者マインドの改善も完全に頭打ちである。内閣府が発表する消費者態度指数は7月に43.6と2カ月連続の低下。景気ウォッチャー調査では現状判断DIが52.3と4カ月連続の低下となった。個人消費は1―3月期、4―6月期とともに前期比0.8%増と雇用者所得を上回る伸びとなったが、マインドの改善が頭打ちである以上、今後は消費の伸びが所得並みになると見込むのが自然だろう。現に家計調査における実質消費支出は1月から4月まで大きく増加したものの、5月、6月は2カ月続けて前年割れとなっている。
6月の完全失業率は3.9%と、08年10月以来4年8カ月ぶりに3%台に低下した。アベノミクスの効果だと喧伝する方もいるが、雇用が継続的に増加しているのは医療・福祉のみで、円安の恩恵を受けているはずの製造業は雇用を抑制したままである。金融緩和で医療・福祉の雇用が増えるとは考えにくく、足元の雇用環境の改善は少子高齢化の進展という大きな流れの中で労働市場の流動性が増したおかげと考えた方が自然だろう。1人当たり賃金(現金給与総額)は、数多くの方が指摘するように伸びが限定的。結果として4―6月期の雇用者報酬は前期比0.3%増にとど まっている。
円安の進展はコストプッシュ型の物価上昇を促している。6月の消費者物価は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年比0.4%上昇と1年2カ月ぶりのプラス。上昇幅は08年11月の1.0%以来の大きさとなった。
内訳をみると、消費者物価を大きく押し上げたのは電気代、ガソリン代、ガス代といった輸入物資。現に4―6月期の日本の交易損失は20兆円と統計開始以来、2番目に大きな規模に拡大している。アベノミクス信奉者は、日本がデフレからインフレの流れになりつつあると喜んでいるのかもしれないが、輸入物価の上昇を中心とした物価上昇は消費者の購買力を悪化させている。円安の進展は結局、輸入物価の上昇で吸い取られた家計の購買力が、日本の輸出企業や産油国といった海外に移転するだけとなっている。
金融緩和の強化や公共投資を中心とした財政支出の拡大は、市場のボラティリティを拡大させ、社会のムード・期待を一時的に変えたかもしれないが、日本の企業部門はムードに踊らされることなく冷静な対応を続けた。一方、家計部門は高揚感の中で半年程度、消費を増やしたかもしれないが、ようやくアベノミクスの本質に気づき始めた。
3党合意で計画通りに実行されるはずだった消費税率引き上げの是非が安倍政権周辺で今さら議論され始めたのは、アベノミクスの限界に彼らも気づき始め、消費税をネタに社会のムード・期待を新たに変えようとしているためなのかもしれない。
*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。≫(ロイター:コラム)
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