15. 2013年8月22日 06:15:04
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2013/08/20 【IWJブログ:「『聖域』を守るという自民党の公約や決議は、各国の交渉官にほとんど知られていない」ジェーン・ケルシー教授、ロリ・ワラック氏が、日本のTPP交渉に渾身の提言!】 「党派を超えてTPP問題を考える国会議員を結集し、各国のTPP交渉官に日本国内の事情を説明すべきだ」 ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授と、米NGOパブリック・シチズンのロリ・ワラック代表が連名で、今月から行われるTPP(環太平洋経済連携協定)のブルネイ会合に向けて、日本の政治家に訴えかけていることが、前衆議院議員で「TPPを考える国民会議」副代表の山田正彦氏に送られたファックスで明らかになった。 ファックスは2013年8月15日付で、山田氏が自身のフェイスブックに文面の画像を投稿した。2枚の本文と、ブルネイ首席交渉官への手紙の文案からなり、本文にはケルシー氏とワラック氏の署名が入っている。 両氏は文面の中で、今月22日よりブルネイで行われる第19回TPP会合が、日本にとって事実上最初で最後の交渉となる可能性があると指摘。その上で、農産品5品目の関税の「聖域」を守るという自民党の公約や農林水産委員会の決議内容が、各国の交渉官にほとんど知られていないと警告している。また、国民皆保険の堅持など、安倍内閣が国内向けに約束しているその他の条件についても、各国の交渉官には伝わっていないと述べている。 TPP交渉締結の最終段階において、日本国内の実情や日本国民の要求を理解してもらうためには、日本の国会議員が、TPP参加国すべての首席交渉官を招いて話し合いを行う場を設定するべきであると、両氏は提案している。
ケルシー氏とワラック氏は、長年ステークホルダー(利害関係者)としてTPPの問題を指摘してきた、TPP秘密交渉の内情を深く知る数少ない有識者である。その両氏による今回の提案は、ブルネイ会合における日本の交渉の行方に関して、大きな意味や実現可能性を持つと思われる。 ■IWJ 2013/05/29 「TPPで聖域6品目は守られるという根拠はどこにもない」 NZ・米国・韓国の反TPP派の識者が警鐘 〜TPP国際シンポジウム −農業だけじゃない? TPPの問題はこれだ! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/82216 前回のマレーシア会合には、自民党から党TPP対策委員会の西川公也委員長ら4人の議員団が派遣された(日本経済新聞 2013年7月11日 「TPP会合、自民も議員団」 http://s.nikkei.com/16ulKnL)。今回のブルネイ会合には、山田正彦氏のほか、民主党の篠原孝衆議院議員、首藤信彦前衆議院議員、山崎まや前衆議院議員、無所属の山本太郎参議院議員、生活の党の三宅ゆき子前衆議院議員らが参加の予定である。 今回、山田正彦事務所の了解を得て、山田氏が投稿した画像から判別できたファックス本文の原文とその邦訳を掲載する。一部画像が切れていたり、文字が解読不能な部分に関しては、原文の中で( )や****とし、意味を推定して翻訳した。原文のコピーを入手次第、適宜修正を加える予定である。(IWJ・野村佳男) ------------------------------------------------------------------------ ———————————————————————- 山田正彦 殿 TPPを考える国民会議副代表 2013年8月15日 山田正彦様、 貴殿がTPP交渉のブルネイ会合に参加される予定だと聞いています。とても喜ばしいことです。貴殿の参加は、日本のTPP交渉参加に関する条件について、他のTPP参加国の上席交渉官と情報を共有する、大変重要な機会となることでしょう。 TPP交渉に関してより包括的、かつより良い知見に基づいた交渉作業を確実にするために、また農林水産委員会の決議など、正当な日本の国益を守るために、TPP問題に誠実に関わっておられる自民党と民主党の国会議員の方々が協力されることを、謹んで提案し、要請いたします。 農産品5分野の(関税撤廃の)例外や投資家—国家間制度の排除、聖域として守るべき国民健康保険制度やそれに関連する薬価制度など、日本が国内で設けている条件について、TPP交渉官はほとんど知りません。とりわけ、これらの事項について自民党の公約があるということも知りません。日本との並行協議においてTPPと同じ問題が討議され、日米間で(TPPと)異なる交渉結果が生ずる可能性があることについて知らない交渉官もいます。同様に、TPPを計画通り拙速に締結することで、日本で大きな反発が生じ、日本を含めた形でのTPP成立という目標自体がダメになる可能性のあることも認知されていません。ブルネイ会合が日本にとって最初で最後のTPP交渉会議になることは、他国の交渉官にとっても利益にならないことを、彼らが理解することが重要です。 ここ3年ほどのTPP交渉会議への参加や交渉官との会合から、首席交渉官ですら他のTPP参加国の重要な国内政策事項について知っているわけではないことが分かりました。重要な局面において、我々はそのような情報を提供し、交渉に影響を及ぼしてきました。重要な政策事項がわからなければ、ある国の首席交渉官や彼らのチームは、他の国に対して実行不可能な条件を引き受けるよう要求することになりかねません。時に、そのような圧力が強くかかると、国内における実情にもかかわらず、条件を引き受けてしまう国が出てくる可能性もあります。これは大変危険なことです。なぜなら、各国の国内的な状況を配慮しない「合意」となってしまうからです。そうなると、「最終」合意を各国の議会に持ち帰ったとき、議会には国内の目標や条件を満たさない合意事項を承認するよう、大きな圧力がかかることになります。他のTPP参加国から、「合意事項を変更するのは手遅れであり、承認しなければ外交上ダメージとなる」という申し立てを受けることになるでしょう。しかし、首席交渉官が十分な情報を持っていれば、大概彼らはアプローチを変更してくれます。 交渉官たちは、相当進んだ段階に来ています。このブルネイ会合が最後のTPP協議となると、すでに宣言されています。日本にとっての関心事である規定についてのテキストの大半は、すでに完了してしまっています。その結果、特定の問題に関して交渉官に働きかけるのは、もはや手遅れです。ですから、日本について欠けている重大な情報を伝えることが、大変重要になります。 この段階においては、国会内で確認された国内条件について、直接首席交渉官に要約を伝えることが大切です。なぜなら、彼らはちょうど、政治的決断をして、それを大臣に報告するところだからです。 首席交渉官と会合を持つのは難しいでしょう。個々の首席交渉官との会合を持てたとしても、短時間でしょうし、効果的なやり取りをするのに相応しい環境ではないかもしれません。(例えば、コンベンションセンターのロビーでとか)。しかし、ホスト国の首席交渉官であれば、例えば昼食会や、重要情報を提供するという信頼のある人が話す会議などであれば、各国の首席交渉官を一同に集めてグループ会合を設定してくれるかもしれません。ブルネイでの協議では、低価格で買える医薬品の問題に関して、そのような会合がすでに設定されています。 首席交渉官たちは、ブルネイ会合で交渉を終わらせようと、非常にせわしない状況にいるでしょう。首席交渉官全員を招いた昼食会あるいは他の会議を設定する手助けをしてもらうよう、ブルネイの首席交渉官に緊急のリクエストを出すことを、謹んで提言いたします。(そのための手紙の文案を同封いたしました。)都合の良い日時や場所が決まり次第、国会議員の代表から首席交渉官全員宛てに招待状を送るということが非常に重要になります。 首席交渉官全員との会議を持つために、ブルネイの首席交渉官への手紙や首席交渉官への招待状には、彼らにとって重要かつ有益な情報を提供する旨を明示する必要があります。ですから、あなたが持ちかける論点は、日本で幅広い支持を受けているということを彼らに理解させることが必須です。特に、自民党と民主党の両党の国会議員、さらにTPPについて国民の関心を代表するような重要人物が話すような会議を提案することが大事です。このことは大変重要で、なぜならこの最終段階において首席交渉官たちは、日本国内で広く共有されている政策的現実にのみ関心があり、それによって彼らがTPPへのアプローチを再考しなければならないと思うような事柄でなければならないからです。彼らが医薬品の会議に参加するのも、それが理由です。その問題が合意の締結を阻む可能性があると彼らが認識しているからなのです。一つの党、もしくは党の一派、あるいは国の一部のみを代表するような情報だと彼らが思えば、彼らは興味をもたず参加しないでしょう。 貴殿がこの提案を考慮していただけることを願っています。これまで何年かのTPP交渉の経験から、このような会議は交渉に多大なインパクトを与えることを、我々は確信しています。とりわけ、ブルネイ会合で急いで締結し10月のAPECサミットで承認するというのではなく、日本が交渉において目標を達成するために、より包括的でより良い知見に基づいた交渉作業を行っていくことは、明らかに違いをもたらすことでしょう。 敬具 ジェーン・ケルシー 法律、政策、国際経済規制 教授 オークランド大学 ロリ・ワラック ディレクター パブリック・シチズン グローバル・トレード・ウォッチ 同封 ブルネイ首席交渉官への手紙文案 |