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松江市教委が、図書館を持つ市内の小中学校49校に要請した漫画「はだしのゲン」の閲覧制限。市教委事務局が幅広い意見聴取をせず、独断で学校現場へ閲覧制限を要請した経緯が19日、関係者の証言で浮き彫りになった。
「(制限は)市教委事務局の判断で構わないと考えたが、教育委員会議に諮るべきだった」。昨年12月に閲覧制限を決めた当時教育長だった福島律子・松江市総合文化センター館長は対応の不備を認めた。
学校図書館から「ゲン」の撤去を求める市民の陳情が市議会に提出された同8月以降、教育長たち幹部が協議。有識者の意見や他市の対応から「撤去は不適当」としたが、本棚から書庫に移す「閉架」や貸し出し制限を各校に求める対応は、内部協議だけで決めていた。
戦場で首を切ったり、女性に性的暴行を加えたり…。市教委は「暴力的な描写」を問題視する。古川康徳副教育長は「表現の自由よりも、子どもへの悪影響を防ぎたい思いが強かった。行き過ぎた制限とは考えなかったが、慎重さを欠いていた」と振り返る。
市教委から同11月、図書撤去の是非を尋ねられた島根県立大短期大学部(松江市)の石井大輔講師(図書館情報学)は「行政が『図書の表現に問題がある』と考える場合、可能なのは問題提起まで。今回の市教委の対応は、図書館運営への介入と受け取られても仕方がない」と指摘。「閲覧制限の可否は図書館が独自に決めるべき問題」と強調した。
市教委が「暴力的描写の悪影響」を懸念する一方、陳情者は別の観点から「ゲン」の記述を批判していた。陳情は「ありもしない日本軍の蛮行」「国歌に対しての間違った解釈」を指摘。「間違った歴史認識を植え付ける」と訴えた。
市議会は同12月、陳情を全会一致で不採択とした。だが、議長経験もあるベテラン議員の一人は「歴史上の事実関係に見解が分かれる内容や、天皇制批判の記述もある。妥当な対応だった」と閲覧制限を支持する。
著作の歴史観を問題視する陳情者や市議への配慮があったのではないか―。この疑問に、福島前教育長は「そうした主張に加担するつもりはない。市議との接触もなく、市教委独自の判断だ」と明確に否定した。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201308200054.html
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