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NHKの公式サイトにある松本正之会長のあいさつページ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36757
2013年08月20日(火) 町田 徹 現代ビジネス
水面下で、来年1月に任期が満了するNHKの松本正之会長(元JR東海社長)の後継人事が早くも取り沙汰され始めた。
きっかけになったのは、安倍晋三首相と太いパイプを持つ鉄道会社幹部の言動だ。この幹部は、松本現会長の就任の際にも大きな影響力を及ぼしたとされている。ところが、今回は松本会長の続投を推さず、別の人物を推薦する声をあげて波紋を呼んでいる。その意中の人物は、NHKの理事経験者だ。
この夏の中央省庁のトップ人事でも、安倍政権は、次々と各省庁に介入して既定の人事をひっくり返し、官庁を震え上がらせたばかり。それだけに、NHKの幹部人事に介入しようとしても不思議はない。
■後任には元NHK理事の諸星衛氏の名が
しかし、中央省庁と違い、NHKは中立性を問われる公共放送だ。国営放送局でもなければ、特定政党の機関メディアでもない。もし、仮に時の政権が人事に介入して意中の人物をトップに起用するような事態になれば、NHKの信頼性が大きく損なわれる恐れがある。
複数の関係者によると、安倍首相と太いパイプを持つ鉄道会社幹部が松本会長の後任として名前をあげて、安倍政権に推挙しているのは、元NHK理事の諸星衛氏だ。
諸星氏は、政治部長、理事、NHKインターナショナル理事長などを歴任した人物。1997年から2005年まで7年半にわたって、NHK会長を務めた海老沢勝二元会長の腹心だったことが知られている。相次ぐ不祥事で海老沢体制が一新された際に、NHK理事を退任した経緯もある。
それゆえ、鉄道会社幹部の諸星氏推薦は「時計の針を戻すのか」との反発を呼んだ。そして、同じNHK出身で国際、経済畑が長く、ニュースキャスターの経験のある今井義典氏を対抗馬に推す動きが出て、水面下の後継レースが一気にヒートアップしたという。
2人以外の候補としては、今春のNHK委員長人事で白羽の矢が立ちながら、新聞が事前に報じたため、起用が見送られた本田勝彦日本たばこ元社長の名前も取り沙汰されている。本田氏は安倍首相の学生時代の家庭教師で、今なお首相と個人的に親密とされる。
■民間経験者を登用し続けるのか、内部昇格か
実際のところは、松本会長の任期がまだ5ヵ月も残っており、後継者選びは混とんとしている状況。
NHK内部の一部を除いて、受信料の引き下げやNHK職員の給与カットといった懸案を実現した松本会長の評価は高い。現時点では松本会長の続投の可能性も残っているし、まったく下馬評に上っていない人物が登用される線もある。
そもそも、NHK会長人事と言えば、不祥事とそれに続くNHK批判の嵐、受信料不払いなどを受けて、福地茂雄氏、松本正之氏とここ二代は民間経営者を外部から登用してきた経緯がある。
それだけに、引き続き会長を外部から招へいすべきか、逆に橋本元一氏を最後に途絶えている内部昇格を復活するべきか、それとも中間的な案としてNHKのOBを登用すべきかなど、大きく議論の分かれる問題もある。
その一方で、かつて吉田茂、田中角栄といった大物総理たちが自らの息のかかった人物をNHK会長に据えたことは歴史的な事実として様々な文献が紹介してきた。
ちなみに、吉田元首相がNHK会長に据えたのは朝日新聞社出身の古垣鉄郎氏、田中角栄元首相が据えたのは郵政事務次官経験のある小野吉郎氏だったとされている。
実際のところ、NHKの会長人事には放送法の規定があり、まず国会の承認と内閣総理大臣の任命によって経営委員を決定(同法第31条)し、経営委員から成る経営委員会が任命する(同法第52条)ことになっている。つまり、政治の間接規制が厳然と存在するのだ。
今、最も懸念されるのは、安倍政権が、今春、再任されたばかりの経営委員長の浜田健一郎氏(ANA総合研究所会長)らに働きかけて意中の人物を選ぶように迫ることだ。今月13日に辞任した松下雋経営委員(日本ガイシ顧問)の後任に意中の会長候補に投票してくれる人物を送り込んでおき、経営委員会の多数派工作に乗り出す可能性も否定はできない。
■今回の内閣法制局長官の人事は慣例破り
この夏、安倍政権の霞が関人事への頻繁な介入が目立った。
例えば、安倍首相は今月初め、憲法解釈や法令審査を担う内閣法制局の長官に、外務省出身の小松一郎駐仏大使を起用した。法務、財務、総務、経済産業(名称は現在)の4省出身者が法制局内で部長、次長を経て、長官に昇格する慣例を破るもので、集団的自衛権を巡る政府見解を変更するための布石とみられている。
また、経済産業省、総務省などの事務次官人事でも、役所の既定方針と言われた人事を覆して、両省に衝撃が走ったこともある。
もともと、「公共放送」と言いながら、NHKは、「政治からの独立性」を保ちにくい放送局だ。
最近では、2005年1月12日付の朝日新聞の記事を発端にした「番組内容の事前変更問題」が記憶に新しい。この問題は、その4年前に報道された従軍慰安婦を扱った番組で、内容を事前に自民党幹部だった安倍晋三氏と中川昭一氏(故人)に説明し、両氏の意に沿わない部分を変更して放送したのではないかと疑われたケースだ。
政治家の介入があったというよりは、単なるNHK側の自己規制だった可能性も残り、事前変更問題自体の真偽のほどは最後まではっきりしなかった。
とはいえ、現行の放送法を見ると、NHKががんじがらめの規制を受けているのは事実で、「政治からの独立性」を保ちにくい構造になっていることは否定の余地がない。
例えば、業務の範囲や、主たる事務所を東京に設置することの義務付けなどの規制があるほか、定款変更には総務大臣の認可が必要だ。
前述のように、経営委員の選定には国会の承認と内閣総理大臣の任命の両方が求められる。加えて、内閣総理大臣は経営委員の罷免権も持っている。
さらに言えば、受信料の変更は総務大臣の認可性だし、放送・受信技術の研究開発に取り組む義務もある。毎年の予算、事業・資金計画については、総務大臣に提出したうえで国会の承認を受けることを義務付けられている---といった具合なのだ。
吉田、田中総理たちの在任時期とは時代が大きく異なるだけに、安倍首相が真似をして意中の人物を送り込もうとすれば、国民のNHKに対する信頼性に致命的な傷を付けることになりかねない。
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