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2013年08月18日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆「広島と長崎に投下された原爆は、日本による侵略行為の報い」「平和式典は独善的でうんざりだ」―これは、イスラエルの元高官ダニエル・シーマン氏がフェイスブックに書き込んだ発言だ。近く首相府のインターネットを使った広報戦略の責任者に就任する予定だったというから、実におぞましい。イスラエル政府は、日本政府から抗議を受けて、この元高官を停職処分にしたという。だが、パレスチナと紛争中で、武力攻撃を繰り返して、多数の市民を殺傷しているうえに、イランに対しては、「先制核攻撃」も辞さない構えの状態にあるだけに、イスラエル政府高官たちの「核戦争」に対する「本音」が、露骨に示されている。
◆まず、「広島と長崎に投下された原爆は、日本による侵略行為の報い」とは、「憎っくき敵に原爆投下するのは、正しい」ということを意味している。これを現代のイスラエルとパレスチナ、あるいはイランとの対立に当て嵌めてみると、「報復措置」として「原爆投下」するのは当たり前だという「核攻撃正当化論」を全世界に向かって堂々と宣言していることと同義語である。
この発言は、「敵国日本に対する報復」として正当化しているが、原爆投下されたのは、「日本国」であるから当然という浅薄な考え方が根本にある。しかし、現実は、「抽象的な日本国」ではなく、具体的な広島市民や長崎市民であり、当時日本臣民だった朝鮮人であり、その他の外国人であり、さらには、米軍、英国軍軍人をはじめ連合国軍の軍人で捕虜として日本に連れてこられた数多くの人々も含まれている。長崎市では、浦上天主堂の上空に原爆が投下されたので、キリスト教の敬虔なる信者が被爆し、犠牲になっている。
ダニエル・シーマン氏は、「日本による侵略行為の報い」と言い切っているけれど、本気でそう思っているとしたら、精神が正常とはとても思えない。
中央日報(韓国紙)の論説委員キム・ジン記者(53歳)が「原爆投下は神の懲罰」とのコラム(2013年5月20日)を書いて、批判を浴びた。朝鮮半島でも核戦争が取り沙汰されてきたので、キム・ジン記者も、ダニエル・シーマン氏も、おそらく「核攻撃容認者」として同類なのかも知れない。
◆次に、「平和式典は独善的でうんざりだ」というダニエル・シーマン氏の発言は、「原爆式典」が、あくまで原爆被災者の慰霊と核廃絶が目的であるという趣旨を理解していない。終戦の日の戦没者慰霊祭とは違うのである。これは、全人類に向かって「二度と核使用の過ちを繰り返してはならない」という誓いを新たにするための式典でもある。
ダニエル・シーマン氏は、原爆の恐ろしさをまったく理解していないから、こんな暴論を吐いてしまうのであろう。逆に言えば、イスラエルが、核兵器を使用しても、だれからも咎められることはないという思い上がりがある。
「原爆」と言えば、ユダヤ系アメリカ人の物理学者ジュリアス・ロバート・オッペンハイマーの名前がすぐに思い浮かぶ。第二次世界大戦当時ロスアラモス国立研究所の所長としてマンハッタン計画を主導、卓抜なリーダーシップで原子爆弾開発プロジェクトの指導者的役割を果たしたため「原爆の父」として知られている。ユダヤ国家であるイスラエルのダニエル・シーマン氏が、広島や長崎への原爆投下を正当化し、これからイスラエルが原爆を「正義の核兵器」としてパレスチナやイランに投下するのを正当化しようとするのは、十二分にあり得ることである。
しかし、米国の映画監督オリバー・ストーン氏(父ルイスはユダヤ系の株式仲買人、母はフランス系のカトリック教徒。折衷案として米国聖公会で育ち、後に仏教徒となる)は原爆投下について「米国は日本が降伏寸前であったことを知りながら、ソ連を牽制するために投下を決断した」と断じている。これは、「原爆投下はあくまで戦争の早期解決を目的としたものだ」というこれまでの一般的な見方を覆すものだった。原爆投下を命じた米国トルーマン大統領が、第二次世界大戦後のソ連を牽制する目的で、日本をターゲットにしたもので、日本にわざわざ投下する必要はなかったという史実が、明らかになってきており、ダニエル・シーマン氏の言う「報復説」は、史実からかけ離れている。
【参考引用】共同通信が8月16日、「原爆式典「うんざり」 イスラエル元高官に日本抗議」という見出しをつけて、以下のように配信した。
「【エルサレム共同】イスラエル政府の元高官が広島と長崎に投下された原爆について『日本による侵略行為の報い』とした上で、犠牲者らを悼む両市の平和式典は『独善的でうんざりだ』などとインターネット上に書き込んでいたことが16日までに分かった。日本の外務省などが明らかにした。この元高官はダニエル・シーマン氏。イスラエル紙ハーレツ(電子版)によると、ネット交流サイト『フェイスブック』の自身のぺージに記していた。日本政府はイスラエル側に事実確認をした上で『極めて配慮を欠く内容だ』と抗議した。シーマン氏は、近く首相府のインターネットを使った広報戦略の責任者に就任する予定だったが、今回の問題を受けて停職となっている。シーマン氏は『日本が追悼すべき相手は、(日本の)帝国主義や大量虐殺の犠牲となった中国人、韓国人、フィリピン人らだ』とも書き込んだ。ハーレツによると、今回の書き込みは広島市で開かれた式典の2日後の8日付で、既に削除されている。シーマン氏はこれまでもフェイスブック上で問題発言を繰り返していた」
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