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『週刊現代』2013年8月17・24日号 古賀茂明「日本再生に挑む」:現代ビジネス
来春の消費税の増税をめぐる議論が白熱してきた。しかし、マスコミの報道ではわからないが、消費税をどうするかにかかわらず、同時に議論すべきもっと重要な問題がある。
アベノミクスのおかげで急に活気が出てきたように見える日本経済。しかし、異次元の金融緩和の効果は名目のマクロの世界でのこと。これで国民生活が豊かになるわけではない。財政バラマキも持続可能な政策ではない。実質の世界で景気を本当によくするには、第3の矢、成長戦略が放たれなければならない。
経済音痴の日本のマスメディアが、金融緩和による円安と株高に熱狂し、構造改革に無関心だったのに対し、欧米のメディアは、当初から、構造改革をセットで実施することを前提として、アベノミクスを高く評価していた。
他方、財務省は、消費税を上げなければ、日本への信頼が失われると言うが、これは正しくない。消費税増税だけなら、ギリシャもイタリアもスペインもやった。しかし、彼らは財政危機に陥っている。借金の額もGDP比率も問題の本質ではない。市場に見放された原因は、彼らが経済成長のための構造改革を怠り、借金を返す力を失ったからにほかならない。
麻生財務相を筆頭とする自民党の消費税増税派の大半は、構造改革反対派だ。増税の目的は財政再建ではなく、バラマキ原資の確保。官僚も同じだ。彼らは、増税による景気の腰折れ防止という名目で、さらなるバラマキをするから財政赤字は縮小しない。再来年の消費増税もあるから、バラマキ継続になって、結局財政再建はできず、さらなる増税に向かう。その結果、市場の信頼は失われる。
逆に、消費税増税を先延ばしする代わりに、無駄な歳出のカットと農協や医師会や電事連がひっくり返るような大胆な構造改革路線を打ち出すとどうなるか。市場は、政府の強固な意志を好感し、そういう政府なら、必要になればいくらでも増税をできるだろうと予想する。稼ぐ力ができるから増税の力もできると見られる。日本への信認は失われない。
結局のところ、増税実施の是非が本質ではない。重要なのは、既得権と闘って、痛みを伴う成長政策を実行できるかだ。ねじれ解消後3年間選挙なしで行ける安倍政権にはその期待がかかる。
しかし、私の見通しは悲観的だ。2012年の自民党総裁選。石破茂氏に次ぐ2番手だった安倍氏が決選投票で逆転して総裁になれたのは、自民党の長老や派閥領袖たちが、「石破より安倍の方がまだまし」と考えて安倍支持に回ったからだ。「まだまし」とは、「安倍なら、無茶苦茶なことはしないだろう」という意味だ。
今、世界が期待しているのは、その「無茶苦茶なこと」。つまり、これまでの自民党をとりまく既得権益層の岩盤を突き崩して、痛みを伴う改革を実行することだ。自民党の守旧派長老たちが安倍支持に回ったのは、安倍にはそれはできないと読んだからだ。しかも、参議院選比例区では、農協、郵便局、医師会、歯科医師会などの候補が軒並み上位当選した。今後は団体へのご恩返しの政治が始まり、結局、成長戦略は不発に終わる。
安倍政権は、この秋は、投資減税で時間稼ぎを図り、「これからが本番」と言って、「守旧派と闘う安倍総理」を演出するだろう。しかし、幸か不幸か、最近、本気で日本ウォッチを始めた海外メディアは、日本のメディアと違い、政権のポチではない。演技は早晩見抜かれる。
その先に見えるのは、消費増税実施の如何を問わず、市場の信認を失う日本の姿である。
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