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2013年8月16日 [公開書簡]
内閣総理大臣
安倍晋三殿
拝啓
アムネスティ・インターナショナルと韓国挺身隊問題対策協議会は、安倍首相および日本政府に対して、紛争下での女性に対する性暴力の根絶を訴えるG8宣言を支持した日本が、性暴力に対して一貫した対応をとることを要請いたします。具体的には、1932年から1945年までの戦時下に行われた日本軍性奴隷制に対する責任を全面的に受け入れ、被害者に対して、これ以上遅滞することなく十分な謝罪と賠償を果たすことを要請します。
アムネスティと韓国挺身隊問題対策協議会は、2013年4月11日のG8外相会議で、英国主導で採択された紛争下での女性に対する性暴力の根絶を訴える宣言に日本が加わったことを歓迎します。私たちは、紛争下における性犯罪が処罰されない状況を終わらせるべく、この重大な人権侵害に対して日本などG8の国々が前向きな行動を取ったことを評価します。
しかし、日本は日本軍性奴隷制の被害者に対し、真の意味で十分な謝罪と賠償を行うという国際法上の義務を長きにわたり果たしていませんでした。その点を考えると、この度のG8での日本の積極性も形だけになりかねません。G8宣言は、性暴力に対する罪意識の促進、被害者にとっての司法の壁の排除、実効性ある被害者支援、加害者の裁きなどを目指していますが、その理念に反し日本軍性奴隷制を設置していたことに対する責任を認めず、正義を求める被害者の要求を拒絶してきました。
日本政府や政治家は、日本軍による性奴隷制をいまだに否定し、弁明を繰りかえしています。政府はこれまで、日本軍性奴隷の被害者へのいかなる賠償や補償の義務も、1951年のサンフランシスコ平和条約や日韓条約などですでに解決済みだという見解を示し、この要請は受け入れられないとしてきました。これらの条約は、性奴隷行為を対象とせず、個人がさらなる補償を求めた場合を考慮していません。さらに、政府の法的な面を含む責任の否定や回避は、当初性奴隷制を認め自責の念を表明したことに矛盾しています。
国連拷問禁止委員会は今年5月、日本が国連機関や普遍的定期審査が行った性奴隷制に関わる勧告を無視したことに、強い懸念を示しました。拷問禁止委員会は、日本が歴史教科書から軍性奴隷制の記述を削除したこと、橋下徹大阪市長ら国や自治体の首長が第二次世界大戦中の「性奴隷制は必要であった」という主旨の発言をしたことなどに遺憾の意を表明しました。
日本軍性奴隷制の被害者で現在、存命している人は高齢となっています。大多数は、謝罪と賠償を受けることなく、他界しています。日本政府が被害者への責任を全面的に負い、十分な賠償を怠ってきたことにより、被害者の苦痛は今も続き、実効性のある救済は行われていません。
日本政府は、G8宣言に本腰で取り組むためにも、日本軍性奴隷制の責任を認め、存命の被害者に対して賠償を行うことが必要です。日本がこの問題に十分な対応を取らない限り、G8宣言への支持は空虚なものになりかねません。この義務を果したとき、日本はG8宣言に謳われた取り組みを具体化するリーダーシップを発揮することができるでしょう。
アムネスティと韓国挺身隊問題対策協議会は、この書簡の日付の1週間後に、この書簡を公開いたします。私たちは、G8国と国連加盟国に対して、日本が性奴隷制の被害者への義務を果たすべく遅滞なく具体策を講じていくように要請する予定です。
敬具
http://www.amnesty.or.jp/news/2013/0816_4124.html
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