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特別寄稿・江川紹子 「静かにやる」改憲の動きはすでに始動 自民圧勝で「安倍カラー」発揮か <参院選・特別コラム>
http://www.asyura2.com/13/senkyo152/msg/406.html
投稿者 gataro 日時 2013 年 8 月 12 日 09:34:14: KbIx4LOvH6Ccw
 

特別寄稿・江川紹子 「静かにやる」改憲の動きはすでに始動 自民圧勝で「安倍カラー」発揮か <参院選・特別コラム>
2013年8月12日(月)07:30

http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/politics/gooeditor-20130811-01.html

 与党が圧勝した参院選の後の臨時国会は、わずか6日の会期で閉会となった。野党側は麻生副総理の「ナチスの手口に学ぶ」発言を問題にし、国会での審議を求めたが、与党は「撤回しており決着済み」と拒否。野党5党の代表者の罷免を求めるべく首相官邸を訪れたが、門前払いされた。衆参両院で圧倒的な多数派を形成している与党は、徹底した”麻生隠し”で、問題の幕引きを図った。「数は力なり」を見せつけた格好だ。

○ 「安倍カラー」を押さえた故の

 参院選大勝利によって、安倍政権は高い人気を誇った小泉政権の時に匹敵する力を持った。衆参の「ねじれ」が解消され、与党はこれで「決める政治」ができると意気込んでいる。何はともあれ、国民の期待が寄せられている景気回復には全力で取り組んで欲しい。

 ただ、忘れてほしくないのは、今回の選挙結果は、この半年間の安倍政権が、いわゆる「安倍カラー」を押さえ、経済最優先の対応をしてきたことについての、国民の評価と期待である、ということ。加えて、民主党の不人気や野党の選挙協力がうまくいかないなどの”敵失”も大きかった。野党が明解な景気回復プランを示せない中、自民党の経済政策は(専門家の評価は分かれるものの)具体的だった。「経済を立て直すには他に選択肢はない」というせっぱ詰まった思いで一票を投じた有権者はかなりいただろう。与党は、安倍氏の積極的な支持者以外に、消極的な支持を幅広く集めた、と言える。

 この点で、今回の選挙は”小泉旋風”の時とは大きく異なる。”小泉旋風”は、自民党の積極的な支持者を増やしただけでなく、小泉氏に批判的な有権者をも投票所に足を運ばせ、それなりに投票率を押し上げる熱気をはらんでいた。2001年の参院選直後の世論調査(朝日新聞)によると、自民党が当選者の過半数を占めたことについて、「よかった」が52%、「よくなかった」が35%、「その他・答えない」が13%だった。国民の過半数が自民圧勝を歓迎する一方で、批判的な人もその立場を明解にしている。

今回の選挙はどうか。直後の世論調査(共同通信)では、自民圧勝について「よかった」が39.8%、「よくなかった」が17.8%、「どちらともいえない」は42.0%だった。「どちらともいえない」の多さに、消極的な支持をした人々のなんとも言えない、あいまいな気持ちが表れている。

 「景気対策はがんばって欲しい。だけど……」――この期待と不安が入り交じった国民の思いを、安倍氏ら政権を担う人たちは謙虚に受け止めて、今後の政権を運営してもらいたい。経済再生の「最後の希望」を託した人たちの思いを受け止めると同時に、国民からあらゆる政策課題について「全権委任」されたわけではないことは、自覚してほしい。


○    ナチス発言の真意はタカ派への

 発言を流れで聞けば、麻生氏がナチスそのものを称賛しているわけではないことは分かる。

 失言の原因は、刺激の強い言葉や毒舌で聞き手のウケを狙った軽率さと、歴史についての無知だろう。「ナチス憲法」など存在しないし、ワイマール憲法が停止状態となる過程は、決して「誰も気づかない」などというような穏やかなものではなかった。

 加えて、ナチスに関しては今も極めて厳しい対応をする、という国際感覚も希薄だったのではないか。「発言」はジョークだとして擁護する人たちもいるが、そういう人たちの国際感覚も、なおのこと疑わざるをえない。

 これで思い出したのが、昨年夏の出来事だ。

 ドイツ・バイロイトで毎年夏に行われるワーグナーの音楽祭に、主役としてデビューするはずだったロシア人歌手が、本番直前に降板させられた。彼の胸に、かつてカギ十字の入れ墨があったことを、ドイツのメディアにすっぱ抜かれたためだった。

 この歌手は、ソ連が崩壊する時期に青春時代を過ごし、ヘヴィメタル系のロック音楽に心酔。その頃、体中にどっさり入れ墨を施した、という。その1つに、ナチスのシンボルでもあるカギ十字があった。後に別の入れ墨を上書きして消去済みだったし、彼がナチ信奉者というわけでもない。

 しかし、ドイツではナチスのシンボルを厳に禁じているだけでなく、ワーグナーの音楽がナチスのプロパガンダに利用された歴史的経緯もあって、彼の入れ墨は「若気の至り」では済まされなかった。「降板させたのは厳しすぎる」という声も聞こえてこない。

 なので、今回の「発言」が内外から問題視されたのは当然なのだが、「ナチス」ばかりをクローズアップするのは、ポイントを外しているような気もする。では、問題の本質はどこにあるのか。考えてみても、「発言」の文字起こしを見ているだけでは、麻生氏がいったい何を言いたいのか分かりにくく、真意がつかみにくい。

 麻生氏本人は、憲法改正についての論議は「喧騒」の中ではなく、「落ち着いて」やるべきだと言いたかった、と述べている。実際、「発言」においても、「静かに」やろうと呼びかけている。

 確かに、憲法については、落ち着いた環境の中で冷静に議論をすることが大切だ。現在のように、領土や歴史認識を巡って周辺諸国との関係が悪化し、日本国内でも威勢のいい好戦論が飛び交う中での憲法改正論議を諫めたものであれば、これは正論と言うべきだろう。

 しかし、「発言」はそのような文脈でなされたわけではない。「喧騒」の例として、靖国神社への参拝を「マスコミが騒ぎにした」ことを挙げ、そのうえで「静かに」憲法を改正した先例として、「ある日気づいたら変わっていた」というナチスの手法を取り上げた。

 その真意を読み解くためには、この「発言」がどこで、誰に向けて語られたものなのかを確認しておく必要があるだろう。

 「発言」は、民間のシンクタンク国家基本問題研究所(国基研・櫻井よしこ理事長)が7月29日夜に行った月例研究会でなされた。国基研は、憲法第9条を改正して自衛隊を国防軍とし、機能を強化する自民党の憲法改正案を支持する意見広告を出すなど、積極的に憲法改正を主張している。この月例研究会には、麻生氏の他、西村眞悟、笠浩史両衆議院議員がパネリストとして呼ばれた。西村氏は、タカ派で過激な発言で知られ、従軍慰安婦を巡る橋下徹大阪市長の発言があった際には、「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」などと言って、日本維新の会を除籍となった。笠氏は民主党所属だが、民主党政権時代に同党所属の政務三役として初めて終戦記念日に靖国神社を参拝したり、安倍首相が提唱した憲法96条改正に賛同するなどの点で、国基研と方向性を一にしている。

 こうした、声を大にして改憲を主張するタカ派な人たちに対して、「わーわー騒がないで」「喧騒のなかで決めないで欲しい。それだけはぜひお願いしたい」と麻生氏は言った。大きな声で憲法改正を説いて、マスコミや反対世論の「騒ぎ」を招けば、靖国神社の参拝のごとく、中国や韓国も騒ぎ出してやりにくい。だから、「誰も気づかないで変わった」手法を拝借して、もっと静かに、上手にやろうじゃないか、協力をお願いしますよ、と彼は呼びかけたのだ。

 現に、櫻井よしこ氏は、8月5日付産経新聞でこう書いている。

〈私はそれを、改正を急ぐべしという国基研と自分は同じではないという氏のメッセージだと、受けとめた。〉

 麻生氏の念頭には、今年春に安倍首相が憲法96条先行改正を宣言した時のことがあったのではないか。憲法改正の発議を国会議員の過半数に引き下げ、憲法を変えやすくしようという、この提案には、憲法9条改正論者の学者も、反対の論陣を張った。新聞やテレビでも、問題は大きく報じられた。世論調査でも、96条先行改正には国民の支持は得られなかった。

 前のめりになりすぎれば、かえってうまくいかない。それを感じた麻生氏は、もう少しうまくやるべし、と声高な改憲論者をなだめるつもりで、このような「発言」をしたのではないだろうか。

 そして実際に、「静かに」憲法を改正する動きは始まっている。


○異例中の異例な人事、安倍カラー発揮の狼煙か

 麻生氏の「発言」についての野党の追及を封じ、臨時国会が閉会した後、政府は内閣法制局長官の人事を発表した。山本庸幸長官を退任させ、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈の変更に前向きだとされる小松一郎駐仏大使を当てる。内閣法制局は、政府が提出する法案が憲法や法律に照らして問題がないかチェックし、政府に憲法解釈を助言する機関だ。憲法・法令解釈の一貫性を重視し、歴代長官は次長が昇進する繰り上がり人事が常だった。今回の異例中の異例ともいえるこの人事は、これまで自重していた「安倍カラー」を、これから存分に発揮していく、という狼煙なのかもしれない。

 今回の人事については、頭の固い内閣法制局が柔軟に対応するようになる、と歓迎する向きもある一方、禁じ手だ、との批判の声も出ている。いずれにしろ、憲法改正の手続きを取らず、解釈を変更することで、事実上の改憲を行う方向で事態は動いているように見える。

 内閣法制局という役所と政府のトップの中での議論は、国民には見えにくい。理屈をこねまわす解釈論は、分かりにくい。国民投票にかけられるわけではなく、毎日の生活には直結しないテーマでもあり、関心も高まりにくい。なので、憲法の条文変更に比べて、マスメディアの報道も地味になりがちだろう。視聴率が気になるテレビ番組はなおさらだ。

 しかも国会では、自民党が多数を握る。衆議院では議席占有率が6割を越し、参議院でも過半数にあと7席。集団的自衛権の行使について公明党は慎重だが、これを理由に政権離脱をすることはしないだろう。野党の中にも賛成する政党や議員はいる。安倍首相は、日本維新の会のブレーンでもある経済評論家の堺屋太一氏を内閣参与に任命した。維新の松井一郎幹事長は、「本当に期待している」と述べて、政権との連携が深まることへの期待感を示した、という(8月9日付毎日新聞)。衆院で58、参院で9の議席を持つ維新は、集団的自衛権の行使に賛成。憲法改正は衆参それぞれの議院で3分の2以上の賛同を得なければ発議できないが、解釈改憲によって法律を通すのであれば、過半数の賛成でよい。水面下での交渉が成立すれば、まさに麻生氏が言う、「ある日気がついたら憲法が変わっていた」事態になりかねない。

 ナチスは、憲法の実質的修正になるため、総議員の3分の2以上の賛成が「全権委任法」を通すために、議院運営規則を修正し、欠席議員を棄権扱いして母数から外した。共産党などの反対派は逮捕するなどして国会から排除されており、圧倒的賛成多数で可決することになった。法律をいじることで、憲法改正の手続きを取らず仕手、憲法を変えてしまう。そんな「手口」に、我が日本の政府は「学ぶ」のだろうか…。

 しかし、政治家や公務員を縛るはずの憲法を、政治家や公務員が勝手に変えていい訳がない。憲法を変えるには、こんな”裏技”ではなく、国民に分かりやすい形で問題が提起され、オープンで十分な議論をすることが必要だ。本当に必要な改憲であれば、政府はその旨をきちんと国民に説明し、正規の改正手続きをとるべきだろう。与党は、このように国民の間で意見の分かれる課題や憲法にかかわる問題まで、「勝手に決める政治」を負託されたわけではない。

 「ある日気がついたら…」という事態にならないよう、マスメディアも国民も、政治の動きには、これまで以上に目を光らせ、耳をそばだて、大いに「騒いで」いかなければならない、と思う。

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<筆者紹介> 江川紹子  1958年生まれ。東京都杉並区出身。ジャーナリスト。神奈川新聞社を経てフリーに。オウム真理教問題、冤罪事件や災害、教育問題などについて取材活動を重ねる。コメンテーターとしてのテレビ番組出演や雑誌記事執筆、著作も多数。


 

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コメント
 
01. 2013年8月12日 10:44:54 : dmkMWIGdew
「自民党」は改名し「売国・詐欺師党」とすべき。

02. 2013年8月12日 11:14:06 : DavyLlJwp2
「麻生発言」に対するバランスのとれた、良い総括ね。さすが、江川ショーコ。で爺

03. 2013年8月12日 16:38:39 : RDpY5bo2m2
安倍自民が改憲を画策していますが、多くの国民が反対しているのに通るわけがありません。

特に集団的自衛権やPKOでの武力行使に参加など、断固反対。
この辺りは、共産党はよい主張をしていますね。


04. 2013年8月13日 00:06:04 : YxpFguEt7k
「政治家や公務員を縛るはずの憲法を、政治家や公務員が勝手に変えていい訳がない。憲法を変えるには、こんな”裏技”ではなく、国民に分かりやすい形で問題が提起され、オープンで十分な議論をすることが必要だ。」

まったく同感です。今こそ大騒ぎが必要です。発信力をお持ちの方には、大いに期待しております。


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