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マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件に対する隠ぺい捜査の実態とは
http://bylines.news.yahoo.co.jp/maedatsunehiko/20130810-00026785/
2013年8月10日 6時58分 前田恒彦 | 元特捜部主任検事
1.取調べに至る経緯
(1) 突然の来訪
昨年(2012年)の5月8日。
満期出所が1週間後に迫った私は、配役先の静岡刑務所・図書計算工場で担当刑務官らに謝辞を述べた後、釈放前教育用の独居房に移った。
ここは、教育ビデオを見たり、必要書類を作成したり、不要品を処分するなど、刑務所における最後の反省の時間を一人静かに過ごすところだ。
その矢先の午後1時すぎころ、「取調べだ」と言われて刑務官から突然呼び出され、事務棟にある取調べ室に向かうこととなった。
受刑者には事前に何の情報も伝えないというのが刑務所のルールだから、誰が何のために来たのか全く分からない。
すると、取調べ室には2名の男性がいた。
私のよく知る中村孝検事と、初めて見る東京地検の若い検察事務官だった。
(2) 検事の人物像
この中村検事は、検察の序列で言うと私の6期上であり、先輩に当たる。九州出身。細身だが、当たりは柔らかい。
東京地検特捜部にも通算で2年在籍し、元建設大臣による受託収賄事件など、著名事件の捜査に携わった経験もある。
また、国税や証券取引等監視委員会と並ぶ「特捜部の兄弟組織」の一つ、公正取引委員会への出向歴もある。
上意下達やストーリー先行といった「東京特捜方式」を十分に知り尽くした人物だ。
他方、青森地検弘前支部時代の武富士放火殺人事件や、東京地検本部係時代の押尾学事件など、特捜事件以外の一般事件の捜査主任も数多く務めている。
法務総合研究所で副検事や検察事務官の指導担当教官を務めたり、東京高検で裁判員裁判支援担当を務めるなど、異分野の経験も豊富だ。
ただ、関西での勤務はなく、「東京系」「東回り」などと呼ばれる検事の一人だったため、検察内で関西を拠点としていた私とは仕事上の接点がなかった。
(3) 検事との関係
では、なぜ私が中村検事のことをよく知っていたのか。
私が電撃逮捕された大阪地検特捜部の証拠改ざん・犯人隠避事件で、東京高検から最高検の捜査応援に入り、大阪拘置所に勾留されていた私の取調べを連日担当していたのが、中村検事その人だったからだ。
中村検事は、最高検・高検・地検と全ての担当業務を取り扱える併任辞令を受け、私の裁判に立ち会ったほか、現在も公判が続いている元大阪地検特捜部長らによる犯人隠避事件の裁判にも立ち会っている。
大阪地検特捜部の証拠改ざん・犯人隠避事件 関係者相関図
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中村検事は、私の起訴後も、私と会うため、大阪拘置所や静岡刑務所に何度となく足を運んでいた。
これは、先ほどの犯人隠避事件で私が検察側の最重要証人だったため、補充的な取調べを行うとともに、いわゆる「証人テスト」の実施を主たる目的としたものだった。
しかし、そうした来訪も、私が元特捜部長らの裁判に証人として出廷した一昨年(2011年)が最後であり、昨年に入ってからは一度もなかった。
2.取調べの目的
(1) 市民団体の刑事告発
中村検事の話では、陸山会事件に関して市民団体が田代政弘元検事やその元上司らを刑事告発しているので、参考人として私の取調べを行いたいとのことだった。
田代元検事は、小沢一郎代議士の元秘書である石川知裕氏の取調べを実施した際、内容虚偽の捜査報告書を作成したとの事実や、その顛末に関して小沢公判で偽証したとの事実で告発されているという。
また、田代元検事の元上司に当たる当時の東京地検特捜部長や副部長、主任検事らは、検察審査会に事件記録を送る際に不起訴方向に傾く一部の証拠を隠して検察審査会を騙し、小沢代議士の起訴相当議決を導いたといった偽計業務妨害などの事実で告発されているという。
市民団体は、告発の根拠として、小沢代議士の裁判における私の証言を引用しているとのことだった。
これら告発事件全体の捜査を統括し、起訴・不起訴を決する主任検事を務め、かつ、一連の事件のキーマンである田代元検事の取調べを自ら担当していたのが、この中村検事だった。
東京地検特捜部の陸山会・虚偽報告書事件 関係者相関図
http://rpr.c.yimg.jp/im_siggobGC75FdwP7ata_EleI3ng---x540-n1/amd/20130810-00026785-roupeiro-002-33-view.jpg
(2) 人選に対する疑念
私は、中村検事の話を聞き、検察の人選には問題があると感じた。
というのも、この中村検事は、陸山会事件の捜査主任として市民団体から刑事告発されていた木村匡良検事と同期であり、以前から木村検事をよく知る人物だったからだ。
検察内の序列は任官の年次によって決まり、時として同期がライバルになることもあるが、むしろ同期というのは仲間意識の方が先に立つものだ。
これでは公平公正な捜査など期待できないし、仮に不起訴となった場合、間違いなくその妥当性に疑念を持たれる。
(3) 潰しの取調べ
私は、中村検事から来訪目的を聞き、同じ組織に身を置いていた者として、中村検事が「潰しの取調べ」に来たのだとすぐに分かった。
ここで言う「潰し」とは、起訴・不起訴いずれの場合にも使う検察用語であり、本来は裏付け捜査を徹底して行うといった意味だ。
しかし、それとは別に、既に起訴が事実上決まっている事件では無罪方向に傾く証拠を、逆に不起訴が事実上決まっている事件では有罪方向に傾く証拠を、文字通り「潰す」ということを意味する場合もある。
そもそも最高検は、弁護側から石川氏の「隠し録音」を入手した早い段階で、田代元検事が作成した捜査報告書の内容が虚偽であると把握していた。
しかし、田代元検事を認知立件せず、逮捕せず、関係先の捜索もせず、「記憶の混同」などといった子供じみた弁解をろくに追及しなかった。
最高検では、組織に与える影響の大きさを考慮し、この件を事件化せず、起訴しないとの方向性が事実上決まっていたからだ。
他方、私は、これに遡る一昨年(2011年)12月、小沢公判に証人として出廷した際、陸山会事件の違法不当な捜査の実態や、平然と証拠隠しに及んできた検察手法の問題点などを赤裸々に証言した。
これは、通常の刑事裁判と異なり、検察官役を務めていた指定弁護士がもともと刑事弁護の専門家だったため、彼らにとって有利不利を問わず、自由に証言させようとのフェアな態度で公判に臨んでいたことが大きく影響した。
ただ、私の証言は、田代元検事らを不起訴にしようと目論む最高検にとって、明らかに邪魔なものだった。
また、不起訴となれば、田代元検事らを告発した市民団体が検察審査会に審査の申立てをするから、将来の検審対策としても、絶対に私の証言を潰しておかなければならなかった。
ただでさえ不起訴処分を「不当」とされる可能性が濃厚の事案なのに、審査員が飛びつきそうな私の証言を潰さないままだと、それこそ検察にとって最悪の「起訴相当」という議決が下されるおそれが高まるからだ。
もっとも、私の証言は真実を語ったものであり、それは検察自身が一番よく分かっていることだ。
他方、検察は、元大阪地検特捜部長らの犯人隠避事件では、彼らを刺した私の証言を極めて信用性が高いものと位置づけている。
その手前、陸山会事件に関してだけ私を嘘つき呼ばわりし、私の証言を虚偽だと言いくるめることもできない。
まさにジレンマだが、そうすると、いかにして私の証言を潰すかが問題となる。
このような場合、検察がよく使う手は
・ Aという証言は、これこれという趣旨であり、Bを意味するものではない
・ Aについては分かるが、Bは分からないし、知らない
といった形で、証言の影響が及ぶ射程範囲をごく狭いものに限定してしまうというやり方だ。
告発事件は証言の射程範囲外にあるということにすれば、少なくとも告発事件との関係では私の証言を無意味ならしめることができるし、その信用性に踏み込んだ検討をする必要もなくなる。
(4) 検察の理念
私は、中村検事に対し、「私がどういう態度に出ると思いますか」と聞いた。
すると、中村検事は、ニヤリと笑みを浮かべ、「そりゃあ、田代君の立場を考えてあげるんじゃないの」と言った。
私は、この言葉を聞き、最高検の意向を受けて動いている中村検事も、やはり先ほど挙げたような手を使い、目障りな私の証言を潰したいのだと分かった。
ただ、この取調べに先立つ一昨年(2011年)の9月には、大阪地検特捜部の一連の不祥事を受け、最高検が「検察の理念」と題する基本姿勢を策定し、公表していた。
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/h_tokyo/img/rinen.html
この理念は
刑罰権の適正な行使を実現するためには、事案の真相解明が不可欠であるが、これには様々な困難が伴う
その困難に直面して、安易に妥協したり屈したりすることのないよう、あくまで真実を希求し、知力を尽くして真相解明に当たらなければならない
とした上で
積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う
としていた。
私は、こうした崇高な理念を掲げ、まさに変わろうとしている古巣検察を信じたいし、もう一度だけ中村検事のことを信じてみたいとの思いもあった。
また、私が検察に真相を話す機会はこれが最後となるであろうから、満期出所を1週間後に控え、「心の渦」を全て刑務所に置いていきたいとの思いもあった。
そこで私は、「本当の話をしますね」と切り出し、小沢公判で尋ねられなかった問題を含め、私が知る事件の背景事情などを包み隠さず語ることとした。(続)
前田恒彦
元特捜部主任検事
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。獄中経験もあり、刑事司法の実態や問題点などを独自の視点でささやく。
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