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政府が秋の臨時国会に提出する「秘密保全法案」の骨格が8日分かった。
外交や防衛などに関わる秘密を漏えいした公務員への罰則を強化し、政務三役ら特別職も対象とするのが柱。安倍政権は今年度中に外交・防衛政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させる方針で、厳格な情報保全措置が必要と判断した。ただ、国民の「知る権利」を侵害することには懸念も強く、国会審議の焦点になりそうだ。
法案では、保全する秘密を(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全と秩序の維持??の3分野に分類。特に高度な秘匿が必要で「国の存立にとって重要」と認めた情報を「特別秘密」に指定し、保全期間を決めて管理する。行政機関の長が許可すれば、保全期間を延長できる「更新制」も取り入れる。
漏えいへの罰則は懲役5年か10年で調整しており、悪質なケースを想定して10年とする案が有力だ。対象は一般公務員に加えて政務三役ら政治家を含む特別職にも拡大する。特別秘密を入手するため公務員などをそそのかしたり扇動したりした第三者も処罰される。報道規制に懸念があることから、処罰対象は「社会通念上是認できない行為」による情報の取得とする。
特別秘密を取り扱う公務員は「秘密情報取扱者」に指定し、政府が「適性評価(クリアランス)」を実施する。犯罪やアルコール・薬物中毒などの履歴を調査し、有資格者に取扱者を限定することも盛り込む。
安倍政権が検討を急ぐのは、日本版NSCは同盟国などとの高度な情報共有が必要となるためだ。日本では2007年の海自3等海佐によるイージス艦情報漏えい事件などが相次ぎ、米国などが懸念。現行法でも公務員の情報漏えいは国家公務員法(最高懲役1年)や自衛隊法(同5年)で処罰されるが、罰則が軽い上、政治家は守秘義務にとどまることが問題視されていた。
自民党内では「危機管理」を重視する安倍政権の意向を受け、早期成立を目指す意見が強いが、与党の公明党内にも「知る権利」を侵害することへの懸念があるほか、共産、社民両党が法案に反対を表明している。米国では国防情報の漏えいに10年▽英国は防衛情報や通信傍受に関する情報の漏えいに2年▽フランスは公務員による国防上の秘密漏えいに7年??の自由刑が設けられている。
◇秘密保全法案の骨格
・国の安全▽外交▽公共の安全・秩序の維持??の3分野で政府が「特別秘密」を指定
・特別秘密の漏えいに対する罰則を厳罰化(最高懲役10年を想定)
・罰則対象を公務員に加え政務三役ら特別職に拡大
・特別秘密の指定は期間を定め、更新制で延長も可能に
・秘密情報取扱者には犯罪歴の調査など「適性評価」を実施
◇解説 議論の経緯、不透明
秘密保全法案の骨格は、沖縄・尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突した様子を撮影した映像がインターネット上に流出したことを受け、民主党政権が秘密保全制度創設のために設けた有識者会議の報告書(2011年8月)に沿った内容だ。だが、有識者会議の議事録は未作成で、会議内容を書き留めた事務担当者のメモも廃棄され、どんな議論を経て作成されたのか分かっておらず、国民的な議論は不十分なままだ。
そもそも特別秘密は、自衛隊法改正(01年)で盛り込まれた防衛秘密がモデル。毎日新聞が昨年、防衛秘密の指定・解除などの運用に関する情報の開示請求を防衛省にしたところ、全面不開示だった。適切な秘密指定かどうかを外部からチェックすることは困難で運用実態は極めて不透明だ。こうした点の改善をどう図るかは見えていない。
民主党政権は秘密保全法案の提出に先立って、公開対象の範囲拡大を柱とした情報公開法改正案を11年に提出(衆院解散で審議未了のまま廃案)したが、安倍政権では再提出の見通しはない。
現状のままでは、秘密保全法案は国民の知る権利を阻害しかねない。
http://mainichi.jp/select/news/20130809k0000m010130000c2.html
●秘密保全法案とは(日本弁護士連合会)
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