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戦略国際問題研究所(CSIS)といえば、安倍首相が今年2月下旬の訪米で政策スピーチを行った“高名なる”シンクタンクである。
安倍首相自身、一般向けの愛国保守的な口先とは違い、CSISのハムレ所長と同様、本音としては「靖国参拝自粛」・「尖閣問題の“棚上げ”(日中関係改善)」・「解釈改憲」を考えている。
CSISハムレ所長の発言は、安倍首相が“本音”で動くためのサポートと考えた方がいいだろう。
日本の支配層で米国の意向に逆らおうというひとはほぼ皆無だから、今後予想される安倍首相のリベラルな動きに非難がましいことを言う人はいないはずだ。
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首相の靖国参拝、自粛を 米CSIS・ハムレ所長 尖閣問題の棚上げ案、外交解決へ唯一の方法
米国の有力シンクタンク、米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は日本経済新聞社のインタビューに答え、安倍晋三首相の在任中の靖国神社参拝は自粛すべきだとの考えを表明した。また、日中両国の偶発的な衝突を防ぐ方策として、沖縄県・尖閣諸島問題を棚上げする案は長期的な解決方法になり得るとの見解を示した。
――安倍首相は第1次安倍政権で靖国神社に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と振り返っています。
「靖国神社は多くの日本人にとって象徴的で、大変に重要な存在だ。一方で中国や韓国など他国にとっても重要な意味を持つ。靖国神社参拝が素晴らしいという人々と、そうではないと思う人々の両方にとって象徴的な存在になっている」
「首相は在任中には靖国神社を参拝しないほうがいいと考える。首相は政府の立場を代表する。もし安倍首相が参拝すれば周辺国は反発する。外交の柔軟性を損ない、首相が達成したい外交目標の実現を難しくする。もし首相でなく、個人として参拝するのであれば、それは個人の権利だ」
――尖閣問題を棚上げする案は日中間の解決策になるでしょうか。
「尖閣問題は主権の問題だ。日中両国が尖閣の主権を訴えているものの、主権を分けることはできない。棚上げは日中衝突の危機を回避するために主権の問題とは別のくくりにするものだ。長期的には国連を含めこの問題を外交的に解決する唯一の方法だと思う」
「ただ、いますぐに尖閣問題を棚上げするのは無理だ。尖閣付近では日々、軍事的な緊張がある。2年先か5年先に向けて長期的に解決を探ることになるのだろう。同時に日中は政治的な危機を引き起こさないよう十分に気をつけていかなければならない」
――首相は憲法改正に意欲を示しています。
「首相は憲法改正を推し進めようというより、(自衛権など)憲法9条の解釈の見直しを追求しようとしている。憲法9条の解釈を正しい文脈に変えることは重要だ。それは日本が将来に向けていわゆる『普通の国』になる根拠の一つとなる。日本が安全保障上の建設的な相手国になり得るという意味で、歓迎する」
――オバマ米大統領は次期駐日大使にキャロライン・ケネディ氏を指名しました。
「ケネディ家は米国で最も有名で、この人事は日本への尊敬の印だ。外交・安全保障の専門家ではないとの指摘があるが、米国の大使のほとんどが専門家ではない」
「大使は米国を代表しており、大統領と個人的な関係にあるかどうかが重要だ。その意味でケネディ氏はオバマ氏と極めて近い。あとは優秀なスタッフを抱えて仕事を進めることだ」
John Hamre ジョンズ・ホプキンス大で博士号取得。クリントン政権で国防次官、国防副長官を歴任。2000年1月から現職。63歳。
米アジア戦略 同盟の安定重視
靖国神社参拝を巡るハムレ氏の考えはオバマ政権の本音である。同盟国である日韓両国と負担を分かち合いながらアジアでの主導権を維持するのが米国の基本戦略。靖国参拝は中国につけいる隙を与え、日韓関係をギクシャクさせる恐れがある。
参院選の大勝により、衆参両院の「ねじれ」状態が解消し、安倍首相が安定政権をつくる環境は整った。米国は腰を据えて同盟強化に取り組む時期とみており、オバマ米大統領は来春の日本訪問を計画する。靖国参拝を政治問題化させたくない米国の願いは届くか。
(ワシントン=吉野直也)
[日経新聞8月6日朝刊P.7]
※ 参考資料
安倍首相CSIS米戦略国際問題研究所政策スピーチ
平成25年2月23日
「日本は戻ってきました」
ハムレさん、ご親切な紹介ありがとうございます。アーミテージさん、ありがとうございます。グリーンさんもありがとうございました。そして皆さんがた本日は、おいでくださいましてありがとうございます。
昨年、リチャード・アーミテージ、ジョゼフ・ナイ、マイケル・グリーンやほかのいろんな人たちが、日本についての報告を出しました。そこで彼らが問うたのは、日本はもしかして、二級国家になってしまうのだろうかということでした。
アーミテージさん、わたしからお答えします。日本は今も、これからも、二級国家にはなりません。それが、ここでわたしがいちばん言いたかったことであります。繰り返して申します。わたくしは、カムバックをいたしました。日本も、そうでなくてはなりません。
総理の職を離れて、5年という長い年月を送りました。それは、わたしにとって省察の時となりました。何はともあれ、これからの日本はどこに立つべきか、ということについてであります。あれこれが、果たして日本にはできるだろうかとは考えませんでした。何を、日本はなし続けねばならないかに、関心が向くのが常でした。そのような場合、変わらず胸中にありましたのは、次の3つの課題であります。
いまやアジア・太平洋地域、インド・太平洋地域は、ますますもって豊かになりつつあります。そこにおける日本とは、ルールのプロモーターとして主導的な地位にあらねばなりません。ここで言いますルールとは、貿易、投資、知的財産権、労働や環境を律するルールのことです。
第二に、日本はこれからも、誰しもすべてを益すべく十分に開かれた海洋公共財など、グローバルコモンズの守護者であり続けねばなりません。
日本とはかような意欲を持つ国でありますからこそ、第三に、わが国は米国はじめ、韓国、豪州など、志を同じくする一円の民主主義各国と、いままで以上に力を合わせなくてはなりません。
ルールの増進者であって、コモンズの守護者、そして米国など民主主義諸国にとって力を発揮できる同盟相手であり、仲間である国。これらはすべて、日本が満たさなくてはならない役割なのです。
わたしはまた、地球儀を眺めました。見るうち気づくこととは、日本という国は、皆さん方の長きにわたる同盟国として、またパートナーとして、過去半世紀以上になんなんとするあいだ、アジア・太平洋の平和と繁栄から裨益し、また、それに貢献してきた国だということでした。
支えたものとは、いうまでもなく、われわれの間にある同盟であります。アジアが復興を遂げつつある時ぞ今、日本はわれわれに共通のルールと価値を増進し、コモンズを守り、地域の栄えゆく国々と歩みをともにして伸びていくため、より一層の責任を負わねばならないのです。経済的不調との戦いに、かまけているゆとりなどありはしないのです。
わたしはまた胸中に地球を思い描き、テロとの戦いにおいて、日本は頼りになるパートナーでなくてはならないと思いました。決意は、アルジェリアで10人の日本人、3人のアメリカ人エンジニアが殺されたいま、より強いものとなっています。
世界はなお日本を待っていると、わたしはそう思いました。人権の伸長において、貧困、病との、地球温暖化やもろもろとの戦いにおいてです。だからこそ、ご列席のみなさん、わたくしは再び総理になろうといたしました。だからこそ、わたしは強い決意をもって、日本経済を建て直そうとしているのであります。
いましがたわたくしは、アジアが長足の進歩を遂げつつあると申しました。が、ただひとつ、例外があると付け加えるべきでした。その例外とは、もちろん北朝鮮です。
彼らが核実験に及んだのを受け、わが政府は追加の制裁を平壌に対して課しました。核開発に向けた北朝鮮の野望は、容認されてはなりません。核開発、ミサイル技術開発をあきらめ、拉致したすべての日本国民を解放しない限り、わが政府は、およそ報奨めいたものを与えるわけにいきません。
本件は単なる地域的問題なのではありません。グローバルな懸念事項です。わが政権下、日本は米、韓、その他の諸国、そして国連と、倦むことなくともに働き、北朝鮮が野望を実現するのを阻まなくてはなりません。
わたしの上着の、襟がご覧になれますか。ブルーリボンのバッジをつけています。これには目的がありまして、来る日も来る日も、自分は、1970年代から80年代にかけ北朝鮮が拉致した日本人を取り返さなくてはならないということを、自分に思い出させるためであります。拉致された人たちの中には横田めぐみという少女、まだ13歳のいとけなさだった少女もおります。
日本とは、人権をどこまでも重んじる国として、強くあらねばならないゆえんであります。経済において強く、そして、国の守りにおいて強くなければならないのです。
申し上げます。日本もまた、厳しい財政制約の下にあります。けれども、わたくしは政府に命じ、国土防衛のため予算を増額するようにいたしました。長年月において初めてのことであります。
ですから本日は、この場で、リッチ、ジョン、マイクやお集まりのご友人、ご賓客のみなさんのもと、わたくしはひとつの誓いを立てようと思います。強い日本を、取り戻します。世界に、より一層の善をなすため、十分に強い日本を取り戻そうとしているのです。
わたくしは、なさねばならない課題を現実とするべく、総理となる機会を選挙民に与えられました。わたくしはいま毎朝、大いなる責任の意識を重々しくも醒めて受けとめ、目を覚ますのであります。
いま、アベノミクスなるものがあります。わたしが造語したのではありません。つくったのはマーケットです。これは、3本の矢からなる私の経済活性化策のことを言います。日本では、デフレがかれこれ10年以上続いてきました。わたしのプラン、いわゆるアベノミクスとは、まずもってこのデフレを取り除くためのものであります。
プランは実のところ、幸先のよいスタートを切りました。最初の矢といたしまして、わたしは日銀を促し、いままで彼らができないと思っていた次元の仕事をさせました。内外の投資家は、これで日本株を買い始めました。輸出が増えるとともに日本産業が円滑な回転をするようになり、東京の株式指標は上昇しました。
第二の矢とは、大規模な補正予算を実施することです。十分に大きなもので、日本経済を2パーセント押し上げ、60万の雇用をもたらすものとなるはずです。
第三が、成長戦略です。民間消費と民間投資は、予想していたより早く現れるでありましょう。いまのところ、経済指標はみな上向きです。
これらの施策に、かつて試みたものがあるのは確かです。しかしおずおずとでしたし、いかにも逐次的でした。わたしのプランにおいて、矢は3本とも強いです。速いですし、遅滞なく放たれています。じき、日本は輸出を増やしますが、輸入がそれに連れて増加します。米国は、そこに裨益する第一の国でしょうし、中国、インドやインドネシアが後に続くことでしょう。
しかし、話はそれで終わりではありません。もっと重大な課題が残っています。日本の生産性を向上させる課題であります。日本の経済構造を、作り直すという課題です。女性には、もっと多くの機会が与えられるべきです。預金が多いのは主に高齢層ですが、租税負担が重くならないかたちで、若い世代に譲り渡すことができなくてはなりません。わたくしの政府は、いままさにそれを実行しています。
結論へ移る前に、中国について少々申し上げ、日米関係をわたしなりにどう定義するかをお話させてください。
初めに尖閣から。尖閣諸島が日本の主権下にある領土だということは、歴史的にも、法的にも明らかです。煎じ詰めたところ、1895年から1971年までの間、日本の主権に対する挑戦など、誰からも出てきておりません。いまも、未来も、なんであれ挑戦を容認することなどできません。この点、わが国の決意に関し、どの国も判断ミスをすべきではありません。日米同盟の堅牢ぶりについて、誰も疑いを抱くべきではないということであります。
同時にわたくしは、エスカレートさせようとは露ほども思っておりません。それどころか、わたくしの政府は、日本と中国の人的交流のため、いままで以上の資金を投じようとしています。
わたくしの見るところ、日中関係は日本がもつ最も重要な間柄のひとつです。かつてわたしが命名した「戦略的互恵関係」の追求において、わたくしは、手を休めたことのない者であります。わたくしの側のドアは、中国指導者のため、常に開いているのです。
そこでようやく、日米の間にあるわたくしたちの繋がりについて一言申し述べることができます。
日米両国が地域と世界により一層の法の支配、より多くの民主主義、そして安全をもたらすことができるよう、さらには貧困を減らすため、日本は強くあり続けなくてはなりません。それが、第一の点です。
そこで、わたしは、防衛計画大綱の見直しに着手しました。防衛省予算は増額となります。それらすべては、いま申しましたような課題をなさんがためであります。
それにしても、素晴らしいことです。日本と米国の間に築かれた紐帯は、良き日も悪しき日もしのいで今日に至りました。米国史全体の、4分の1を上回る長きにわたって、継続してきたのであります。
けれどもそれは、驚くに値しないことです。米国は、世界最古にして最大の、海洋民主主義国、そして日本は、アジアで最も経験豊かで、最も大きなリベラル・デモクラシーであって、やはり海洋国なのでありますから、両者はまことに自然な組み合わせなのです。
これまで長い間そうでしたし、これからも長の年月、そうであることでしょう。
いま、世界でいちばん大きなエマージング・マーケットは、ミドル・アメリカなんだと言う人がおります。ダコタとか、カロライナのことです。
そこで結論として、みなさんに申し上げたいのですが、わたくしの課題とは、未来を見つめていくこと、そして日本を、世界で2番目に大きなエマージング・マーケットにすることであります。地域と世界にとって、いままでにも増し頼りがいのあるパートナー国にすることなのです。
前に伸びる道は短いものでないことを、わたしは承知しています。しかし、いまわたくしは、日本をそうした国とするためにこそ、カムバックをしたわけであります。世界をよりよいものとするために、日本は一層の努力をしなくてはなりません。わたしもまた、目的実現のため懸命に働かなくてはならないのです。
みなさん日本は戻ってきました。わたしの国を、頼りにし続けてほしいと願うものです。
有難うございました。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0223speech.html
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