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日本の今後を予測する田原氏
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130805-00000304-alterna-soci
オルタナ 8月5日(月)15時38分配信
麻生太郎副総理による「ナチスの手口に学べ」発言が大きな波紋を投げ掛けている。本人は発言を撤回したが、謝罪や辞任は明確に否定した。安倍晋三首相も幕引きを狙う。しかし今回の麻生発言は、日本や世界の民主主義の威厳を大きく損なったのではないか。ジャーナリストの田原総一朗氏に聞いた。(聞き手・オルタナ編集長=森 摂、オルタナS副編集長=池田真隆)
――今回の麻生太郎発言には、日本の民主主義の危機を感じます。「右傾化」という言葉自体は昔から言われており、30年ほど前には中曽根康弘さんが「不沈空母発言」で大騒ぎになったこともあります。しかし今回の「ナチスの手口を学べ」発言はちょっと度を過ぎているのではないでしょうか。
田原:まず、バックグラウンドから話したい。日本が右傾化という理由の一つは、戦争を知る世代がいなくなったからだ。戦争を明確に覚えている最後の世代がぼくらの世代。ぼくは昭和9年生まれで、敗戦の年に小学校5年生だった。
5年生の1学期までは軍事教育を受けていた。そこで、こう教えられた。「この戦争は聖戦である。アメリカ、イギリス、オランダなどの国に対してアジアを解放して独立するための戦いである。大東亜戦争なのだ。君らもこの戦争に参加し、そして、死ね。君らの寿命は20歳だと思え。天皇陛下のために死ぬのだ」。
ところが、夏休みが終わり、2学期になると教師の教えが変わった。「あの戦争は侵略戦争であった。悪い戦争であった。民主主義の国であるアメリカやイギリスに戦争を仕掛けてしまった」。
そして、1学期までは英雄だった東条英機らが戦犯として捕まった。突然、犯罪者になった。教師をはじめ、偉い人の意見が夏休みを機に180度変わった経験を、子どもの時に体感した。だから、偉い人の意見は一切信用できないと思うようになった。「国は国民を騙すもの」。今もこの考えに変わりはない。
この経験が、ぼくがジャーナリストになった一つの大きなきっかけだ。戦争を知っている世代は、とにかく戦争を嫌う。日本は平和な国でありたいと願う。ぼくも同じだ。
もう一つのエピソードとして、1965年までは、共産党が一番素晴らしい党だと思っていた。なぜなら、戦争中に最後まで戦争を反対したからだ。
そして、世界で一番素晴らしい国はソ連だと思っていた。日本中のマスコミがソ連は素晴らしい国だと言っていたからだ。言論表現の自由があり、階級制度もない、と。
1965年の7月に世界ドキュメンタリー会議がモスクワであった。日本からは、ぼくが選ばれて行った。それでモスクワ大学で学生たちとディスカッションしたいとリクエストした。
前年の10月にフルシチョフが失脚したので、学生たちにフルシチョフを失脚した理由を聞いた。当然ソ連は言論表現の自由な国だから、すぐに答えると思った。しかし、学生たちは真っ青な顔をして黙ったままだった。
コーディネーターが唇を震わせて「そういう話はしないで下さい」と遮った。ぼくは、「なぜだ?ソ連は言論表現が自由な国ではないのか?」と食い下がったが、「そういう話は一切ダメです!」の一点張りだった。
それで、ソ連には言論表現の自由がまったくなく、階級制度は米国や英国と比べてさらに厳しい国と分かった。がっくりきた。それで、共産主義・社会主義に対する幻想が一気に無くなった。
しかし、帰国後はそのことについて怖くて言えなかった。言ったらパージされていただろう。そのころのマスコミの常識は社会主義・共産主義が素晴らしいというもの。でも、いつかは言わなければいけないと思っていた。
ぼくがこの件について初めて公表したのは、1977年の文芸春秋誌だった。当時、日本では北朝鮮が地上の楽園と言われ、韓国が地上の地獄だと言われていた。ぼくは取材で韓国に行った。当時は朴正煕の独裁政権だったが、経済がどんどん良くなっていた。それで、その状況を記事にした。
すると、あちこちで糾弾集会が開かれた。「田原はカネをもらって書いた」などデマも流された。ありとあらゆる雑誌にそう書かれたね。でも、ぼくは糾弾されるのが好きだから、むしろ積極的に集会に出向いて議論した。
結果、1年半後には、ぼくの言う通りになっていた。そのころから「常識」というものを信用しなくなった。
それはともかく、ぼくは今の憲法は素晴らしいと思う。京都大学法学部教授だった高坂正尭さんもこう言われた。「田原ちゃん、あの憲法はしびれたね。言論表現の自由でしょ、国民に主権があるわけでしょ、で、結社の自由、宗教の自由もある。素晴らしいね」と。
でも、ぼくは今、護憲ではない。理由は、あの憲法ができたのは1946年2月だったからだ。内容は素晴らしいが、46年2月には自衛隊がなかった。当時、日本は本当に非武装だった。非武装で、日本を守るものが何もなく、アメリカ軍が守っているだけ。
だから、あの憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、我が国の安全を保持せんと決意した」と書かれている。
この文があるのに、その後に自衛隊ができたので、この憲法は変えるべきだと思う。それから、現憲法は「非武装」が前提なので、自衛隊は厳密に言うと憲法違反だ。だから、自衛隊を無くすか、憲法を変えるか。ぼくは憲法を変えるべきだと思う。
ただし、憲法9条の1項は変えるべきではない。その代わり、自衛権を入れて、自衛隊を認めるべきだ。これがぼくの考え。護憲ではなく「改憲」だ。
■憲法9条1項を変えるなら、安倍首相を潰す
――集団的自衛権についてはどう考えていますか?
田原:「集団的自衛権」と観念的に言ってもよく分からない。もっと論争したほうがいい。第一、ドイツは集団的自衛権を認めている。NATOに参加しているからだ。フランスも。だから、集団的自衛権は悪とは思っていない。ただし、集団的自衛権とは何かと論争すべきだ。抽象的概念で賛否を問うてはいけない。
集団的自衛権といっても、仮にワシントンが攻撃されたとき、自衛隊はワシントンに行けるか?行けっこないよね。
安倍晋三首相には「あなたがもし憲法9条の1項を変えるのなら、ぼくは大反対する。あなたを潰す」と直接、安倍総理に言った。彼もそこは変える気はないと言った。だから、安倍政権が右傾化しているとは思っていない。自衛隊は「専守防衛」だ。専守防衛という言葉がある限り、自衛隊は間違った方向には進まない。
※編集部注)日本国憲法第9条第1項: 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項: 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
―― 一方で国防軍に名前を変えるとの議論もありますが。
田原:名前よりも中身をどう変えるかが重要だ。専守防衛をやめるなら大反対だ。専守防衛である限りは、名前が変わろうがたいした問題ではない。
麻生副総理はこう言いたいのだと思う。「集団的自衛権で大騒ぎする。国防軍で大騒ぎする。いちいちこんなことで騒ぐなよ」と。この点については、麻生副総理の発言はまったく理解できない。
論議は大いにすべきだ。静かに憲法改正をすることはない。論議はやかましいくらい大いにするべきだろう。麻生副総理は議論するなと言っているみたいだ。
ドイツではワイマール憲法によって、ヒットラーのナチスが第一党に選挙で選ばれた。そしてワイマール憲法を潰した。論議もしないで潰した。この手口を見習えというのは悪い。これは大間違いだ。
ドイツでの一番の問題は、論議ができなかった点にある。もし、麻生副総理が論議することにも反対なら、冗談ではない。「ヒットラーの手口に学べ」というなら、アメリカ、ヨーロッパでは議員辞職は免れない。
この失言は自民党にとっても、大ダメージだ。単なる失言ではない。麻生副総理はサービス精神旺盛で失言が多い人。今までも、過剰すぎて、きわどいことを言いたがる癖が出ていた。しかし、今回の失言はその枠を超えた。
――麻生副総理は、発言は取り消しましたが、謝罪も辞任もしないとのことです。
田原:麻生副総理というよりも、自民党がどう対応するのかが重要。安倍総理も菅官房長官も全面否定しているが、自民党の対応が肝になる。麻生副総理は、サービス過剰の一貫だと思っているだろうが、海外からも批判は来ている。
自民党がどう対応するかが問われている。対応できなくては国会が大変なことになる。野党は総攻撃する。今回、野党は自民党を攻撃する方法がなくて惨敗したのだから、野党はチャンスだと思っているだろう。
■次世代のためを思うなら景気を良くすべし
――このまま自民党が右傾化に突っ走っていく心配はしなくて良いでしょうか。
田原:心配はあるが、われわれは断固阻止すべきだ。それに安倍内閣は右傾化する余裕などない。彼は、アベノミクスで景気を良くすることに100%集中する。だから、夏までは景気対策にエネルギーを集中する。9−10月に景気が良いと実感できなければ、アベノミクスは失敗に終わる。憲法の問題は、次の衆議院選挙(2016年)のテーマになるだろう。
――確かに、安倍総理は靖国神社には参拝しないと明言しました。経済に専念したいのでしょうが、その中でこの失言問題が起きました。
田原:安倍内閣にとってもう一つの大きな問題は、日中・日韓関係。首脳会議をどうするのかが大きなテーマだ。年内に首脳会議ができなかったら大失敗だろう。
――尖閣諸島問題ついてはどうお考えですか。
田原:日中で交渉し続けていれば良い。結局、決着は付かない。10年、20年と、ただ交渉をし続ければいい。
――竹島については。
田原:日本はそこまで(尖閣諸島)やる気はないのではないか。日韓併合という長い歴史があるが、日本は抗議してもいいと思っている。
――今の日本人は、日中・日韓問題もあり、少し右に傾いている気がします。
田原:戦争を知っている世代は、理屈はともかく、戦争に近づくことは断固反対を貫く。しかし、この世代がいなくなりつつある。ぼくらの世代で残っている人たちが頑張らなくてはならない。
――新大久保の駅前で、抗議デモを繰り返している若者たちもいますが。
田原:あれは大きな声にはならないよ。
――でも、日本には、中国や韓国を嫌っている人が増えているように思います。
田原:日本は国際的なロビー活動が下手だ。一方、韓国や中国はうまい。韓国の朴槿惠大統領は米国に行って、オバマと会談した上に、議会で演説もした。帰ってきたら、中国に行き、ロシアにも行った。
韓国、中国、米国の3カ国の首脳は2日間で約8時間の会談をした。日本が孤立している気がする。この孤立感は蔓延している。この孤立感が、中国や韓国をやっつけろという感覚になってしまっては危ない。そうならないために、どうすれば日中や日韓で首脳会談ができるのかを安倍総理は全力で考えなくてはいけない。
一部の右翼は騒ぎを大きくしているが、そこまで心配することはない。中国と戦争してもメリットがなにもない。北朝鮮の問題もあるのだから、日韓で連帯しないといけない。このことについて、首脳会議で早く決めてほしい。
早く日韓や日中の会議をするべきだ。もし、年内に日中・日韓首脳会談ができなかったら退陣だろう。しかし、安倍総理もそこまで馬鹿ではない。年内に首脳会談を実現し、空気が変わるはずだ。でも、もしも万が一、戦争の流れに進んだら、ぼくは身体を張って阻止する。
――いまの若者は政治についてどう考えていると思いますか。
田原:若者が右傾化しているとは思わない。すごい危機感を持ったら、むしろ共産党に入れるはずだ。国民も政府もそこまでバカではない。
――今回の参院選では、各世代とも投票率は下がりました。どうすれば、目の前のことばかりではなく、次世代のために考えられるようになりますか。
田原:景気をよくすることが次の世代のために第一だ。今回投票した人の99パーセントの関心が「景気」だっただろう。近年の若者たちは、長い不況のなかで、就職難に陥った。このままいくと年金ももらえない。社会保障をどうするのかが先決だ。憲法は先の先で良い。もし、国民が右傾化していたら自民党がここまでの議席を獲得できなかったはずだ。
ぼくはテレビ番組の仕事をしているから分かるが、国民はバカではない。ただ、マスコミは危ない。満州事変、日中戦争、太平洋戦争も、マスコミは後押ししていた。
――今はどういう点でマスコミの危機を感じますか。
田原:今はそこまで感じていない。けれど、麻生副総理の発言をしばらく報道しなかったテレビは危ない。
投票率が低いのは、国民の関心が景気と社会保障にしか向いていないから。自民党の景気対策に不満なら、野党に入れただろう。しかし、今は入れるべき野党がない。アベノミクスの対案を出すべきだったが、一つも出てなかった。
野党はだらしないし、無責任だ。しかし政治へ国民の関心が下がっているわけではない。対案があれば選択できる。対案や選択肢がなかったから、投票しなかっただけだ。
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