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政府が憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権行使の容認に向けた布石なのだろう。
その容認に否定的な“政府の憲法解釈の番人”内閣法制局の長官を、安倍晋三首相が交代させる方針を決めた。
安倍政権のシナリオ通りに進めば、米軍との共同行動に道を開くなど専守防衛を旨としてきた自衛隊の性質が一変しかねない。見過ごすことのできない人事だ。
法制局は、閣議に提出される政府の法案の審査などをする行政機関だ。事実上、政府の憲法解釈を担っており、長官は国会で答弁もしている。
集団的自衛権は、同盟国が攻撃を受けたときに自国が攻撃されていなくても実力で阻止できる権利をいう。法制局は「権利はあるが行使できない」との解釈を示してきた。憲法9条に照らし、国を防衛するための必要最小限度の範囲を超える―との判断だ。
安倍首相は小松一郎駐フランス大使を新長官に充てる方針で、8日にも閣議決定する。長官は内閣法制次長の昇任が慣例で、法制局に勤務した経験のない小松氏の起用は異例の人事になる。
第1次安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて設けた有識者懇談会に、小松氏は外務省の局長として関わっており、解釈見直しに前向きとされる。実現への壁を除く意図をうかがわせる。
参院選では経済再生を前面に出していたものの、ここに来て首相は「安倍色」を強めている。集団的自衛権の行使容認については先月下旬、フィリピンでの記者会見で「検討を進めていく考えだ」と明言した。アキノ大統領らに検討状況を伝えてもいる。
第2次政権で再び発足した有識者懇談会は、今月中旬にも議論を再開し、秋に行使容認の報告書をまとめる方向だ。政府は、これを受けて憲法解釈の変更を閣議決定し、行使の手続きを定める「国家安全保障基本法案」を国会に提出する筋書きを描いている。
集団的自衛権の行使を認めれば戦後日本の安全保障政策は大きく変わる。連立を組む公明党は行使容認に反対している。長官人事でも対応を問われる。
今回の人事は首相の専権事項であるにせよ、政府の憲法解釈に関わる法制局長官の交代だけに、事は重大だ。菅義偉官房長官は記者会見で、内閣の人事方針を「順送りでなく、適材適所」とした。これで済ますわけにはいかない。なぜ交代か、国民にきちんと説明する必要がある。
http://www.shinmai.co.jp/news/20130803/KT130802ETI090007000.php
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