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陸山会事件に絡む虚偽捜査報告書問題で、東京地検の田代政弘元検事が不起訴と決まった。最高検は「故意を認めるのは困難」というが、全く架空の報告書である。国民は納得できるだろうか。
「結論ありき」の再捜査だったのではなかろうか。市民で構成する検察審査会の「不起訴不当」の議決を受けた最高検の判断は、「記憶が混同した」という東京地検の検事だった田代氏の言い分をうのみにした印象が極めて強い。
「検事から『議員なのにうそをついたら選挙民を裏切ることになる』と言われたのが効いた」−。
小沢一郎「生活の党」代表の元秘書だった石川知裕議員(当時)は、捜査報告書の中では、そう語ったことになっている。
だが、全く架空のやりとりだった。石川氏の参考人聴取後に書かれた報告書の大半は、田代氏の“作文”である。石川氏はICレコーダーで隠し録音したため、虚偽の全容が明らかになった。録音の記録などはネット上に流出しており、田代氏の報告書と食い違うのは、誰の目にも明白なのだ。
田代氏は石川氏をその三カ月前にも聴取していた。「田代氏はベテラン検事で、二日前と三カ月前の取り調べの記憶が混同することは考えがたい」とした検察審の意見の方が説得力がある。
最高検は「相応の記憶力がある人物でも、記憶違いをおかす危険性がないとはいえない」と説明する。あまりに苦しい弁明である。陸山会事件で小沢氏に刑事責任を問えるかどうか、切迫した場面だったはずだ。そんな「記憶の混同」で、人生が左右されては、たまったものではない。
今回の不起訴で、この事件は幕引きとなる。仮に市民が強制起訴の道を選択していたら…。明白な虚偽文書に対し、裁判官は「有罪」を出すかもしれない。検察は自ら起訴し、裁判所の判断を仰ぐべきだった。その方が公正で、国民の納得を得られたはずだ。
検察が検察審を誤導して、小沢氏を強制起訴に持ち込んだ疑いさえ出ていた。田代氏が起訴されれば、特捜部長ら検察幹部の関わりもあぶり出される可能性があった。そうした視点に立つと、今回の判断には組織防衛の意図さえうかがえよう。
検察の暴走をどう止めるか。法務大臣の指揮権発動の在り方や参考人の録音・録画も含め、検察捜査を監視するシステムの再検討が必要である。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013080202000157.html
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