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私は若いころ、日本と日本人論に興味を持ち、べネディクト『菊と刀』やベンダサン『日本人とユダヤ人』などの本を読み、日本人は特殊だと思っていた。ところが、梅棹忠夫『文明の生態史観』を読んでショックを受けた。
梅棹氏はユーラシア大陸を二つの地域に分ける。第1地域はイギリス、フランス、ドイツなどの高度資本主義国である。ユーラシア大陸の東の日本もこれに入る。これらの国は、封建制から市民革命が起き、その後産業革命を経て、高度資本主義社会を築く。
ただし、イギリス、フランスが、封建制→市民革命→産業革命→高度資本主義社会、というように順序を追って発展したのに対して、遅れたドイツ、日本は市民革命と産業革命を同時に成し遂げなければならず、無理がでて市民革命は不十分であった。
第2地域はロシア、中国などのように、巨大帝国から市民革命を経験しないままに共産主義国に移った国だ。(現在、これらの国は無理が出て、自由主義が成熟しないまま1800年代の資本主義国から出直そうとしている。)
ドイツと日本が遅れた理由は異なる。ドイツの場合、大西洋への出口をオランダ、イギリス、フランスに阻まれた。イタリアも同じく、大西洋への出口をスペイン、ポルトガルに阻まれた。日本の場合は、江戸時代の鎖国である。理由は異なるが、封建制が生き残り、国家統一が遅れた。事情の同じプロイセン帝国を学んだのが大日本帝国である。
ビスマルクの下で発展したドイツは、その後イギリス、フランスに挑み、第1次世界大戦を起こす。敗戦し、ワイマール憲法が制定された。世界最先端の民主主義憲法で、現在の生存権に当たる社会権も規定されていた。
しかし、寛容すぎた。民主主義的秩序を否定する政党も結社の自由を持っていた。1929年大恐慌が起き、失業者が溢れる中、ヒットラーが登場する。ワイマール憲法のもと選挙という民主主義方式で政権を獲得し、公共事業と軍需産業によって不況を克服した。圧倒的な国民の信任を得て、全権をヒットラーに渡す授権法という法律を制定した。こうしてヒットラーは独裁者になった。
麻生副総理はその手口に学べと言っている。ドキッとした。
プロイセン帝国が第1次世界大戦に敗れ、ワイマール憲法を制定した。その30年後、大日本帝国が第2次世界大戦に敗れ、ワイマール憲法と酷似した日本国憲法が制定された。国民主権、基本的人権尊重、生存権を含む社会権の規定。これら憲法の土台はワイマール憲法と同じだ。これに平和主義と象徴天皇制が加わる。
第2次世界大戦後、ドイツはワイマール憲法の欠陥を反省し、ボン基本法(統一後はドイツ基本法)を制定する。民主主義的秩序を破壊する政党の結成を禁止した。極端な民族主義者と共産主義者は排除される。なぜなら独裁化するからだ。さらに憲法裁判所を持っている。憲法に反する法律が制定された場合、無効になる。このような民主主義を「闘う民主主義」という。
ワイマール憲法と同じく、日本国憲法は弱点を持っている。独裁者に寛容なのだ。民主主義的秩序を破壊する極左、極右の結社の自由が認められている。憲法裁判所を持たない。最高裁判所が憲法違反と言っても国会は無視できる。逆に司法権の独立と言いながら、最高裁判所の裁判官の指名(長官)、任命(その他)は内閣が行う。
現在の日本の状況は世界恐慌後のドイツに似ている。日本ではバブル崩壊後不況が続いている。不況克服のため出てきたのがアベノミクスだ。成功したら独裁化するであろう。既に憲法改正のため、第96条を過半数にしようと画策している。
失敗したら、世の常として戦争に走るであろう。経済学を知る者は、戦争こそ、最悪ではあるが、最良の景気浮揚策だと知っている。だからこそケインズは、「大砲よりバターを」と言ったのだ。アメリカのニュ―ディール政策が成功したかしなかったかについて賛否両論があるものの、日本との戦争で景気が回復したことは一致している。また戦後の日本の景気回復が朝鮮戦争であることは自明のことだ。
ドイツは、「プロイセン帝国→ワイマール憲法→ボン基本法(ドイツ基本法)」とたどり着き、現在の闘う民主主義体制を作り上げた。日本も「大日本帝国→日本国憲法→東京基本法(日本基本法)」にたどり着くのであろうか。独裁者が日本国憲法の中から出てはじめて、民主主義の価値を自覚するのであろうか。麻生副総理の発言に不安を感じるのは私だけであろうか。
いや、その前に日本は放射能の海になるだろう。日本を攻撃するのに核はいらない。性能の悪いミサイルで十分だ。攻撃国はこう言うだろう、「たまたま発射したミサイルが原子力発電所に当たっただけだ。我が国は核を使ってはいない」と。
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