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2013/7/23 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
参院選の圧勝から一夜明けたきのう(22日)、党本部で記者会見に臨んだ安倍首相は、高揚した表情でこう語った。
「決められる政治によって、この道をブレずに進んでいけと、国民の皆さまから力強く背中を押していただいたと感じております」
参院選を「親の敵」と言ってのけた首相である。衆参ともに自公で過半数を確保。仇討ちに成功して、さぞかし満足だろう。これでもう行く手を遮るものは何もない。やりたい放題だ。
この先、安倍政権はどんな政治を進めるつもりなのか。グローバル企業のための政治を始めるのは間違いない。「新自由主義」を掲げる安倍首相は、この国をグローバル企業の利益を最優先する社会に変えるつもりでいる。
法人税減税も、TPP参加も、安倍政権の経済政策は、要するに強い者をより強くする政策。大企業を徹底的に優遇するつもりだ。
筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)が言う。
「早くも安倍自民党は、あからさまな大企業優遇策を打ち出しています。法人税を下げるだけじゃない。人件費の負担を軽くするために“限定正社員制度”の導入も掲げている。限定正社員の人件費は正社員の2割安だから企業の利益は一気に増える。企業業績が上向けば、役員報酬も、株式配当も、株価も上がる。富裕層はさらに儲かるというカラクリです」
そもそもアベノミクスは、グローバル資本の陰謀みたいなものだ。異次元の金融緩和によって株や不動産が高騰しようが、株も不動産も買えない庶民に恩恵はない。儲かるのは、ひと握りの資産家だけだ。
自民党が圧勝したことで、政官財癒着の“利権政治”も息を吹き返している。大企業のための政治を推し進めてくるに違いない。
◆国民はグローバル企業の犠牲になる
しかし、グローバル企業を最優先する政治が行われたら、国民生活は疲弊する一方だ。
たしかに、いま世界は、労働者をなるべく安い賃金でこき使って、グローバル企業をボロ儲けさせる古典的な資本主義に戻りつつある。だが、収益を上げるためなら、国民生活なんてどうなってもいいというのが、グローバル企業のホンネだ。
なにしろ、日産にしろ、花王にしろ世界で稼ぐグローバル企業のほとんどが外国資本である。日産は72%が外国資本、中外製薬は75%、花王49%、三井不動産48%……。彼らは日本に執着する必要はないし、グローバル企業を儲けさせても、国民が豊かになるわけではない。
それでも、安倍首相は、グローバル企業を儲けさせることで、株価を上げるつもりらしいが、低賃金で酷使される国民はたまったものじゃない。
東海東京証券チーフアナリストの斎藤満氏が言う。
「恐ろしいのは、向こう3年は選挙がないことです。3年のうちに“グローバル企業栄えて国滅ぶ”という状況になりかねません。国民よりもグローバル企業の利益を優先すれば、どうなるか。アメリカを見ればよく分かります。企業の利益を追求した結果、格差が拡大し、貧困が深刻化してしまった。数年前には〈ウォール街を占拠せよ〉〈1%が富を独占している〉という抗議デモが全米に広がった。日本も1%の富裕階級と、99%の貧困層というアメリカのような社会になりかねません」
自民圧勝という選挙結果は、1%の富裕層の勝利だったということだ。
◆権力に分断され貧乏人同士で足を引っ張る最悪
なのに、国民は自民党を圧勝させて自分で自分のクビを絞めているのだから、どうにもならない。「民主党よりはマシだ」といった程度で一票を投じているのだから、本当にバカだ。
最悪なのは、犠牲にされる大衆がバラバラになっていることだ。一致結束しなければパワーにならないのに、権力サイドにまんまと分断されている。
低所得にあえぐ労働者が、生活保護受給者を「甘えるな」と批判し、派遣社員がカツカツの暮らしをしている正社員をねたんでいる。貧乏人同士で足を引っ張り合っている状況だ。自分の恵まれない環境に対する怒りを、権力ではなく、自分より弱い者にぶつけている。かと思えば、新大久保では一部の日本人が「韓国人を殺せ」とヘイトスピーチを繰り広げているありさまだ。
「かつて日本は“一億総中流”といわれるほど中間層が厚かった。だから社会にも余裕がありました。ところが、小泉政権が新自由主義を持ち込んだことで中間層が崩れ、“勝ち組”と“負け組”に分断されてしまった。しかも、勝ち組も、いつ負け組に転落するか分からない。本来、怒りの矛先は政治に向かわなければならないのに、見当違いの方向に向かっている。これでは為政者はラクですよ。心配なのは、安倍政権が意図的に“反中国”“反韓国”を煽(あお)り、国民の鬱憤を隣国に向けさせている疑いがあることです」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)
◆正常な判断力を失った日本の有権者
それにしても、自民党を大勝させた日本の有権者は、政治レベルが低すぎる。欧米先進国だったら、考えられないことだ。
選挙前、作家の小林信彦氏が「週刊文春」で有権者についてこう書いていた。〈憲法改正に狂う安倍政権をボンヤリ見て、あとはテレビでスポーツを眺めているという光景は、そのゆるみ方において、戦後、記憶にないこわさである〉。まさに、その通りだろう。
生活は少しも良くなっていないのに、文句も言わず勝利を与えるなんて、正常な判断力を失っているとしか思えない。
「生活が苦しいためか、日本人は合理的な考え方ができなくなっているように思う。無謀な戦争に突入した時と空気が似ている。冷静に考えれば、アメリカやイギリスと戦って勝てるはずがないのに、メディアに踊らされた国民は熱狂的に開戦を支持した。弱肉強食の“新自由主義”を掲げる自民党を勝たせたらどうなるか、合理的に考えれば分かるはずです。消費税率をアップしても、法人税減税の財源に充てられ、庶民は12兆5000億円の負担増になるだけのこと。なのに、自民党に圧倒的多数を与えたのだから、どうかしています」(小林弥六氏=前出)
この先、3年間、国政選挙がないだけに衆参で多数を握った安倍自民党は、改憲も、増税も、TPP参加もやりたい放題にやってくるだろう。国民生活はガタガタにされる。でも、ここまできたら、もう勝手にしやがれ、である。坂口安吾じゃないが、日本は落ちるところまで落ちるしかないのではないか。
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