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参院選で安倍晋三首相率いる自民党が圧勝した。非改選を含めると、公明党と合わせて与党が過半数に達した。
参院で野党が多数を占める「ねじれ」は3年ぶりに解消された。国民は、迷走する「決められない政治」からの脱却と、政治の安定を求めたといえよう。
とはいえ、安定した政権基盤にあぐらをかき、議論を軽視した数任せの国会運営は許されない。与党は謙虚に少数者の声に耳を傾け、懐の深い政治を実現してほしい。
選挙では、デフレ脱却に向けた経済政策アベノミクスの是非が焦点となった。株価は上昇し、円安が輸出産業を潤している。選挙結果は、国民の期待の表れでもある。
ただ、輸入食品やエネルギーが値上がりし、住宅金利も上昇している。所得は伸びず、所得格差も広がっている。こうした副作用から与党は目をそらしてはならない。
経済政策に注目が集まる一方、原発、憲法改正、消費税、環太平洋連携協定(TPP)など、国の将来を左右する重要問題について議論が深まらなかったのは残念だ。痛みを伴う課題の争点化を避ける戦術は、与党としての責任感を欠いた。
参院第1党だった民主党は惨敗した。議席は改選数の半分にも届かなかった。敗因は、3年余の政権運営への失望が大きいことに加え、自民との政策の根本的な違いを示せなかったためだ。
「脱原発」「憲法改正反対」の党公約に反する主張をする候補者がいたことも、理解に苦しむ。理念や政策を共有できないのなら、もはや政党とは呼べまい。存在意義を問い直すときではないか。
一方、東京都議選で躍進した共産党は、「自共対決」を打ち出して自民批判票をつかみ、議席を伸ばした。日本の維新の会とみんなの党も議席を増やした。
安倍カラーの暴走を懸念
京都と滋賀でも自民の強さが際立った。滋賀では、自民新人が大差で民主現職を破った。京都では、民主新人は公明票の一部を取り込んだにもかかわらず、共産新人に競り負けた。「自共指定席」の復活は来年4月の京都府知事選にも影響を与えよう。
自民大勝で懸念するのは、保守色の強い「安倍カラー」が前面に出ることだ。
安倍首相は最近のインタビューで「憲法9条を改正し、自衛隊の存在と役割を明記していく」としている。手続き規定の96条を入り口に、真の狙いが集団的自衛権の明文化と国防軍創設であることは明らかだ。
自民に、みんな、維新の会を加えた改憲勢力は、参院では発議要件の3分の2に及ばない。しかし民主にも改憲派がおり、政界再編があればクリアする可能性がある。
選挙で憲法論議が十分戦わされたとはいえない。石破茂幹事長が「改憲への国民の理解はまだ十分でない」と述べたように、今回の選挙結果を、改憲への国民の支持が得られたと受け取るべきではない。
今回から選挙運動でのインターネットの利用が解禁された。双方向性を生かして有権者と候補が対話を深めることや、若年層の関心を喚起することが期待された。
しかし、投票率は推計で52・61%と前回を5ポイント余り下回り、効果は限定的だった。政治を身近なものとするため、より効果的なネットの活用法を見いだしたい。
今回の選挙では、安倍自民に対する批判票の中心的受け皿となる野党がなかった。
小党ばかりの野党が、強大な自民にチェック機能を果たすのは難しい。早晩、政界再編が議論に上るだろう。しかし現在の野党は、維新の会から共産まで、憲法観や歴史認識など根本的な部分について考え方の相違が大きく、結集は容易ではない。
対抗軸となる野党が要る
価値観を共有する党員が強固に結束し、与党への対抗軸となる野党が必要だ。「数合わせ」や「野合」による新党では失敗を繰り返す。自民の右旋回で、中道・リベラル層の受け皿はぽっかり空いている。
野党の力が弱い国会で「連立によってバランスを取る」(山口那津男代表)という公明の責任は一層大きくなった。安倍政権の暴走を防ぐブレーキ役を期待する。
内外の課題は山積している。
まず注目したいのは終戦記念日だ。安倍首相が靖国神社に参拝すれば、歴史認識問題が再燃して中国・韓国との関係修復は遠のき、東アジアでの外交的孤立は深まるだろう。「国益」を守るのなら、安倍首相は冷静な言動を貫かねばならない。
秋には、来年4月の消費税増税を決めねばならない。景気減速を恐れて増税を見送れば、財政悪化への不安から国債の下落を招く恐れもあり、決断には胆力が要る。
また、世論が脱原発を求める一方、経済界の要請が強い原発再稼働を認めるのかどうか。明日から参加するTPP交渉でコメなど5品目の「聖域」を守れるのかどうか。いずれも安倍政権の真価が問われる。
選挙は終わったが、目を凝らし政権をチェックする責務が私たち一人一人にある。
[京都新聞 2013年07月22日掲載]
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20130722_3.html
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