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候補者のお願いコールと裏腹に、選挙戦は盛り上がりを欠いたまま最終日を迎えた。
経済再生の道筋や原発の是非、社会保障の展望に憲法改正…。
国民の暮らしと将来に関わる重要な課題が山積している。論戦がしぼんだのは、争点化を避けたり、あいまいな主張を繰り返したりしている党が多いためだ。
右肩上がりの経済成長はもう期待できない。政治には少子高齢時代に向けた国のデザインを描き、国民に示す責任がある。今は下書きすらできていない。
<危機感が足りない>
今回の参院選こそは、と思ったのに、各党の公約からは危機感や本気度が伝わってこない。
どの候補、どの党を支持したらいいか、決められない有権者が多いのではないか。与党が過半数を大きく超えるとの選挙情勢が伝わったことで、関心が薄らいだ人もいるのではないか。
私たちは投票日に向け、各党の公約を課題ごとに社説で点検してきた。有権者の選択の参考にしてもらうためだ。
最大の争点に位置付けられたのは安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」だった。円安株高の流れをつくり、景気回復の期待感が膨らんだのは事実である。
効果の波及に時間を要するとはいえ、潤いは大手企業や株式を持つ資産家にとどまり、下請けや地方経済には至っていない。公共事業に頼る従来のばらまき手法も復活し、経済再生に欠かせない財政再建は後回しになった。果実が家計まで回ってくるか、まだ見定めることはできない。
有権者の関心が高い原発・エネルギー政策もあやふやだ。福島の原発事故が収束していないのに、自民は原発再稼働に前向きで、海外への売り込みにも熱心だ。
自民と連立を組む公明のほか、多くの野党は「原発ゼロ」を目指すというけれど、原発をどう終わらせ、代替エネルギーを組み立てるのか、道筋が不明確だ。
自然災害の多い日本に適したエネルギー政策を選ばなくてはならないときに、各党が提示した選択肢は十分とはいえない。
2009年の民主党への政権交代の原動力となった社会保障の立て直し策も心もとない。社会保障に充てるための消費税増税など、選挙後には国民の痛みを伴う課題が浮上しそうだ。
財政状況の厳しさを考えても、社会保障改革は待ったなしの課題である。それなのに、財源も含めて各党論議は低調だった。票が逃げることを恐れているとしたら、姿勢を疑わざるを得ない。
安倍首相が悲願とする憲法改正も明確な争点になったとは言い難い。論議を引っ張ってきた首相が発言を抑え、安全運転に終始した結果である。選挙戦の終盤になって、9条改正や自衛隊を軍隊に位置付ける意欲を語ったものの、本格的な論戦に至らなかった。
<憲法論議も深まらず>
各党は今回の論戦を通じて、問題点を掘り下げ、有権者が投票の際に判断できるようにしなくてはならなかったはずだ。それを怠った責任は重い。
選挙の情勢分析によると、国会の「ねじれ」が解消され、巨大与党が誕生する公算が大きい。憲法改正が戦後初めて政治日程に上ってくるかもしれない。
自民が公約にも載せた改憲草案を見ると、国民の権利に歯止めをかけるなど、国家が国民を縛りやすくするものに変えたい、との思惑が透けて見える。権力を縛る憲法本来の役割がないがしろにされているのだ。改憲で私たちの暮らしがどう変わるのかが語られないのは納得がいかない。
安倍首相は盛んに強い経済を「取り戻す」と訴える。経済政策は競争に重きを置き、自助努力を第一とする社会を目指している。弱者が切り捨てられる心配がある。「アベノミクス」の影も見極めなくてはならない。
安倍政権の下で日本は大きく変わる可能性がある。将来の社会を選び取る重い意味を持った選挙であることを肝に銘じたい。
<政治を身近なものに>
憲法を改正する必要性があるのか、原発は本当に要るのか、誰もが安心して暮らせる社会保障をどう構築するか…。
ムードや期待に流されることなく、10年先、20年先の社会と自分や家族、身近な人の暮らしを重ねながら、よく考えてほしい。その政策で次は、さらにその先は何がどうなるか、「想像力」をたくましくしよう。政治を見る目も鋭くなるに違いない。
国政の課題を自分に引きつけることで、政治を身近なものとして考える機会になる。そんな習慣が定着すれば、選択の基準が乏しい今回のような選挙でも、1票の重みを実感できるはずだ。
政治に緊張感を与えるのは有権者である。その役割を認識しつつ、投票所へ足を運びたい。
http://www.shinmai.co.jp/news/20130720/KT130719ETI090002000.php
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