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和田秀樹著『東大の大罪』という本を読んだ。一部、首肯しがたい部分もあったが、全体として大変に面白かった。いかその一部を引用してみる。
引用その1
ところがいまのお金持ちに、そういう発想はありません。ビジネスで巨万の富を築けば「成功者」としての尊敬を得ることができるので、自分の息子を東大に入れようとは思わない。小学校や中学校から(場合によっては幼稚園から)私立大学の付属校に入れて、大学を卒業したら事業を継がせるのが、最近の基本的なパターンです。これまで日本では、いわゆる「学歴社会」を批判する声が、おもにマスコミを中心として通奏低音のように流れていました。「学歴だけで人を判断してはいけない」──それはたしかにそうでしょう。人間の値打ちを学歴だけで計ることができないのは当たり前です。しかし、だからといって「知」に値打ちがないわけではありません。それどころか、知性は低いより高いほうがいいに決まっています。
引用その2
これでは、外交という政治の一分野を考えただけでも、国の先行きが不安になります。首相や外相から外交官にいたるまで、外交を担う人材は、どの国もきわめて高度なエリート教育を受けてきた人間ばかりだからです。実際、あの北朝鮮でさえ、エリートには相当な教育を施しているでしょう。いや、人口が少なく、経済力も低い国だからこそ、エリートがしっかりしていなければ国がもたない。北朝鮮という国家を肯定するわけではありませんが、国そのものは惨憺たる状態であるにもかかわらず、イランにミサイルを売ったり、大陸間弾道ミサイルの打ち上げに成功してアメリカを威嚇したり、世界でもっとも精巧な偽ドル紙幣を作ったりしながら今日まで国家を維持しているのですから、エリートたちの知的レベルはきわめて高いはず。「悪知恵」も知恵のうちです。
引用その3
世界の先進国を見渡すと、そういう国はあまり多くありません。ふつうの国では、最高のエリート教育を受けた人間が政治的リーダーになるのが一般的です。典型的なのは、フランスでしょう。前大統領のサルコジ氏は「久しぶりに非エリートが大統領になった」と言われましたが、彼は大学出の弁護士でした。それでもエリート扱いされないのは、グランゼコール出身ではないためです。事実フランスでは、政治指導者も官僚も大半がグランゼコール出身です。保守系の政党はもちろん、左翼系の政党も、幹部はグランゼコール出身者ばかり。二〇一二年の選挙でサルコジを破って新大統領になったフランス社会党のフランソワ・オランド氏も、パリ政治学院(社会科学系のグランゼコール)の出身です。
政治指導者が高い学歴を持っている点では、アメリカも例外ではありません。この二〇年ほど、アメリカでは単に「大学出」というだけでは大統領になれなくなっています。ビル・クリントン氏はエール大学のロースクール出身ですし、知性の点で揶揄されることの多いジョージ・ブッシュJr.氏も最終学歴はハーバード大学の大学院でした。現在のバラク・オバマ大統領も、ハーバード大学のロースクールを出ています。
戦後の日本も、バブル経済が崩壊するまでは、総理大臣といえば東大法学部出身のエリートが中心でした。田中角栄氏のような例外もありますが、吉田茂、鳩山一郎、岸信介、佐藤栄作、中曽根康弘といった有力な総理大臣は、軒並み東大法学部です。一橋大(旧・東京商科大)出身の大平正芳首相でさえ、陰口を叩かれたぐらいです。
ところがバブル崩壊時(一九九一〜一九九二年)に政権の座にいた宮澤喜一氏を最後に、東大法学部出身の首相はいなくなりました。民主党で政権交代を実現した鳩山由紀夫氏は東大出ですが、法学部ではありません。理系の工学部出身ですから、少なくとも国会議員に転じた三〇代後半までは、政治指導者としての研鑽を積んできたとはいえないでしょう。つまり「失われた二〇年」のあいだ、日本には東大法学部出身の宰相が一人もいなかったのです。(中略)
とはいえ私は、東大法学部出身の政治家がリーダーになればうまくいくと思っているわけではありません。同じ東大出の政治家でも、いまと昔では質的に大きな違いがあるからです。いまの「東大出」は、真のエリートではないと言ってもいいでしょう。というのも、一九九三年に退陣した宮澤喜一氏まで、総理大臣を務めた東大出の政治家は、みんな「東京帝国大学」の出身でした。戦後の学制改革で誕生した「新制東大」を出て首相になったのは、いまのところ鳩山由紀夫氏だけです。新制東大の法学部は、まだ一人も総理大臣を出していません。
まあ東大法学部出身者が総理大臣になればそれでいいというわけではない。しかし、一国のトップになる人物というのは、やはりそれなりに勉強をして、高い教養を身につけている必要は絶対にあるだろう。発言や行動が一般庶民レベルでは困るし、そんなことでは他国のトップエリート相手に丁々発止などできるわけがない。
そこで現総理大臣の安倍晋三である。この人は、成蹊小学校からエスカレーターで成蹊大学卒業だ。安倍は1954年生まれだが、一般的にはこの世代は学習時間も多かったし、受験勉強もそれなりにやらなければ大学に入学できなかった世代である。旧制よりもレベルは低くなったかもしれないが、それなりの勉強はさせられている。
そういう時代に小学校からエスカレーターということは、一度も受験勉強をしたこともなく、大学を卒業したということだ(ゆとりの先取りですね)。もちろん、成蹊大学は立派な学校だと思う。しかし、そのイメージは裕福な親があまり子どもを苦労させずにのんびりと大学まで卒業させてあげる学校というもので、猛烈に勉強するというイメージはない。
ちなみに私が卒業したのは成蹊と似たようなレベルで、付属は高校からしかなかった。
もし仮に世襲政治家がこの付属高校出身だったとして、総理大臣になりそうだとなったら、「そりゃ、めでたい」と思うより「ヤバイんじゃね? ニッポン」と思うだろう。
そして実際のところ、安倍晋三の知的レベルはエリートのそれとはかけ離れているように見える。演説を妨害されると「左翼の人達」とfacebookに書き込むその感性からは、およそ知性のカケラも見られない。諸外国は日本の総理大臣になった人物を徹底的に研究するだろう(もちろ日本だってやっている)。そうして分析すればするほど、「取るに足りない人物」という結論しか出てこないはずだ。
習近平を相手にじっくり話をしたオバマが、安倍晋三とはまともに会談もしないのも、案外と理由は単純で、安倍をトップエリートと認めていないということなのかもしれない。
もとより学歴で人間のすべてが決まるわけではない。しかし、この人は同世代と比べても勉強をしない一方で、しかしなんの苦労もなく大学を卒業したというのでは、少なくとも日本のトップとして求められる資質をまったく持ちあわせていないことは事実だ。
そんな人物が「原発事故を乗り越えた」といって海外に原発を売り込み、憲法のことをよく知りもしないのに改憲を叫ぶ。明日の選挙はそういう体制を継続するかしないかの選択であり、その結果が「継続」となれば、以後3年間、国政選挙はない可能性が高い。その意味で今回の参議院選挙の結果は大変、重大であり、心して投票しなければならないと思う。
※最後に付け加えておくと、もし3年前の参議院選挙で当時総理大臣だった菅直人が消費税増税を言わなければ、おそらく民主党は普通に勝っていただろう。その場合、今回の選挙を経ても、なお参議院のねじれは続いていたことになる。それは、安倍政権の暴走に対する非常に有効な歯止めとなったはずだ。したがって、あの3年前の参議院選挙の結果をもたらした、菅直人、枝野幸男(当時幹事長)の責任もまたきわめて重い。
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/2013/07/post-1917.html
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