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勢い増す人種差別反対 ヘイトスピーチ下火に
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013072002000131.html
2013/7/20 東京新聞 こちら特報部
「韓国人を殺せ」などと連呼するヘイトスピーチ(憎悪表現)デモが大規模な抗議活動に阻まれ、今までのように続けられなくなっている。7月に予定された東京・新大久保のデモは事実上中止に追い込まれた。「法規制が必要なほどの差別扇動はない」と問題を放置した政府を横目に、市民社会が一定の自浄作用を発揮している。(佐藤圭)
「(今月7日に予定していた新大久保デモは)選挙期間中などの諸事情を考慮し、デモ実施日を延期する」
今月初旬、こんな告知が「在日特権を許さない市民の会(在特会)」のホームページ(HP)に掲載された。次の日程は示されておらず、事実上の中止といえる。
同会は排外主義的な主張を掲げる右派系市民グループだ。延期したデモは別の団体名で呼び掛けていたものの、一連のヘイトスピーチデモは、会員数約1万3500人の同会が主導してきた。
デモ側は延期の理由に「選挙」を挙げているが、直接的には警備上の問題が大きいようだ。デモ関係者は「警視庁側から選挙期間中はきちんと警備できないと言われた」と明かす。しかし、大量に警察官を投入しなければならない状況を生み出したのが、他ならぬ「カウンター」と呼ばれる抗議活動だった。
ヘイトスピーチデモは全国各地で週末ごとに頻発してきた。その中でも、韓流の街として知られる新大久保デモは、今年に入ってから毎月1〜3回実施され、その内容も「殺せ」「ゴキブリ」といった言葉が飛び交うなど激化した。カウンター側も、新大久保デモ阻止に全力を傾けてきた。直近の先月30日は、数百人規模のデモ隊を大幅に上回る人たちが沿道を埋めた。
カウンター活動の中心は、「レイシスト(人種差別主義者)をしばき隊」と称するグループだ。取りまとめ役でフリー編集者の野間易通さん(46)は「カウンターによってデモがやりにくくなっている。大勝利とは言えないが、一つの成果だ。自主的に延期した格好になっているが、デモ側も相当消耗しているのではないか」とみる。
「しばく」は関西地方などで、ケンカの脅し文句としてよく使われる。しばき隊と命名したのも「レイシストと対峙(たいじ)するには、暴力的なイメージが必要だった。行儀の良い人がカウンターに来ているのではないことをデモ側に分からせたかった」(野間さん)。
実際、一部のカウンターは、拡声器で罵声を浴びせたり、中指を突き立てたりと相当に荒っぽい。先月16日のデモでは、デモ隊とカウンター側が小競り合いになった結果、双方の計8人(3人は罰金の略式命令)が暴行容疑で逮捕される事態に発展した。
野間さんは「しばき隊のメンバーには『絶対に手を出すな』と言ってきただけに、逮捕は残念だ。新大久保の騒乱状態の責任はカウンター側にもある」と断った上で、こう強調する。「レイシストを放置していいはずがない。体を張って止めなければならないデモだ」
野間さんは、毎週金曜日に官邸前で脱原発を訴える市民グループ「首都圏反原発連合」(反原連)の主要スタッフでもある。「今の新大久保は、参加者が膨れ上がった昨年6月ごろの官邸前デモと似ている」
しばき隊が初めて路上に繰り出したのは2月9日の新大久保デモ。デモ終了後、一部のデモ参加者が言いがかりを付けながら路地を練り歩く「お散歩」は中断せざるを得なくなった。
同月17日の新大久保デモでは、「仲良くしようぜ」「ヘイトスピーチやめよ」と書かれたプラカードを掲げる「プラカ隊」が登場。その後も、風船を配ったり、デモの中止を求める署名運動が展開されたりと、カウンター活動の形態は多様化した。
◆「デモは合法」 在特会反発
当然、デモ側はカウンターに激しく反発した。在特会などは4月、日本弁護士界への人権救済申し立ての中で「デモ参加者への威圧、脅迫行為を行い、法律にのっとった合法デモをやめるように強要している」と主張した。
これに先立ち、人権問題に取り組む有志弁護士12人は、「新大久保の在日外国人に著しい危険がある」として東京弁護士会に人権救済を申し立てていた。その一人である神原元弁護士(46)は「在特会は形だけは民主的な手法を使っているが、デモの中身は人種差別の扇動によって民主主義を破壊しようとするものだ。警察は『在特会もカウンターもどっちもどっち』という対応だが、カウンターに正義がある」と力を込める。
一方、関西でも在日コリアンタウンの大阪・鶴橋でのデモを中心に、カウンター活動が繰り返されてきた。在特会とは別の主催団体関係者の逮捕が相次ぎ、東京よりも一足早く、大規模なデモはやりにくくなっていた。
今月14日には、カウンターの参加らが「おおさか・アゲインスト・レイシズム 仲良くしようぜパレード」と銘打ち、大阪のメーンストリートである御堂筋で「差別はあかん」と訴えた。共同代表で大学院生の伊藤健一郎さん(32)は「カウンターばかりでなく、自分たちから積極的にメッセージを発信したかった」と狙いを説明した。
このままヘイトスピーチデモは下火になっていくのか。在特会などは、新大久保デモを続行する構えを崩していない。小規模なデモの計画もあるようだ。野間さんは「また新大久保でデモをやった時は、これまで以上の人数で包囲したい」とけん制する。
レイシズムに詳しい鵜飼哲・一橋大教授(58)は「従来の抗議活動は、逆に逮捕されるなどして弾圧されるケースが多く、うまくいかなかった。今回のカウンターは、レイシストへの怒りと創意工夫でたくさんの人たちを集めることに成功し、成果を挙げることができた」と高く評価する。
欧州各国では人種的憎悪や民族差別をあおる言動は犯罪だが、日本ではヘイトスピーチそのものを罰する法律がない。カウンターの間では「法規制は必要」(野間さん)との声が多い。
鵜飼教授は「政府が、朝鮮学校の高校無償化除外など民族差別的な政策をとっている現状では、有効な法規制は期待できない」と指摘した上で、こう説いた。「法規制のある欧州でも、レイシストがデモや集会をやればカウンターがあるのは当たり前だ。日本で将来的に、よりよい法規制を実現するためにも、カウンターは不可欠だ」
[デスクメモ]
「愛」の反対は「憎悪」ではない。「無関心」だ。「芸術」の反対は「醜さ」ではない。「無関心」だ。「生」の反対語は「死」ではない。「無関心」だ─。ユダヤ人ノーベル賞作家のエリ・ヴィーゼルは言っている。「無関心」でいられなかった人たちがデモをいさめた。「愛」が続くことを願う。(栗)
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